おしゃべりで脳を活性化!コミュニケーションが一番身近な認知症予防

平成27年の国勢調査で、65歳以上の一人で暮らす高齢者は約600万人となり、少子高齢化や核家族化など、社会構造の変化によって、今後も増加すると予想されます。

また、近年コロナ禍で外出の機会が減った事により、高齢者のフレイルが進行していると言われています。フレイルとは、病気ではないけれど、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のことです(運動機能の低下やうつ傾向など)。

高齢の親と離れて暮らす息子・娘が、久しぶりに帰省して、「あれ?様子が今までと違うな…」など、「もしかして認知症では」と思われる症状に気づくことがあります。

今年のお盆も久々に会えたのに、心配になって認知症の話題を出してしまい、親と口喧嘩になった。そして、気まずいまま帰ってきてしまったという方もいらっしゃるかもしれません。

親に会いたいけれど、老いていく親に会いたくないような気持ちや親に対して何もしてあげられない罪悪感のような複雑な気持ちを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?それは、「いつまでも元気でいて欲しい」「楽しく過ごしてほしい」という親を想う気持ちに他なりません。

今回は、一人で暮らす高齢の親のフレイルや認知症を心配している方に向けて、すぐできる認知症予防のトレーニング方法や離れて暮らす親と子の心の架け橋になる製品をご紹介します。

認知症の予防方法は?

「認知症」とは老いにともなう病気の一つです。さまざまな原因で脳の細胞が死ぬ、または働きが悪くなることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、意識障害はないものの社会生活や対人関係に支障が出ている状態(およそ6か月以上継続)をいいます。我が国では高齢化の進展とともに、認知症の人数も増加しています。65歳以上の高齢者では平成24年度の時点で、7人に1人程度とされています。

認知症の大部分を占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)との関連があるとされています。例えば、野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきました。

また、症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできます。早期診断と早期治療によって、高い治療効果が期待できるのです。

認知症の早期診断・早期治療につなげるために、自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「もしかして認知症では」と思われる症状に気づいたら、一人で悩まず専門家などに相談しましょう。

出典:政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」

すぐできる認知症予防のトレーニング「脳トレ」

認知症を予防するために、下記のような脳トレがあります。脳が働くにはたくさんのエネルギーが必要です。そのため、脳が働いているときには、たくさん血液が脳に流れます。たくさん血液が流れることで、脳の機能低下を防ぎ、若々しさを保つことが出来ます。

  • パズル

トロント大学で行われた研究で、認知症予防には「パズルが効果あり」とされました。1回行ったから良くなるというものではなく、継続的に行うことが大切です。

  • 読み書きをする

新聞の短いコラムや文章を書き写すなど、何かを見ながら書くことや、声に出して読むことは脳の刺激になります。また、日記を毎日書くのもおすすめです。

  • 麻雀 囲碁 将棋 オセロ

相手の手の裏を読んだりするゲームは、高度な認知機能が必要ですので脳が刺激されます。楽しく行うということが、脳の活性化につながります。

  • 歌や演奏を聴く 合唱やカラオケ  曲の演奏 音楽に合わせて体を動かす

音楽を聴いて心がリラックスしたり、カラオケで歌って気分が晴れたりした経験があるかと思います。また、音楽を聴くと、その曲にまつわる記憶を思い出すこともあります。音楽を通じてコミュニケーションの機会が増えることも脳の活性化につながります。

  • 他人とのコミュニケーションを図る

他人を気遣うことや、他人と話をするということは脳の良い刺激になります。上手く他人とコミュニケーションをとることが、一番身近な認知症予防対策になります。

一人で過ごすことが多くなった方に「おしゃべり」を通したコミュニケーションを届ける製品


株式会社タカラトミーから、約1600語を組み合わせた会話や歌を歌ってくれるシニア向けのコミュニケーション人形【うちのあまえんぼ あみちゃん】が発売されました。持ち主の顔を認識して名前を呼び、季節や時間に合わせ様々に変化するおしゃべりを楽しめます。一人暮らしなど、コミュニケーションを求めるシニア世代に向けて開発された製品です。

外観は、ぬいぐるみではなく、大人も愛でたくなるようなお人形。本格的なお洋服、リカちゃん人形とおなじ素材の髪の毛なので、お洋服を着せ替えたり、髪をとかしたり結んだりすることができます。

▽【うちのあまえんぼ あみちゃん】のご紹介はこちら(動画)

