2024年も残すところあと数日。寒さも本格的になってまいりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
秋ごろにスタートした「食べるのヒント」の5周年企画「テーマ別レシピを作ろう」。第1回の「むらさき」編 につづく今回のテーマは「非常食」。
誰でも簡単に作れるレシピを、管理栄養士である徳田泰子先生に考案いただきました。
PROFILE
株式会社ヘルシーオフィスフー
代表取締役
管理栄養士・調理師
徳田泰子さん
「おいしく・楽しく・健康な暮らし」を実現する起業家として、栄養コンサルティング会社、株式会社ヘルシーオフィスフーを設立、その代表を務める。「食べるのヒント」では毎月レシピをご担当。
株式会社リブドゥコーポレーション
杉田明花里
2022年入社。大人用紙おむつ「リフレ」の通信販売や「介護のための「⾷べる」のヒント」を担当。少しでも多くの方に食事を楽しんでもらいたいと徳田先生のレシピを発信中。趣味はおいしそうなお店を探すこと(特にうどん屋をよく巡ります)。
“もしものとき”の食事、考えていますか?
杉田 徳田先生、今回もどうぞよろしくお願いいたします。
徳田 よろしくお願いします。
杉田 今回のテーマは「非常食」です。2024年は地震が多い年だったように思います。
徳田 備蓄のために食料品などを買い込む人が増えて、スーパーのお米コーナーが空っぽになったのには驚きましたよね。何かが起きてからではなく、普段から備えることの大切さを実感しました。
杉田 そうですね…。自分自身の準備ももちろんなのですが、高齢者の方が食べやすい非常食についても考える必要があると思いました。
徳田 高齢者の方向けのレトルト食品などもあるにはあるのですが、必ずしもそういうものを選ぶ必要はないかなと思っています。わたしたちの食べる食事にちょっとした工夫をすれば、高齢者の方でも食べやすいものを作ることはできますよ。 ただ、何らかの嚥下障がいをお持ちの場合は、ふだんの食事形態に合わせて準備をしておくことが必要ですね。
杉田 ちなみに、徳田先生がおすすめされる食品などはありますか?
徳田 そうですね、あると便利なのはレトルトのお粥でしょうか。レンジで温めるだけで簡単に食べられますから、高齢者の方ご自身でも調理できます。あとは、今回のレシピでも使用する粉末状のインスタントスープ。「たんぱく質プラス」など、栄養素が追加されているものも増えてきました。わたしも親戚の方に送るようにしていますよ。
杉田 たんぱく質がプラスされたものは知らなかったです!今度スーパーに行ったときに、探してみます。
徳田 今回は「非常食」ということで、火が使える状況と、そうでない状況を想定したレシピを作りました。どちらも簡単に作れますので、一緒に作ってみましょう。
杉田 では、さっそくよろしくお願いいたします!
お米と一緒に混ぜるだけ「トマト缶リゾット」
【材料(2人分)】
カットトマト缶 1缶
コンソメ 1個
ごはん 1パック
水 適量
徳田 まずは、火が使える状況を想定したレシピから。カセットコンロを使ってリゾットを作っていきます。鍋にトマト缶とコンソメを入れて中火にかけていきます。
杉田 火にかける時間はどれくらいでしょう。
徳田 少しぐつぐつと音を立てるくらいですね。全体に火が通ったら、お鍋にごはんを加えていきます。まんべんなく混ぜながら、塩こしょうで味を調(ととの)えていきましょう。ほかにも、カレー粉やバジルなどの乾燥ハーブといった調味料を準備しておくと、バリエーションが出せますね。
杉田 なるほど…調味料の備蓄も大事ですね。
徳田 味を見て問題がなければ、リゾットの完成です。
杉田 ほんとに簡単にできました!トマトのいい匂いがキッチンに広がっています。つづいて、「火が使えない状況」を想定したレシピを作っていただきます。
指でつぶしてクルトン風に「乾パン入りポタージュスープ」
【材料(2人分)】
乾パン 10個
ポタージュスープ 2袋
ペットボトル水 300ml
徳田 色々と試行錯誤しながら考えたのが、インスタントの粉末スープを使った「乾パン入りポタージュスープ」です。
杉田 乾パンを使ったスープですか!でも火が使えないということはお湯も沸かせないということですよね…。
徳田 はい。本来はお湯で溶かして飲むものですが、水でもダマが残らない状態まで溶かすことができます。お湯よりは時間がかかってしまいますが、しっかり混ぜておけば問題なくいただけますよ。具材に使用するのは、乾パンです。
杉田 非常食、といえば乾パンですよね。
徳田 ただ、そのままだと硬いので、指でつぶしてやわらかくしていきます。ここで使うのがシリコンバッグです。
杉田 シリコンバッグですか。
徳田 はい。災害などの非常時では、十分に食器を準備できないこともあります。調理をしたあと、そのまま器として使えるのが、このシリコンバッグ。ある程度の強度があって自立もしてくれるので、おすすめです。100円ショップなどで手に入るのもポイントですね。内側にビニール袋を重ねるように入れて、乾パンをつぶしていきます
杉田 ビニール袋を入れるのはどうしてでしょうか?
徳田 シリコンバッグが汚れるのを防ぐためですね。水が使えず洗いものができない場合もありますから。
杉田 なるほど…。くり返し使うための工夫なんですね。硬さのある乾パンですが、実際にやってみると思いのほか簡単につぶせました。
徳田 はい、女性や高齢者ご本人でもできるかと思います。まんべんなくつぶしたら、スープの粉末と水を入れて、スプーンで混ぜていきます。
杉田 ダマがなくなるまで、しっかり…ですね。
徳田 乾パンは、水に浸す時間が長いほどしんなりとしてきますので、お好みの硬さに調整してくださいね。こちらで乾パンポタージュの完成です。
杉田 どんな食感になっているか気になります…!さっそく試食しましょう。
非常時だからこそ、安心して食べられるように
杉田 今回は非常時にも使えるキャンプ用食器に盛り付けしました。試食用として、乾パンスープはシリコンバッグからカップへ移していただきたいと思います。
徳田 お味はいかがでしょうか。
杉田 リゾットはトマトの素材感が残っていて、おいしいです。徳田先生がおっしゃっていたように、いくつか調味料の幅を持たせておけば、数日でも飽きることなく食べられる気がします。
徳田 トマト以外にもさまざまな缶詰を常備しておけば、栄養を摂るのが難しい状況でも安心ですね。
杉田 スープは心配だったダマもなく、おいしくいただけました。乾パンは大きなクルトンみたいで、お腹の持ちも良さそうです!
徳田 スープもさまざまな味がありますから、いくつか常備しておくのがおすすめです。
杉田 実際に作ってみることで、「あれも準備しておこう」とか、「どれくらいの数が必要かな」とか、より“自分ごと”として捉えることができました。日常とは違う状況のときこそ、安心できる食事や環境をつくることが大事だなと。徳田先生は今回のテーマレシピ、いかがでしたか?
徳田 実は、非常食については介護士や栄養士のあいだでも課題のひとつになっていて。今回のテーマは具体的な状況を想定した食事を考える、良いきっかけになりました。ご紹介した2つのレシピ以外にも、レパートリーを広げていきたいですね。
第2回の「非常食」、いかがでしたでしょうか。“もしものとき”に備えて、高齢者の方が食べやすい非常食を考えるきっかけになっていれば嬉しいです。次回のテーマは、若い世代にも人気な「昭和レトロ」。純喫茶で出てくる昔懐かしのメニューを、高齢者の方が楽しめるレシピへとアレンジします。どうぞ、お楽しみに!