「ゼラチン」「アガー」「寒天」はどう使い分ける? 個々にあった「おいしい食感」をつくろう

料理やお菓子作りに用いられることの多いゼラチン、アガー、寒天は、食材を固める際にとても便利な凝固剤です。粉状のものは使い勝手もよく保存もきくので、ぜひご家庭でもストックしておきたいものです。

高齢者食や介護食では、これらの凝固剤を活用して、飲み込みやまとまりなどを助けて「食べるチカラ」をサポートする役割もあります。

使用したいけれど、ダマになったりしないのか、どんな料理に使えばいいのかなど疑問や不安をお持ちの方も多いと思います。そこで今回はゼラチン、アガー、寒天の特徴と活用の仕方を比較しながらご紹介します。

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ゼラチン、アガー、寒天の違いとは?

ぷるぷる、つるん、コリコリなど、凝固剤の種類によってそれぞれ特徴のある食感を楽しむことができるのは、原料に違いがあるからです。一覧表をご参考に用途や好みに応じて使い分けてみましょう。

同じ素材でも加える水の量や混ぜる液体(たんぱく質の入った牛乳や酸味のあるフルーツジュースなど)によって固まり方に差があるため、口の中に入れたときの感覚や喉の通り具合を比べてみてください。

凝固剤の比較表

※形状は、水100mlに対して少量の食紅を加えて比較しています。

ゼラチン(粉)

原料:牛骨・牛皮・豚皮・魚皮など(動物性)
主な成分:たんぱく質
色:透明感のある黄色
状態:ぷるぷる、やわらか、弾力がある、口溶けがよい
固まる温度:15℃~
凝固温度:10℃以下の冷蔵が必要
固まってから溶ける温度(溶解温度):20~30℃
相性のよいレシピ:ゼリー、プリン、ムース、ババロア、ジュレソース
目安使用量(液体100mlに対して):2.5g
形状:しっかりとエッジがたつ、ぷりぷり

特徴:
(メリット)
口溶けがよく、応用範囲が広い。水分が出にくい。
(デメリット)
凝固に時間がかかり、常温で溶けやすい。容器にはりつきやすい。

アガー(粉)

原料:カラギーナン(スギノリ、ツノマタなどから抽出されるゲル化剤・植物性)
主な成分:炭水化物(多糖類・食物繊維)
色:無色透明
状態:ぷるぷる、なめらか、弾力がある、やや粘性があるものの口溶けがよい
固まる温度:35~55℃
凝固温度:常温可能・冷凍保存可能
固まってから溶ける温度(溶解温度):85℃以上
相性のよいレシピ:ゼリー、プリン、ババロア、ソース、アイスクリーム、わらびもち
目安使用量(液体100mlに対して):2~2.5g
形状:ぷるん、とろり

特徴:
(メリット)
応用範囲が広い。冷凍保存が可能な種類もある。容器から取り出しやすい。
(デメリット)
水分が出やすい。

寒天(粉)

原料:紅藻類、てんぐさ、おごのりなど(植物性)
主な成分:炭水化物(多糖類・食物繊維)
色:白濁
状態:歯切れがよい、もろい、コリコリ
固まる温度:30~40℃
凝固温度:常温可能
固まってから溶ける温度(溶解温度):90℃以上
相性のよいレシピ:水ようかん、ところてん、寒天寄せ
目安使用量(液体100mlに対して):0.8g
形状:しっかりとエッジがたつ、ぷりぷり、コリコリ


特徴:
(メリット)
常温で凝固するので、イベント用などの短時間調理に適している。
(デメリット)
やや海藻のにおいが残る。

調理方法のポイント

凝固剤比較表の割合を参考に、料理に適した固さ、好みの固さに調整してみましょう。

ゼラチン(粉)

ゼラチンは固める以外にも、「料理にコクを出す」「ツヤを出す」「水分を保つ」「泡を保つ(泡ソースなど)」「食感を変える」などを得意としています。

【使用方法】
〇80度以上のお湯に粉ゼラチンを入れて溶かし、他の材料と混ぜたあと、冷やして固めます。
【使用上の注意】
〇煮沸すると固まりにくくなります。
〇生のフルーツ(パインやキウイは、分解酵素を含む)はゼリーが固まらないことがあります。いちど加熱するか、缶詰を使用するとよいでしょう。
〇市販の粉ゼラチンによっては、水でふやかしてから使用するものもあります。念のため商品の使い方を確認しましょう。

アガー(粉)

アガーは固まるのが早く、常温でも溶けにくいのが特徴です。短時間で仕上がるため、施設などで作るカップに入れたデザートなどに便利です。ミキサーにかけた魚や肉のソフト食を固める調理方法へも応用ができます。

【使用方法】
〇アガーと砂糖(使用する場合)を先に混ぜ合わせたあと、水(水分)でダマにならないように混ぜます。
〇鍋に入れて、火をかけ、かき混ぜながら溶かします。軽く沸騰させたあと火を止め、容器に移して冷やし固めます。
【使用上の注意】
〇果汁など酸味の強いものと一緒に煮立てると固まらなくなることがあります。

寒天(粉)

完全に溶けきれていないと固まらないことがあります。寒天を水に溶かして火にかけて、しっかり“煮溶かす”ことが大切です。

【使用方法】
〇常温の水に粉寒天を加えて、約2分間弱火で加熱して溶かします。そのあと容器に入れて固めます。

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まとめ

凝固剤は、通常の料理やデザートだけでなく、高齢者食や介護食づくりにも応用ができます(*介護食専用の増粘剤、とろみ調整食品が必須な場合を除きます)。

スープや果物、野菜ジュースなどを各自の嚥下機能に合わせて固め、食事に取り入れていただくことで、食欲が低下した際の栄養補給にも役立ちます。それぞれの素材の特徴や使い方を理解して、個々に合った「おいしい食感」を見つけてみてください。