高齢者は、唾液の分泌が減少しやすく、口の中が乾燥しがちです。そのため、食事の際に、むせや誤嚥の原因になったり、歯ぐきの健康を損ねてしまったりするため、注意が必要です。今回は、唾液の役割や分泌量が減少する原因と、唾液分泌を促す食事やその工夫についてご紹介いたします。
唾液が少なくなるとどうなるの?
唾液は、様々な成分を含み、消化作用、粘膜の修復、抗菌作用、再石灰化(歯の表面のエナメル質を修復する働き)など、口の中の健康を保つために重要な役割を担っています。
唾液分泌が減ってしまうと、口の中の細菌が増えたり、歯周炎など歯ぐきの炎症が進行したり(場合によっては歯を失うリスクが高くなることもあります)、口臭の原因になったりします。
さらに、口の中で食事をうまくまとめにくくなる、飲み込むために食べ物を喉の奥へ送り込みにくくなるなど、むせや誤嚥の原因にも関わっており、唾液はスムーズな食事に欠かせないものと言えます。
唾液が減少する原因と対策
唾液の分泌が減る原因としては、加齢、咀嚼力の低下(筋力の低下、歯の喪失、義歯や入れ歯の不具合など)、薬の副作用などがあげられます。
対策としては、唾液の分泌は噛むことで促されるため、やわらかく食べやすいものばかりでなく、ゆっくりでも「噛める」ものを食事に入れることをおすすめします。
(参考記事)
「噛むチカラ」をきたえながらおいしく⾷事!
唾液を分泌するための3つの工夫
そのほかにも、ちょっとした工夫で改善することができますので、その方法をご紹介します。
1.うま味成分を活用する
かつお節、昆布などから作る「お出汁」には、うま味成分であるアミノ酸(おもにグルタミン酸)が豊富に含まれており、食べ物の消化を促す働きがあります。また、うま味成分によって促された唾液は、粘性があり、口の中を潤す効果が高いことがわかっています。
2.酸味を活用する
梅干しを見れば、唾液が“じわっ”と出てくる感じがするように、酸味は、唾液分泌を促す働きがあります。酸味によって促されただ液は、水っぽくさらさらしています。
酢は、食材をやわらかくする働きも兼ね備えていますので、咀嚼力が低下した方には、ぜひ活用いただきたいと思います。酸味のある食材や酢を活用した料理を毎食1品とり入れてみてはいかがでしょうか?
3.だ液腺をマッサージする
唾液は、顔の周辺にある「唾液腺」というところから分泌されます。
耳の下部(耳下腺/じかせん)、顎から頬へ向かう部分(顎下線/がくかせん)、顎の部分(舌の裏部分に位置します・舌下線/ぜっかせん)を軽く押して、唾液分泌を促します。
まとめ
加齢や様々な原因によって唾液が減少すると、楽しみにしている食事さえもおいしく感じにくくなり、また、誤嚥などの危険性も高まります。
「噛める」食事を用意する、唾液を促す料理を献立に1品追加する、食事前に軽くだ液を促すマッサージ習慣を取り入れるなど工夫をしてみましょう。
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