すっきり出すために!腸内環境を整える食事のヒント。管理栄養士の德田泰子さんインタビュー

高齢者の慢性的な便秘や下痢で困っているというお悩みの声をたびたびお聞きします。介護施設では、排便コントロールを行い、生活環境や活動、食べ物、いつも服用している薬などいろいろな見直しをしてみても、なかなか改善せず、結果的に下剤を使用して、おむつからの便モレに頭を抱えている介護者もいらっしゃるのではないでしょうか?できれば下剤に頼らずに、すっきりと気持ちのいい排便を促したいですね。今回は、管理栄養士の德田 泰子さんに腸内環境を整える食事のヒントをお聞きしました。

——排便に影響を与えるものは、生活環境、活動、食べ物、いつも服用している薬など様々ありますが、その中で排便に影響を与える食べ物について教えてください。

排便に一番関係するものとしては、腸内環境が注目されています。私たちの腸内にはたくさんの菌があり、腸内フローラと呼ばれています。腸内菌を大きく分類すると、ビフィズス菌のような有用菌(善玉菌)や悪玉菌、日和見菌があります。健康な人の腸内では、有用菌が悪玉菌を抑えています。腸内フローラが、下痢や便秘以外にも、免疫やアレルギーに関わっているということが研究で分かっています。

その腸内フローラでは、乳酸菌やビフィズス菌が腸内の粘液を増やして、悪い菌を腸壁にくっつかないようにする、とても良い働きをします。乳酸菌やビフィズス菌を腸内に増やすというのは、腸内環境を整える上でとても良いことなのです。

乳酸菌やビフィズス菌といえば、ヨーグルトに入っていることが知られていると思いますが、それ以外にもチーズやぬか漬け、キムチにも入っています。ヨーグルト以外にも、入っているものがたくさんあるので、様々な食材から有用菌をとることが、とても重要です。

その効果として、腸内の粘液が増え、腸管の運動を良くします。腸が波打つように動くぜん動運動も活発にすると言われています。整腸作用があるので、一般的に乳酸菌やビフィズス菌が入った食材をとってくださいねとよく言われます。これがプロバイオティクスというものです。

便秘に関しては、一般的に、腸内環境を良くすること、水分や適度な油脂、食物繊維をとりましょうと言われています。特に食物繊維はいろんなところで聞くと思います。介護のための「おむつ」のヒントの記事にも紹介されています。

でも、食物繊維を闇雲にとってもお腹が張ってしまうので、食物繊維だけをとればいいっていうことでもなくて、食物繊維も水溶性と不溶性をバランスよくとることが大切です。

不溶性食物繊維は、野菜とか穀物とか豆類とかにも含まれているのですが、これは便を増やす働きがあります。水溶性食物繊維も、いろんな働きをするのですが、小腸では吸収されずに大腸を動かす働きがあります。

最近は水溶性の方が注目されていて、水溶性の中でも発酵性の水溶性食物繊維は、大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。

水溶性食物繊維には、りんごに含まれるペクチンなどがありますが、近年注目されている水溶性食物繊維にグアーガムがあります。グアーガムというのは、グアー豆から抽出されたものです。粉末のものが販売されていて、無臭で水に溶けやすいので、お味噌汁の中に入れたり、飲み物の中に入れたりして、提供している病院や施設があります。ひどい便秘や過敏性腸症候群などの消化器の不調を訴える方への対応策として今注目をされています。

——排便に関しては、個人差が大きく、教科書通りに対応してもなかなか解決しないことが悩みを深くさせているのではないかと考えています。慢性の便秘でお困りの方へのアドバイスがあればお願いします。

そうですね。先ほどお伝えしたことは、一般的なお話なので、ご紹介したものを食べたら、全員がすぐに理想的な排便ができるようになるかと言うとそうではないと思っています。私は、いろいろ試してみるけれども、うまく排便できない方には、いいものを組み合わせてとりましょうと提案し、先ほどのプロバイオティクスも取り入れています。

でも、どこまで効果があるかは、個人差があります。食事のことだけではなく、生活環境や姿勢や活動、いつも飲んでいる薬のことなどいろいろと見直さないと、一人ひとりの体の中身ってすごく複雑なので、答えは一つではないのだろうなと思います。

私自身がずっと施設に専属でいるわけではないので、すべてを追いかけているわけではないのですが、便秘のお困りごとをお聞きした時に、試していただくことが多いのは、まず朝起きたらお水やお白湯を飲みましょうということです。冷水が効く方もいらっしゃるし、湯冷ましやお白湯の方が飲みやすいという方もいらっしゃるので様々です。

その理由は、腸の刺激をすると同時に、睡眠中は体内の水分が不足するので、水分をとっていただくことがとても大事なのでそうしています。

それでも便意がないという方もいらっしゃるので、冷たい牛乳もちょっと飲んでみませんかとアドバイスします。コップに1杯じゃなくてもいいので、半分ぐらいでも少し刺激を与える意味で飲むのもいいかなという風に思っています。

食事の時には、食物繊維(野菜)をとることもお願いしています。あとは、ヨーグルトですね。ヨーグルトも献立の中には入れていただくようにしています。皆さん、小さいカップに入った口当たりのいい、おいしいヨーグルトを好まれますが、大きい容器に500ml入ったような無糖のヨーグルトにオリゴ糖を入れてもらうことをおすすめしています。オリゴ糖は、腸内の有用菌の餌になります。

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私は朝食がとっても重要だと思っています。やはり起きて腸が活動する時間帯って、食事の後、数十分ぐらいっていうこともありますので、そこに焦点を絞っています。

お昼に出る習慣の方もいらっしゃるかもしれないですが、やっぱり朝食の後、何らかの刺激を受けて、そこで排便を促していくっていうのが、一番リズムが取りやすいのではないかと思っているので。それは皆さん共通しているのではないかなと思います。

万人に効くものはないと思うので、いろいろと試しながら、自分に合ったものを探すことが重要だと考えています。

——いろいろと試したり、組み合わせたりしながら、自分に合うものを探すことが快適な排便につながるのですね。腸を整える食材のおすすめの食べ方があればぜひ教えてください。

 そうですね。まずは納豆です。乳酸菌の入っているキムチと組み合わせて、納豆キムチにしてもいいのかなと思います。

朝食のヨーグルトでしたら、フルーツとヨーグルトを合わせて、食べるといいのではないでしょうか。例えば、バナナヨーグルトとかですね。バナナ以外には柑橘類やキウイフルーツもおすすめです。

色々楽しみながらパターンにすれば、そんなに負担にならないのかなと思います。ビタミンも取れますしね。ヨーグルトでも、いろんなメーカーさんのヨーグルトを購入していただくとそれぞれ特徴が違いますので、自分に合うものが見つかるかもしれません。

あとは、ぬか漬けなどのお漬物もおすすめですよ。お料理の中に入れていただくと良いと思います。例えば、私は、お漬物を入れた和風のポテトサラダを作っていました。

豆類も最近は蒸し豆になったミックスビーンズが缶詰やレトルトパックで販売されていますので、スープや炒め物、サラダにそのまま入れていただくだけでも、手軽に色んなお豆が食べられていいのかなと思っています。

多分、ほとんどの方が一つのやり方で効かないと思いますし、一回二回やっても腸内環境ってなかなか変わらないので、特に症状が深刻な方はすぐには効果が出ないかもしれません。でも、あきらめずに「何が自分に合うのかな?」って探しながら試すことを習慣化することがとても重要だと思っています。ぜひ、今回ご紹介した方法をいろいろと組み合わせて試してみていただきたいです。

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キムチ入り もっちりじゃがいもチヂミ