【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録①〜

「あんたが私のお金を盗んだ」「あんた誰?」など、認知症を患う家族から発せられるひと言に辛い思いをする人たちは多いものです。それがきっかけで毎日言い争いが絶えなくなり、家族関係にまで亀裂が入ってしまう。それでは体力だけでなく気力まで尽きてしまうのも無理はありません。そんな認知症の介護に明け暮れる家庭ならどこにでもありそうな事象に隠された、介護される人が私たちに伝えたい本当の気持ちとはなにか。特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長・丸尾多重子さんとともに読み解いていきたいと思います。

「あんたが金を盗んだ!」「この家は私の金で建てた!」どうして嘘をついてしまうの?

私の祖母は、この世を旅立つ14年ほど前から少しずつ言動がおかしくなっていました。最初のうちは「物忘れかな」くらいだったのですが、介護されている方なら簡単に想像がつく通り、だんだん騒いだり、暴れたりするようになっていくわけです。いつも部屋で「お金がない」「着物がない」と言って、居間と自分の部屋を一日中行き来していました。私の母(実子)に「あんたがお金を取った!」とか、私の父(義理の息子)に「この家は私の田舎のお金で建てた!」などと言い出します。いつもは我慢強く寛容な父も、家族のために苦労して働いた家なので、そのときだけは怒って「違う!オレの金で建てた家だ!」となるわけですが、否定すると“ひと暴れ”も“ふた暴れ”も起きて、ガラスが割れることもあれば、近所で大騒ぎなんていうこともありました。

丸ちゃんのアドバイス「一回、介護される人の立場を考えてみて!」

DSC06786light_name介護って、お世話する人もツラいけど、介護される人もツラいものです。だって、一人前の大人が“何もかも人のお世話になる”って自尊心が傷つくでしょう。お婆ちゃんはきっと、認知症になる前の元々の立場を取り戻したかったんやと思います。お婆ちゃんは、あなたのお母さんと同じかお母さんよりも優位な関係性に立ちたかったんやろうね。そのためには、お母さんを泥棒にしたりしないといけなかったんやと想像してみてください。ウソつかれた方はショックだけど、きっとお婆ちゃんも必死なんですよ。やっぱり家族の役に立ちたいもんでしょ。おばあちゃんの心の中は、この家から出されるかも…とか、いろんな不安、感情があるものだと思いますよ。認知症って急に何もかもわからないようになるわけではないからねぇ。ぜひ「介護される方もツラい」ということを忘れないであげてください。

まとめ 「介護する方も、介護される方もツラい。」

認知症になった人が“一番親身になって介護してくれる人を泥棒にしてしまう”という話をよく耳にするものです。認知症の人もさまざまな不安があって、自分の立場を守りたいという考え方も、想像してみれば納得できるところがありました。なるべく甘えさせてあげたいものですが、私たち介護する側も感情を持った人間。どちらかが一方的に言うのではなく、ときにはケンカもして、お互い言い合ってストレス発散するのもよいかもしれません。(どちらもストレスがたまっているかもしれませんから)

<丸尾多重子さん プロフィール>

「介護する人、される人の垣根を越えて、みんながまじくる(交わる)場が大切です」
特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん理事長。兵庫県西宮市で「つどい場さくらちゃん」を運営。介護する人と介護される人が集い、一緒に昼食をしたりお茶をしたりするなかで、情報交換する場を作っている。講演やテレビ・ラジオ・新聞など出演多数。『心がすっと軽くなる ボケた家族の愛しかた』(高橋書店)、『ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!』(ブックマン社)など著書多数。
つどい場さくらちゃんウェブサイト:http://www.geocities.jp/tsudoiba_sakurachan/
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