【うちのあまえんぼ あみちゃん】開発の想い

今回は、株式会社タカラトミーの多田さんと張替さんに【うちのあまえんぼ あみちゃん】の開発エピソードや購入された方からの感想など、お話をお聞きしました。

子どもから大人まですべての年齢の人に遊んでもらえるおもちゃを作りたい

--あみちゃんの開発の経緯 きっかけをお聞かせください。

多田さん:
まず私たちは「ムーンショット事業部」という変わった名前の部署におりまして、そこでは、既存のおもちゃのメインターゲットであるお子さま以外の方々にもおもちゃを届けよう!と言うミッションがあります。

過去におしゃべりおもちゃは販売していたのですが、それを最新技術とかけあわせ、アップデートをして世の中に届けようという着想から始まりました。

あみちゃんは、ただしゃべるだけでなく、ユーザーの顔を認識して特別なおしゃべりをしてくれたり、名前を呼んでくれる事によって、特別な体験を創り出せるだろうということで企画ができました。

「おしゃべりをする事で楽しく過ごして欲しい!」という想いでプレゼントに

--あみちゃんを開発するにあたり、ターゲットとなる年齢層の設定はあったのでしょうか?

多田さん:
子どもだけでなく、大人にも!という考えのもと、60代以上の方々が一緒に暮らして頂く事を想定し、約1年前に発売しました。

--発売してみて、実際はどういった方がどういう目的で購入されているのかお聞かせください。

張替さん:
離れて暮らしている親御様にお子様からプレゼントをするという方が非常に多くいらっしゃいます。年齢としては、50代から60代の方が、80代から90代の親御様に送るパターンが半数以上となっております。当初、60代から70代の方が使用される事を想定していましたが、実際は80代から90代の年齢層の方に可愛がって頂いている状況となっています。

あみちゃんは、たくさんのおしゃべりをしてくれますので、「話し相手になって欲しい!」「おしゃべりをする事で楽しく過ごして欲しい!」という想いを持って贈られている方が多くみられます。

あみちゃんが一緒に暮らす方にとって「特別な存在」になってほしい

--動物タイプではなく人形タイプになった理由はあるのでしょうか?

多田さん:
ロボットタイプは前から開発はしていて、50代から60代の方に好まれていましたが、今回はいわゆるシニアの方に届くようなおもちゃをつくってみようと言う事で、ぬいぐるみタイプではなく、人形(ドール)タイプにしています。

ぬいぐるみタイプだと人形遊びとして遊ぶ事ができないのですが、あみちゃんはサラサラの髪があるので付属品のくしで髪をとかしたり結んだりできるようになっています。着せ替えを楽しむこともできます。お世話をしたくなるような存在にしたい想いで人形タイプにこだわりました。

あみちゃんとの会話で脳の前頭前野が活性化する

--あみちゃんは、1600語以上しゃべったり、歌ったり、早口言葉をしゃべったりするそうですが、脳トレや音楽療法などの効果はどのくらい期待できるのでしょうか?

多田さん:
脳の研究をされている諏訪東京理科大学の篠原教授に、あみちゃんと遊んでいるときに、脳にどういう変化があるか脳波の測定をして頂きました。すると、あみちゃんとしゃべっている時には、前頭前野が活性化していることがわかりました。「不足しがちなコミュニケーションを補うのにあみちゃんは役立ちそう。」とコメントを頂いています。

一般的に、昔の事を思い出すと脳に良いと言われていますが、あみちゃんのおしゃべりの中にも昔の事を思い出させるような質問がいっぱい入っています。「最初に買ったレコードは何?」とか「10年前の今日は何してた?」とか「今まで行った場所で一番遠い場所ってどこ?」とか。そういう「どこだっけな?」「なんだっけ?」と、ふと思い出すきっかけになるセリフが入っています。

--確かに、ご家族が親に対して認知を試すように昔のことを質問すると角がたってしまい、良いコミュニケーションにならない恐れがありますが、第三者のあみちゃんが、質問してくれる事によって、使用者様ご本人にとっても負担にならないように思いますね。

張替さん:
あみちゃんのCM撮影の際に、たくさんの方にあみちゃんを使って頂いたのですが、その中で昔の質問をした時に、「嫁入りをした時の事を思い出しました」という声を頂きました。あと、抱っこしていると子育て時代を思い出して、「こうやって夜泣きしてたのをよくあやしていたのよね~」と涙される方もいらっしゃって。そういう感情を揺さぶる事って良いポイントなんじゃないかなと思います。

