家族で囲む食卓に一人だけ違う介護用の食事。必要に応じた介護食であるはずが“孤食”になっていないでしょうか。家族と同様のものを食べることは、心理的にも高齢者の食の低下を防ぐ重要な役割を持っています。
食材の特徴を知り、ほんの少しの工夫で一緒に食べられるような方法をご紹介します。

食べられなくなったら、除きますか?
もし、喉に詰まりやすいなどといった原因で、機能的に好きなものを食べることが難しくなった場合、どうしますか?
安全のためとはいえ、すべてをあきらめて除いたお食事ですと、どんどん食べるものが少なくなってしまいます。場合によっては食べる機能も低下してしまいます。それに、食への楽しみも減ってしまいそうですね。
そのもの自体に危険性がある食品の場合は、やむを得ず回避するのが望ましいと思いますが、そうでなければ素材が似ているものを代用してみる、切り方を変えてみる、調理方法を変えてみるなどのひと工夫をしてみてはいかがでしょうか。
食べにくい原因を知ることで、工夫の糸口が見えてくる
食材によって食べにくい原因が様々です。例えば、「粘り」「パサつき」「まとまりにくさ」などの原因が考えられます。
原因が分かれば、改善するために工夫すべきことが見えてきますので、「なぜ食べにくいのか」を考えてみることをおすすめします。
少しの工夫で改善できることが多いので、一例としてその方法をご紹介します。
【粘る食材に工夫をプラス①】お粥はゲル化剤を加える
「粘り」の場合、やわらかくて噛みやすいけれど、喉に張り付く感じになると、咀嚼はできても誤嚥(ごえん)の危険性が生じます。
特にお粥などでんぷん質を含む料理の場合は、「でんぷん分解酵素」を含むゲル化剤(液体を固める、あるいはゼリー状にするためのもの)を加えることで、お粥特有のねばつきをゆるめてゼリー状にして、安全に食べることができます。
【粘る食材に工夫をプラス②】いも類は熱いうちにマッシュにする
いも類に含まれるでんぷんは、熱いうちにマッシュにする(煮たり、茹でたりしてすりつぶす)と粘りが出ませんが、「冷めてから」あるいは、「ミキサーやブレンダーにかける」と細胞の中のでんぷんが糊化し、粘りの原因を作ります。いも類は、温かいうちに“つぶす”こと、粘りが強くなった場合は、牛乳や出汁などでゆるめるとなめらかになります。
【パサつく食材に工夫をプラス③】食材に水分・油分を含ませる
パサつきの原因は、水分が不足している場合や脂質が少ない場合が考えられます。よって「蒸す」「煮る」「比較的低温でしっとり揚げる」「ホイルに包む」などの調理法を取り入れてみてはいかがでしょうか?
【まとまりにくい食材に工夫をプラス④】とろみのある食材を活用する
咀嚼の過程では、口の中で食べ物を左右移動・回転させ、徐々に細かく噛み砕だき、だ液でまとめ、飲み込むための準備をしています。しかし、高齢者は、だ液の分泌が少なくなり、刻んだ食べ物、パサつくものは、口の中でまとまらず、バラけてしまい、口の中にかけらが残ってしまいます。
よって、「汁物などの水分を補いながら食べる」または「片栗粉であんをかける」、「マヨネーズなどを活用して手軽にまとめる」、「ゲル化剤を使用してとろみをつけたり、まとまりやすくする」などの方法があります。
まとめ
介護食は、特別ではなく通常の食事に手を加えることからはじめてみましょう。在宅や施設など食事の環境は様々ですが、どこであっても、「できるだけ同様のものを一緒に食べること」の大切さを感じます。
