【はじめて介護】要介護認定の流れや区分、サービスの違いを徹底解説。

気になりつつも、ついつい先送りにしてしまう介護問題ですが、介護は突然やってくるもの。不安だらけ、わからないことだらけで介護生活をはじめることにならないように、今のうちに正しくきちんと向き合って、必要な知識を備えておくことが肝心です。
この記事では、介護にはじめて向き合う人のために、介護サービスを受けるための要介護認定の流れをはじめ、サービスの内容や費用のことなど、知っておきたいキホンをわかりやすくご紹介します。

新型コロナウイルスの影響により、自治体では、介護サービスを受けるために必要な要介護認定の調査を延期しているなど、様々な影響が出ており例外対応なども考えられます。現在の状況も踏まえて各地の地域包括支援センターでぜひ、一度相談してみてください。(2020年5月4日)

【目次】
1. そもそも「要介護認定」って?
2. 要介護認定の申請ってどうやるの?シミュレーションで解説
3. 要介護認定の「訪問調査」で気をつけるべきポイント
4. 要介護認定の結果は変更できる?
5. 要介護認定で障碍者控除は受けられる?
6. 要介護認定の「自立(非該当)」「要支援」「要介護」とは?
7. 「要支援」と「要介護」の分かれ目や違いは?
8. 「要支援1~2」と「要介護1~5」の基準、支給限度額やサービスは?
9. 介護の第一歩は「介護サービス」を受けるための「要介護認定」から

1.そもそも「要介護認定」って?

「夫婦のどちらかが入院してしまった…」「親が突然たおれてしまった…」など、介護を必要とする状況になったときに、利用できるもののひとつとして“介護保険による介護サービス”があります。
ですが、介護サービスは申し込めば、すぐに利用できるものではありません。要介護認定を申請して、認定を受け、認定後にケアプランを作成して…といった準備が必要です。

要介護認定のキホン

●なんのため?
要介護認定とは、介護サービスの利用希望者に対する「どんな介護サービスが、どれぐらい必要か」の判定のことです。判定の結果、体の状態によって「自立」、「要支援1~2」「要介護1~5」(詳しくは後述します)の区分が判定されます。要介護度が高いほど、サービスの選択肢が多くなり、柔軟な介護サービスの利用ができます。

●何歳から受けられる?
一般的には65歳の誕生日の前日から申請できます(特定疾病該当の方は40歳から)。65歳になると、介護保険の加入者であることを証明する「介護保険被保険者証」が交付されますが、介護サービスは、この保険証のみで受けられません。まず、要介護認定を受けて、「要介護」または「要支援」に認定される必要があります。

●時間がかかる?
申請から結果が通知されるまで、およそ1カ月かかりますので、介護生活になると分かったら、早めに申し込むことが大事です。

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2.要介護認定の申請ってどうやるの?シミュレーションで解説

要介護認定は、申請後に第1次判定と第2次判定の2段階で行われます。大まかな流れを、5つのステップでご説明します。

(1)市区町村の窓口で申請

申請は、要介護認定の希望者本人が住んでいる市区町村の窓口になります。申請は、本人もしくは家族が行いますが、家族が遠方に住んでいるなどの事情がある場合は、地域包括支援センターもしくは居宅介護支援事業者に申請を代行してもらうことができます。

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(2)訪問調査

申請の受理後、市区町村の担当者もしくは委託を受けたケアマネージャー(介護支援専門員)が希望者本人宅を訪問し、聞き取り調査を行います。訪問調査については、正しい判定を受けるためのポイントがありますので、後述します。

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(3)コンピューターによる「第1次判定」

訪問調査による聞き取り調査と、市区町村から主治医に依頼して作成される意見書をもとに、コンピューターが介護に必要と想定される時間(要介護認定等基準時間)を算出し、区分を判定します。

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(4)審査会による「第2次判定」

1次判定の結果のほか、主治医の意見書、訪問調査の調査票の特記事項、その他の必要書類により、介護認定審査会が区分を判定します。

※介護認定審査会の人数は5名が標準。保健、医療、福祉の学識経験者の中から市区町村が任命します

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(5)認定結果の通知

申請から30日以内に、認定結果が郵送されます。

3.要介護認定の「訪問調査」で気をつけるべきポイント

要介護認定の区分によって、どのような介護サービスを、どれだけ利用できるかが変わりますので、要介護認定はとても重要です。要介護認定を受けるにあたって、正しい判定をもらうために、注意していただきたいポイントをご紹介します。

①訪問調査には、利用者をよく知るひとの立ち会いが必要

訪問調査の際は、プライドなどのためにできないことも「できる」と答えてしまう事例と、自分のADL(日常生活動作)を過少評価し、普段できていることでもできないといってしまう場合があります。適切に調査が行われないと、たとえば“自立心が軽視されて、介護度が実際より高くなる”など、その人に合った認定を受けられなくなる場合があります。家族や身近な人が立ち会い、実際の状況や事情をくわしく伝えることが大切です。