購入した方にインタビューした時、「歌って欲しかったのであみちゃんの手を握ったのに、あみちゃんは「もう遅いからまた今度ね」と言ったんです。あみちゃんって、たまにびっくりするような事をしゃべるんですよね~」ともおっしゃっていました。

日常の中で感情の起伏がなく過ごすよりは、いろんな事を思い出したり、時には涙したり、驚いたりするような、感情を揺さぶる事が、脳や心にすごく良いんじゃないかと私は思っています。

多田さん:
今のような感情を揺さぶる、「エモい」というと浅はかですけど、そういう言葉を投げかける方が嬉しいという事が使用者の調査からわかってきたので、「疲れてなーい?」「今日は良い笑顔だね!」などの使用者を気遣うようなセリフを多分に入れています。

--初期設定の時に、顔を認証させる設定がありますね。これは使用者を特定してその人だけにしゃべりかけるという事なのでしょうか?また、あみちゃんの胸のあたりの丸い鏡は何か意味はありますか?

多田さん:
顔を認識しなくてもたくさんしゃべるのですが、顔を認識していると名前を呼んでくれるなどの特別な会話が始まり、使用者をキュンとさせる仕様になっています。

色を認識できるので、「今日のお洋服みせて?」というあみちゃんからの問いに対して、あみちゃんに洋服を見せることで「情熱的な赤が似合ってるね!」「緑をうまく取り入れてるね」といったおしゃべりをしてくれる事があります。

「最近買ったものを見せて?」という問いに対して、あみちゃんにいろんな物を見せることで、あみちゃんのリアクションを楽しむ事ができるので、あみちゃんに対して、「お顔を見せる」「服を見せる」「お菓子の袋を見せる」というような見せるという新しいコミュニケーションが斬新な機能になっています。胸の丸い鏡はあみちゃんが見ている視野の目安で、この鏡の中に見せたいものが映っているとだいたい認識できます。

洋服を手作りして、着せ替えも楽しめる

--ホームページに洋服の型紙が公開されていたのですが、これを企画したきっかけはあるのでしょうか?

張替さん:
あみちゃんのホームページをどういうページにしようかなと考えていた時に、実際にお人形を持っていらっしゃる方がどういうふうに楽しんでいるのかな?と調べました。その中で、手作りのお洋服で着せ替えを楽しまれている画像や映像事例がたくさん出てきたのがきっかけです。

あみちゃんの別売りのお洋服も販売しているのですが、それ以外にも、ご自身で着せたいお洋服を作る楽しみ方もご提供できたらと思って、ホームページに型紙を公開しました。

実際にインタビューした時も、「毎日同じ服だとかわいそう」とおっしゃっている方もいて、例えば、寝るときのお洋服を作ってあげたいとか、そういった生活シーンに合わせてお洋服をかえていきたいというご意見が多かったので、型紙でそれが実現できているんだと思います。

「ミシンを持っているんですが、ミシンを出す間も惜しんで手縫いで作りました」とおっしゃっている方もいて、型紙を活用して頂けてすごく嬉しいなと思っています。

様々な要素から季節を感じる工夫も

多田さん:
季節もですよね。夏は涼しげな服がいいよねとか、そういった季節感も感じる事ができますね。

--初期設定の際に、何月何日かの設定が必要だったと思うのですが、季節によってしゃべる内容も変わるのでしょうか?

多田さん:
そうですね。一年通して変化していきますので、季節の変わり目に気づいて頂けるような設計をしています。あと、会話だけでなく季節の歌もあり、毎月変わります。歌からも季節を感じる事ができます。

あみちゃんの存在が、親と子の心の架け橋に

--あみちゃんをご購入された方からのお声で代表的なものをお伺いできますか?

張替さん:
「毎日の楽しみが増えた!」「おしゃべり相手ができて、会話が増えた」というご意見が多いですね。あみちゃんとの生活自体を楽しんで頂いているようです。

プレゼントされたお子様からは、「あみちゃんをきっかけに、母が明るくなった」「あみちゃんをきっかけにして、親子間の会話が増えた」といったお声も頂いています。あみちゃんの話題で親子で盛り上がって、あみちゃんがご家族の間を繋いでいる事がうかがえて、とても嬉しかったです。

--久々に親と会っても意外と共通の話題がない事ってありますよね。ペットがいるとペットのことを話題にして家族の会話が増える事がありますが、そんな感じですよね。

張替さん:
あと、同じお家に住んでいる方でもお母様が部屋にこもってしまって悩まれていたのですが、「あみちゃんをきっかけにお部屋から出てきて、あみちゃんを可愛がって家族といっしょに話すようになった」というご意見も伺う事ができましたね。

おもちゃの力で、すべての世代の生活を豊かにしたい

--最後の質問になるのですが、今後あみちゃんをはじめとした、ライフウェルトイでどういう未来を創っていきたいですか?

