嚥下機能の低下に合わせた「形ある食事」とは。小さな工夫とアレンジで、「食べたい」思いに応える。

やさしすぎる食事が、食べるチカラを弱めてしまうことも!?
高齢者には歳を重ねるにつれて、咀嚼(そしゃく)した食べ物をうまく口の中でまとめられず、飲み込みにくくなる嚥下機能の低下が見られます。機能に合わせて食べやすく配慮された食事は、安全に食べられる一方で「見た目がよくない」「食欲がわかない」といった見栄えの面での課題が。そこで今回は、少しの工夫でアレンジできる食事の事例を交えながら、「形ある食事」の大切さや気をつけたい点をご紹介します。

摂食・嚥下機能が低下したときの食事

低下した嚥下機能に寄り添った食事として、料理をミキサー(あるいはブレンダー)などで粉砕し、ペースト状にした「ペースト食」や、ムース状に固めた「ムース食」「ソフト食」があります。呼び名に違いがあっても、“かまなくてもよい” “舌でつぶせる”くらいに仕上げた食事となります。これらの食事は喉を通りやすく安全に食べられる一方で、料理の原形がなく、どの料理も同じような見え方になってしまいます。

私たちはおいしく食べるために「五感」を使い、食欲は視覚によって刺激されます。食べる人が「見た目がよくない」と感じてしまうことで食欲が低下し、結果として食事量の低下や栄養不足などの悪循環を生むこともあります。こうした点から、機能低下に合わせた食事形態に気を遣いつつ、「食べたい」と思えるような“形ある食事づくり”への必要性が高まっています。

【ペースト食等の課題】
ミキサー等で粉砕して食べやすく工夫がなされているが、食べ物の形がなく見た目が均一で、どれも同じようになる。
もとの食材・料理が何だったか、何を食べているのか判断できない。
ミキサー等で調理した場合、水分を加えて柔らかさの調整をするため、食べる量に対する実質の栄養が下がる。
食べやすさ・安全性を持つことはできるが、「食べるチカラ」がある場合、機能低下につながる可能性がある。

「形あるものが食べたい」という思いに応える

「おにぎりが食べたい」と希望されるミキサー食の方の事例

形ある食事の大切さを感じたひとつの例をご紹介します。普段の主食はミキサーにかけたお粥を召し上がるAさん。食事量が低下傾向になったため、お話を伺うと「食べていると飽きてしまって、全部食べることができない。形のあるものが食べたい」という思いをお持ちでした。そこで介護職員と話し合い、ゲル化剤(食品を固形化する食品)を加えておにぎりにして、ブレンダーで粉砕した海苔をまぶした「ミキサーおにぎり」を提供したところ、とても喜んで食べていただけました。可能な範囲で少し手を加えることで、再度食事が進むきっかけとなったのです。

*ミキサーおにぎり:お粥にゲル化剤を加えて撹拌し、ラップの上にのせてキャンディのように両端をねじり、俵型に固めたもの。

“形ある食事づくり”をはじめる前に注意しておきたいこと

食べるよろこびにつながる形ある食事作りは、手をかけすぎると継続が難しくなる場合があります。食事は毎日のことなので、忠実な再現を目指さなくても構いません。まずは、無理なく固形化することからチャレンジしてみましょう。また、形ある食事づくりをはじめる前のちょっとしたコツをお伝えします。

1.【料理を感じられる仕上がりに】
形があるといっても、仕上がった料理はすべてが元の料理通りにはいきません。できる範囲で元の食材や料理をイメージできる工夫をしましょう。(例:卵焼き、鶏肉の照り焼き、かぼちゃの煮物 など)
2.【見た目への配慮を】
形作りには、抜型やカップ、シリコン型などを活用します。しかし中には子供向けのかわいい型を使用する場合があり、対象者によっては見た目の幼さゆえにプライドを傷つけてしまうこともあります。料理の内容に適しているか、対象者に合っているかを見極めが大切です。また、料理を入れる器も素材や対象者が気に入っているものなどを使いながら、配慮した食事作りを心がけましょう。

まとめ

食べたい気持ちに反して食べられない状態は、ご本人にとってつらいものです。「食べるチカラ」が機能的にあるのならば、介護食の食べやすさを考慮しながらも、咀嚼や嚥下ができる食事の工夫を重ねていただきたいと思います。五感のひとつである視覚を食事の「見た目」で刺激することで、「食べたい」「食べてみよう」という思いにつながります。まずは、できそうなことから始めましょう。

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