②質問に答えるだけにしない

訪問調査の調査票には特記事項を記入する欄があります。その具体的な記入が、第2次判定の審査会の参考になりますので、調査員の質問に答えるだけではなく、本人の行動や様子、困りごとなどを積極的に伝えて、特記事項に書いてもらうことがポイントです。

③困りごとは具体的に伝える

「足の力が弱くなっています」など事情の一部だけを伝えるだけでは、正確な調査ができません。「足の力が弱くなったため、トイレに手すりがないと立ち上がれない」、「ひざを曲げると関節痛で痛いので、和式トイレが使いにくい」など、できるだけ具体的に状況を伝えることが肝心です。

④事実をありのままに、正確に伝える

実際の状況より控えめに伝えると、適切な要介護認定が受けられません。また、実際よりオーバーに伝えてしまうと、第2次判定の審査会に「主治医の意見書と合わない」とされ、再調査になることもあります。

4.要介護認定の結果は変更できる?

要介護認定の結果に納得ができなかった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。認定の有効期間と合わせてご紹介します。

要介護認定の有効期間

●新規に要介護認定を受けた場合
有効期間は6カ月です。(ただし、市区町村の判断によっては、3カ月~12カ月の間で、月単位で定めることができます)

●更新の場合
有効期間は12カ月です。(ただし、市区町村の判断によっては、月単位で定めることができます)

要介護認定の結果を変更したい場合

判定が決定したものの、結果に納得できないケースがあります。その場合の対処法は2つあります。

●「不服の申し立て」をする
不服の申し立ては、都道府県の介護保険審査会に、通知を受け取った翌日から60日以内にする必要があります。ですが、下された要介護認定を取り消してもらうための申し立てになり、取り消しの判定が出るまでに数カ月かかり、さらに、また最初から介護申請をすることになりますので、あまり使われていません。

●「変更申請」をする
要介護認定の申請と同じ方法でいつでも申請でき、結果は30日以内に通知されます。ただし、希望の区分に認定されるとはかぎりません。

5.要介護認定で障害者控除は受けられる?

「要介護認定を受けた場合に、障害者控除の対象になるらしい」ということをたまに耳にします。ですが、要介護認定を受けたからといって、必ずしも障害者控除の対象になるわけではありませんので、誤解を生まないようにご説明しておきます。

障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で寝たきりや認知症など一定の状態にある場合、申請を行うと障害者控除認定を受けられる場合があります。納税者ご本人または扶養されているご家族が所得税や住民税の控除を受けられるので、該当する場合はぜひ利用したいものです。

目安として、障害者に該当する人は要介護1~3、特別障害者に該当する人は要介護4~5と設定している市町村が多いようです。市区町村によって、申請方法や判定基準が異なるので、詳しくは窓口などに問合せてください。

6.要介護認定の「自立(非該当)」「要支援」「要介護」とは?

要介護認定は、要介護のレベルによって、「自立」、「要支援1~2」「要介護1~5」に区分され、要介護度が高いほど、サービスの選択肢が多くなり、より柔軟な介護サービスを受けられるわけですが、まず「自立」、「要支援」「要介護」の違いについてご説明します。

「自立(非該当)」 → 介護を必要としていない状態

自分で日常生活を送ることができ、介護サービスなどの支援が必要ない状態のことです。

※「自立(非該当)」と認定された場合、市区町村が主体となって行う地域支援事業等のサービスが利用できる場合があります。詳細についてはお住まいの市区町村に相談してみてください。また、民間サービスを上手に活用することで、要支援、要介護になることが予防でき、介護負担の軽減につながります。

「要支援」 → 部分的に支援が必要な状態

自分で日常生活を送ることができるが、たとえば「入浴は一人で大丈夫だが、浴槽の掃除はできない」など、多少の支援が必要な状態のことです。状態によって、要支援1~2の2段階の区分があります。

「要介護」 → 運動機能・思考力・理解力に低下がみられる状態

たとえば「からだを自分で洗えないので入浴介助が必要」など、日常生活全般において一人で行うことが難しく、介護を要する状態のことです。要介護度のレベルによって、要介護1~5の5段階の区分があります。

7.「要支援」と「要介護」の分かれ目や違いは?

「要支援」と「要介護」では、利用できるサービスに大きな違いが出てきます。また、それぞれ受けられるサービスの目的やサービス利用開始時の申込先が違ったりするので、知っておきたいポイントです。

(「要支援」と「要介護」の違い)

「要支援」と「要介護」が分けられるポイント

「要支援」と「要介護」の区分は、大きく2つの観点によって分けられます。
●認知症の疑いが高い
運動機能だけではなく、思考力や理解力の点でも低下があるかどうか、いわゆる認知症の疑いが高いと判断された場合、「要介護1」と判定されます。

●状態が大きく変わる可能性がある
主治医の意見書などにより、状態が不安定で半年以内に大きく変動する可能性があると判断された場合、「要介護1」と判定されます。
2つの観点のうち、どちらか1つでも当てはまる場合、「要介護1」と判定される可能性が高くなります。

