すべての予防は質の良い眠りから!認知症予防~睡眠編~【日本認知症予防協会監修】

睡眠は、毎日を健康に過ごすために誰にとっても必要不可欠なものです。しかし、どうしても明日までにやらなければいけないことがある時、そしてそれを行うために充分な時間が取れない時、睡眠時間を削ってなんとか帳尻を合わせた、なんて経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。そういう時の次の日はどうだったでしょう。睡眠時間がいつもより短かい分、眠気が強く、頭もスッキリしない。そんな状態になっていませんでしたか?実はこれは当然のことなのです。睡眠と脳機能の間には、大きな関係性があることが分かっています。
です。

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脳が休めるのは睡眠中だけ

私たち人間は、身体を動かしたことによる肉体的疲労なら、じっとしているだけでもある程度は回復します。
脳が休めるのは睡眠中だけ
しかし、脳は起きている間、常に動き続けているので、寝ている間にしか休息することができません。つまり睡眠は「脳が休める唯一の時間」だと言えます。

では、その睡眠の間、脳はどのような状態にあるのでしょうか。睡眠時の脳は、主に次のようなことを行っていると考えられています。

(1)記憶の整理・定着

脳は、起きている間に経験した情報を「記憶」として脳内に蓄積させていきます。しかし機械のように、その全てを鮮明に覚えておくことはできません。脳にも容量の限界があるからです。そのため、いつでも必要な記憶を取り出しやすいように、きちんと脳内を整理しておく必要があります。

そこで脳は「必要なもの」と「そうでもないもの」といったように記憶を選別します。「必要なもの」はいつでもすぐ取り出せるよう鮮明に、「そうでもないもの」は、ほとんど使うことのないものとして奥の方へしまい込んだりと、優先順位を決めているのです。

たとえば、1週間前に友達とした約束の内容はきちんと覚えていられるのに対して、おととい食べた食事のメニューはすぐに思い出せない、なんてことが起こったりするのは、こうした脳の選別があるからだと言えます。
寝不足

よく「一夜漬けで覚えたことはすぐに忘れてしまい、記憶に残りにくい」「テスト前に徹夜で勉強するより、ちゃんと眠った方が点数が良くなる」という話を耳にしますが、それはまさに睡眠を疎かにした結果、記憶の定着がうまくいかなくなるという分かりやすい例だと言えるでしょう。頭をスッキリさせて記憶力を維持したいのであれば、日々の睡眠を疎かにしないことが大切です。

(2)傷ついた脳神経の修復

脳の中で情報を伝達している脳神経は、日々使い続けている中で少しずつ消耗しています。そして睡眠は、そんな消耗箇所を修復して健康な状態に戻す大切な時間です。たとえば何日も睡眠不足や徹夜が続いたりすると、修復がろくに行われない状態のまま脳を酷使し続けることになるため、脳神経はボロボロになってしまいます。

睡眠時間が足りていない時、眠気と一緒に頭が重くなったりぼんやりした感覚になるのは、こうしたダメージの蓄積によって伝達できる情報量が減ってしまっているからなのです。ストレスが多い状態

また、ストレスが多い状態で脳を使い続けると、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが多く分泌され、さらに脳神経へのダメージが増加します。「最近ストレスを感じることが多い…」という時には、とくに睡眠を意識してとるようにすると良いでしょう。

 
 

(3)脳内に生成される異常タンパク質の除去

脳内で生成される異常タンパク質、これは「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれ、多く蓄積すると認知症を発症する原因になると考えられている物質です。このような話を聞くと、アミロイドβが何かとても身体に悪い、悪性細胞のようなイメージを持たれるかもしれませんが、実際はちょっと違います。

アミロイドβは脳内のタンパク質の一部が切り離されてできる、いわゆる老廃物のようなもので、どんなに健康な方であっても同じように頭の中で生成されています。ではどうしてアミロイドβが認知症リスクを高める原因になってしまうかというと、脳内に「溜まりすぎる」ことによって脳に悪影響を与えるためです。

例えば、皆さんが毎日生活する中で出る生活ゴミ、アミロイドβはこれと同じようなもので、部屋の中に多少あっても問題はないですが、多すぎると生活に害が出てしまいます。そして、睡眠は、皆さんが眠っている間にこのゴミを毎日掃除してくれるルンバ(自動掃除機)のような役割を果たしてくれています。
ルンバ(自動掃除機)
つまり睡眠が十分にとれていないと、このルンバが稼働する時間が少なくなり、脳内がゴミだらけになってしまうのです。脳内をクリアに保ち、スムーズな情報伝達を行うためには、毎日きちんと睡眠をとることが大切です。

 

適した睡眠時間を見付けよう

このように、睡眠は身体を休めるためだけでなく、活動している間に消耗した脳のメンテナンスを行うための大切な時間です。しかし、だからといって「ただ長く眠れば良い」という訳ではありません。適した睡眠時間は人によって違うからです。

たとえば下図のAさんのように6時間睡眠であっても、Bさんのように9時間睡眠であっても、毎日決まった時間にきちんと眠れて、朝スッキリと目覚められている。そして日中、眠気を感じずに活動できているのであれば、それはその人にとって「充分な睡眠が取れている状態」だと言えます。
適した睡眠時間を見付けよう
一般的に「理想の睡眠時間は7~8時間」「8時間以上が良い」などさまざまな説が唱えられていますが、人によっては「必ずしも正しい」という訳ではありません。一般論に左右されるのではなく、自身の日々の体調に耳を傾け、ベストな睡眠時間を見つけることが大切です。