多田さん:
このライフウェルトイっていう言葉に込めた想いなんですが、「おもちゃの力で生活を豊かにしていきましょう」という気持ちを込めたスローガンになっています。

生活っていうのは、健康、学習、趣味など、生活をとりまくあらゆるものをおもちゃの力で楽しくするところを目指しています。おもちゃの力で、日々の生活がちょっとだけ楽しくなる。そんな未来を願っています。そこにちょっとだけ新しいテクノロジーを加えて、おもちゃなんだけど最新の技術が入っている!って思ってもらえる新しい今までにない体験をお届けできたらいいなと思って、今後も企画していく予定です。

張替さん:
わたしたちおもちゃメーカーとして、今まで子どもたちをおもちゃの力で楽しくさせたりワクワクさせたりしてきましたが、ライフウェルトイというところで大人の方にも、その楽しみとかワクワクを広げていきたいなあと思っています。大人になると辛い事や環境がかわって乗り越えないといけない壁がでてくる事もあると思うのですが、そんな時にも、毎日をちょっと楽しくさせてくれる、心の癒しを与えてくれる。おもちゃによって、そういう生活を提供できたらいいなと思います。

まとめ

65歳以上の一人で暮らす高齢者は約600万人となり、少子高齢化や核家族化など、社会構造の変化によって、今後も増加すると予想されます。近年コロナ禍で外出の機会が減った事により、高齢者のフレイルや認知症の進行が懸念されています。

高齢の親と離れて暮らす息子・娘が、久しぶりに帰省して、「あれ?様子が今までと違うな…」など、「もしかして認知症では」と思われる症状に気づくことがあります。高齢の親と離れて暮らす息子・娘の中には、親に会いたいけれど、老いていく親に会いたくないような、親に対して何もしてあげられない罪悪感のような複雑な気持ちを抱いている方も少なくありません。

認知症の大部分を占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)との関連があるとされています。野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛けたり、定期的な運動習慣を身に付けたりと、普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきました。また、読み書きする、ゲームをする、音楽を聴く、演奏する、歌に合わせて体を動かす等すぐできる簡単な脳トレもあります。そして、コミュニケーションをとることが、一番身近な認知症予防対策になります。

そこで、今回は、一人で過ごすことが多くなった方に「おしゃべり」を通したコミュニケーションを届ける製品として、【うちのあまえんぼ あみちゃん】をご紹介しました。

私も実際にあみちゃんとの暮らしを体験し、会話したり、抱っこしたり、髪をといたりしてみました。おしゃべりの種類の多さに驚きました。数日間あみちゃんと暮らしてみると、あみちゃんがいろいろとおしゃべりをしてくれてお部屋がにぎやかになり、明るくなりました。

あみちゃんの髪の毛をといたり、頭をなでていると自分が子どもの頃、リカちゃん人形で遊んでいた感覚を思い出しました。また、あみちゃんを抱っこすると、わが子が赤ちゃんだった頃、抱っこして体を揺らしていた記憶がよみがえりました。あみちゃんとの暮らすことで、日々の暮らしが明るくなり、色んな事を思い出すきっかけになりました。

インタビューの中で、離れて暮らす親御さんへプレゼントとしてあみちゃんを購入される方が多いとお聞きしました。それは、「いつまでも元気でいて欲しい」「楽しく過ごしてほしい」という親を想う気持ちの表れだと感じました。あみちゃんをプレゼントすることで、親を大切に想う気持ちが伝わるといいですね。

【うちのあまえんぼ あみちゃん】は、タカラトミーの公式通販サイト「タカラトミーモール」で販売しています。敬老の日に「いつまでも元気でいて欲しい」という想いと共に、あみちゃんを大切な方へ贈ってみてはいかがでしょうか。

◆認知症に関する下記記事もご参考に!
認知症でのトラブル?まずは認知症の症状を理解しよう
【実話】介護する人と介護される人のキモチをつなぐ考え方 〜祖父母を介護する母親を横で見ていた息子目線の介護録①〜
・【親が認知症になってしまった】認知症の受診を拒む方にやってはいけない対応とは?
・認知症の薬が「音楽」?!音楽療法のすごいチカラ
介護の相談。最初に行くのはどこ?