「口が開けにくい」から食事量が減った…。 そんなときも低栄養状態を防ぐ食事の工夫とは?

疾病による開閉障害、後遺症、身体的な機能低下により口が開けにくいなど、口の“開口力”の低下がみられることがあります。口が開けにくくなってしまうと、食事量が減り、栄養不足が心配されます。

食べやすさを工夫し、低栄養状態を防ぐために、少しでも食事がすすむ方法を一緒に考えてみたいと思います。

「食べる」は、筋肉の動きの複雑な連携プレー

口の開閉には咬筋(こうきん:食事を咀嚼するときに働く筋肉のひとつ)が重要な役割を担っています。脳血管疾患を含め後遺症や何らかの障害がある場合、咀嚼(そしゃく)にかかわる神経や機能が低下し、食べることが困難になります。

また、疾病の有無にかかわらず高齢者は咀嚼力や食塊(しょっかい:食べたものを口の中で舌や内側の頬を使って塊にしたもの)にする力が低下したり、飲食物が流れこむ速度に嚥下反射(ゴックンする力)が追いつかず誤嚥したりしてしまうことがあります。

食事の際、筋肉の動きは、口を開く、咀嚼中に唇を閉じる、食べ物を塊にする、喉の奥に送り込む、飲み込むなどがあり、安全に食べるため重要な連携プレーで成り立っています。

(参考記事)
食事介助のヒントになる「食べるメカニズム」とは?

食べるチカラを助けるミキサー食とは

様々な理由から、口の開閉や咀嚼が困難な方がおられます。その場合、全体的な食事量が減り、栄養状態も低下してしまいます。いわゆる低栄養状態は、からだを動かすために必要なエネルギーや筋肉を作るたんぱく質が不足した状態をいいます。

咀嚼が困難な方の食事には、形状、硬さ、粘りなどの違いや様々な食形態がある中で、今回、おすすめしたい「ミキサー食」とは、水分を加えた食材をミキサーなどにかけ、固形物をなくし、なめらかな状態にした食事のことをいいます。

個々の摂食状況によって、とろみ加減や水分量の調整が必要ですが、一般的にとろみ加減は下記のように分類されますのでご参考ください。

【3つのとろみ分類】

1、薄いとろみ
とろみの程度:口腔内に広がる液状態。飲み込む際に大きな力を要しない。ストローで容易に吸うことができる。

2、中間のとろみ
とろみの程度:口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらない。舌の上でまとめやすい。ストローで吸うのは抵抗がある。

3、濃いとろみ
とろみの程度:とろみが付いており、まとまりがよい。送り込むのに力が必要。ストローで吸うことは困難である。

(日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整分類より)

ミキサー食の注意点と調理の工夫

ミキサー食は、見た目に立体感もなく、1つの献立を1食分まとめてミキサーにかけると、全体的に茶色っぽく彩りが悪くなって食欲を減退させてしまうことがデメリットです。また、水分が多いとすぐにお腹がいっぱいになってしまい、充分な栄養が確保できません。

しかし、適したとろみ加減に調整したり、さらには器や盛り付けを工夫して赤や緑の食材を添えたりすることで、食べやすく見た目も華やかに変化します。

食材の味を活かしつつ、とろみ剤を使用せず、食材自体のとろみを活用して作ることができる調理方法としては、「ポタージュスープ」や「すり流し」などがあります。バリエーションも増え、一般の方も一緒に食べることができます。

そのほか、調理方法だけではなく、「小さめでホールが浅いスプーンを活用する」、「姿勢の角度を調整する」などの工夫をして食べるチカラをサポートしましょう。

(参考記事)
栄養素をまるごと摂取できる&食べやすい!介護食にぴったりな日本の伝統料理「すりながし」のレシピ本!

まとめ

とろみ剤に頼りすぎずにポタージュスープやすり流しなど食材本来のとろみを利用できる調理法をとり入れてメリハリをつけ、高齢者が安全に食事を楽しんでいただくための工夫が必要です。その積み重ねが高齢者の低栄養の予防につながると思っています。

■この記事に関するおすすめレシピ
冷製ポテトスープ

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