睡眠の「質」を高めよう

では「時間」以外の部分で重要視するべきなのは何なのか?そう考えた時、意識してほしいのが「睡眠の質」です。認知症予防を考えるなら、ただ眠るだけではなく「脳がきちんと休める環境で眠ること」が大切です。

どんな行為が睡眠の質を上げ、またどんな行為が逆に睡眠の質を下げてしまうのか。その理由と合わせて、それぞれ見ていきましょう。

例1 夜 眠れないので、眠くなるまでスマホで動画を見ている

眠くなるまでスマホで動画を見ている
これは、睡眠の質を下げる行為です。
スマホ画面の光に含まれるブルーライトには、脳を覚醒させる効果があるため、「眠れないからスマホを見る」という行為は逆効果になってしまいます。一般的に就寝時の理想的な明るさは 10ルクス以下、ちょうど豆電球くらいの明るさ以下だと言われています。スマホ画面の明るさは約30ルクスなので、そこまで強い光とは思えないかもしれませんが、ブルーライトの覚醒効果が加わるため、実際の光度より強く脳に作用してしまうのです。

また部屋の照明などにくらべて「目の近くで使用する」という点も、覚醒効果を高める要因の一つとなっています。目を休めるというだけでなく脳をリラックスさせるためにも、眠る前にはできるだけスマホ画面は見ないようにした方が良いでしょう。

例2 遅く寝た時でも、次の日の朝はいつも通りの時間に起きるようにする

早起き
これは、睡眠の質を上げる行為です。
「遅く寝たのにいつも通りに起きる」という行為は、結果として睡眠時間が短くなってしまいますから、あまり良くないのでは…と思われるかもしれませんが、ここで重要なのは「きちんと朝起きて、朝日を浴びること」そして「体内時計のサイクルをリセットする」という点にあります。体内時計とは、人間の身体に備わっている無意識に時間を感じる機能のことで、遅く寝たからといって次の日も遅くまで寝ていると、この体内時計がだんだんとズレていってしまいます。その結果「夜になっても眠くならない」→「夜更かしする」→「朝遅くまで寝て、また夜眠くならない」という悪循環につながってしまうのです。

そもそも体内時計の周期は、もともとぴったり24時間周期ではありません。個人差はありますが、人の持つ体内時計は1日25時間程度に設定されています。そのため何もしていなくても、毎日約1時間程度のズレが発生することになるのです。しかし朝、目から入った光は脳に刺激を与え、この1時間のズレをリセットしてくれます。たとえ遅く寝たとしても、きちんと体内時計をリセットすることができれば、次の日までそのズレを引きずらずに済むのです。「眠れないから夜更かししてしまう」という状況を改善し、毎日きちんと決まった時間に眠くなる身体を作るためにも、朝きちんと起きる習慣をつけることは有効です。

例3 寝室のライトは、オレンジ色のものを選ぶ

寝室のライトは、オレンジ色のものを選ぶ
睡眠の質を上げる行為です。
これは、オレンジ色の光が「夕焼けと同じ色」だからだという点が挙げられます。大昔、人間が太陽とともに起きて日暮れとともに眠っていた頃の名残りとも言われていますが、脳は夕焼けの色を目にすることで「休む時間」だと認識し、本能的に眠る準備をはじめるというはたらきがあります。そのため、無意識に身体を眠りの姿勢にもっていくことができるのです。寝つきが悪いとき、眠りたくても目が冴えてなかなか眠れないという時には、こうした「色」による効果を利用してみるのも良いでしょう。

例4 寝つきが悪いので、寝る前にお酒を飲んでから眠るようにしている

寝る前にお酒を飲んでから眠る
これは、睡眠の質を下げる行為です。
実はアルコールを飲んだ時に起こる「眠気」は通常の眠気とは異なり、脳が一時的に麻痺することによって起こるもの、つまり「失神」しているのと同じ状態です。そのためすんなり眠りに落ちているように見えますが、実際は眠りが浅く、夜中に目が覚めてしまったりして熟睡できない状態が続いてしまいます。また、気道が弛緩(緩むこと)することで、いびきや無呼吸状態を引き起こし、慢性的な睡眠障害につながる可能性も高くなりますので、寝酒はさまざまな点で良くないと言われています。習慣化してしまう前にやめるよう意識した方が良いでしょう。

もし「どうしても眠れない」という場合は、アルコールの代わりにホットミルクや白湯など、ベットに入る前に暖かい飲み物を飲んで体温を少し上げておくという方法を試してみましょう。人の身体は、体温が下がる時に眠気が発生するという性質(雪山で遭難した時などに体温が下がって眠くなるのと同じ現象です)があるため、そうした性質を利用してみるのも一つの方法です。

その他にも、マッサージやアロマ、リラックスできる音楽を聞くなど、お酒以外にも入眠の手助けになる方法はいろいろあります。自分に合ったものを探してみましょう。

まとめ

睡眠を左右する行為、主に4つを見てきましたがいかがでしたでしょうか。これら4つの行為には、共通するあるポイントがあります。それは「寝ている間」ではなく、「起きている間」に気を付けるべきものばかりだということです。夜、しっかりと脳を休ませるためには、まず起きている間の生活習慣を見直すことが大切だということを覚えておきましょう。

また、睡眠はこれまで学んできた
●あたまの運動
●身体の運動
●食生活の改善
これらの予防法の土台になるような要素でもあります。

脳を健康な状態にリセットして、行った予防法が効果的に発揮されるようにする、そのための基礎的な予防法が「質の良い睡眠」をとることだと言えます。脳トレや運動、食事の見直しがどれもなかなか実行できない…という時には、まず毎日の睡眠を意識することから始めてみましょう。

本記事に使用の図表の出典元:一般社団法人日本認知症予防協会

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