「要支援」と「要介護」で受けられるサービスと申込先の違い

「要支援」と「要介護」では、利用できるサービス、利用開始時の申込先が違います。

●「要支援」→「介護予防サービス」が利用できる
「要支援」で利用できるのは、介護そのものを提供するサービスではなく、 “要介護状態になるのを予防すること”、“現状より状態が悪化しないようにすること”を目的とした「介護予防サービス」です。住み慣れた地域環境で、継続して生活するための「在宅サービス」が中心になります。

サービス利用開始の申込先は「地域包括支援センター」になり、介護予防ケアプランの作成を担当します。そのプランに沿って介護予防サービスを利用することができます。

●「要介護」→「介護サービス」が利用できる
「要介護」で利用できるのは、“日常生活を送るために必要な介護”を提供する「介護サービス」です。要介護のレベルによって、「在宅サービス」をはじめ、「施設で受けるサービス」や「施設に入居して受けるサービス」などサービスの幅が広がります。

サービス利用開始時の申込先は「居宅介護支援事業者」になり、ケアマネージャーがケアプラン作成を担当します。施設の利用を検討している場合は、施設のケアマネージャーがプランを作成します。

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8.「要支援1~2」と「要介護1~5」の基準、支給限度額やサービスは?

「要支援」の「介護予防サービス」、「要介護」の「介護サービス」ともに、介護保険の適用によって、1割負担(利用者が高額所得者の場合は2~3割負担)で利用することができます。
「要支援1~2」の2段階、「要介護1~5」の5段階の区分によって、サービスが受けられる支給限度額(支給限度基準額)が変わる、つまり、利用できるサービスの内容や頻度が変わります。

詳しい認定基準は公開されていませんが、目安としてそれぞれの状態をご説明します。また、それぞれの区分による支給限度額で、どんなサービスがどれくらい受けられるのか、目安もご紹介します。

要支援1 → 日常生活のキホンがほとんど自分で行える

要支援1は「食事や排泄、入浴は自分で行えるが、風呂掃除が一人で行えない」など、日常生活の基本的なことは、ほとんど自分で行え、一部に介助が必要とされる状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問型サービス:週1回
●通所型サービス:週1回

要支援2 → 日常生活に一部介助が必要

「食事や排泄などは自分で行えるが、入浴時に背中を洗えない、浴槽をまたげない」など、要支援1よりも、立ち上がりや歩行などの運動機能に若干の低下があり、一部介助が必要とされる状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問型サービス:週2回
●通所型サービス:週2回

要介護1 → 要支援2よりも運動機能、思考力、理解力が低下

要支援2よりも運動機能や思考力や理解力が低下し、部分的に介護が必要とされる状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問介護:週3回
●訪問看護:週1回
●通所介護、通所リハビリ:週2回

要介護2→ 要介護1よりも思考力、理解力が低下

「見守りがあれば着替えはできる」など、要介護1よりも思考力や理解力の低下、問題行動がみられることがある状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問介護:週3回
●訪問看護:週1回
●通所介護、通所リハビリ:週3回

要介護3→ 日常生活に全面的な介助が必要

基本動作だけでなく全面的な介助が必要な状態で、思考力や理解力の低下、問題行動がみられ、認知症の症状にも対応が必要な状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問介護:週3回
●訪問看護:週1回
●通所介護、通所リハビリ:週3回
●定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回
●福祉用具貸与:車いす、特殊寝台・特殊寝台付属品

要介護4→ 要介護3よりも思考力、理解力が低下

全面的な介助が必要な状態で、要介護3よりも思考力や理解力の低下、問題行動がみられ、認知症による暴言や暴力、徘徊などの症状に対しての対応が必要な状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問介護:週6回
●訪問看護:週2回
●通所介護、通所リハビリ:週2-3回
●定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回
●福祉用具貸与:車いす、特殊寝台・特殊寝台付属品

要介護5→ 介護がなければ生活できず、意思の疎通も困難

寝たきりの状態で、日常生活全般ですべて介助が必要な状態で、理解力低下が進み、意思疎通が困難な状態。
【サービス頻度の目安】
●訪問介護:週6回
●訪問看護:週2回
●通所介護、通所リハビリ:週2~3回
●夜間対応型訪問介護:毎日2回
●短期入所:月7日程度
●福祉用具貸与:車いす、特殊寝台・特殊寝台付属品、床ずれ防止用具

※サービス頻度の目安は一例です。利用者の状態や希望によって組み合わせ等が異なります

9.介護の第一歩は「介護サービス」を受けるための「要介護認定」から

突然、介護が必要になったとしても、すみやかに、必要な介護サービスが受けられるように、今回の記事を参考に、要介護認定の流れや区分の違いをぜひチェックしておいてください。少しでも“何をどうすれば、どうなるか”をあらかじめ知っておくと、心に余裕をもって介護生活に向き合うことができ、なによりの支えになってくれますよ。