介護の専門家に聞く 今知っておきたい介護ニュース その④ 「人材確保対策で『介護助手』を検討」

少子化・高齢化がますます進展し、厳しい財政事情の下で社会保障制度改革が進められる中、介護保険制度は医療保険制度を巻き込み、大きく変化・変容することが見込まれます。また、これからの日本の介護を考える上で、介護人材の確保は重要な課題となっています。需要はとても高く、有効求人倍率も他業種と比較して高いにもかかわらず、常に人材不足である状態は変わっていません。そのような状況下で厚生労働省が打ち出した『介護の担い手を増やす新たな施策』をご紹介します。最新のニュースに基づき、白鷗大学教育学部川瀬善美教授に今知っておきたい介護ニュースを解説していただきます。

※最新ニュースは、シルバー産業新聞掲載記事を基に、同社の許可を受けて、弊社において一部表現を変更しています」

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人材確保対策で「介護助手」検討。介護保険部会 人材の類型化・機能分化で議論

厚生労働省は6月3日、社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開催し、「介護人材の確保」をテーマに、生産性の向上や業務の効率化などの具体策について議論を行いました。

介護職員については、介護保険創設時の約55万人から、14年には177万人と3倍以上増加しているものの、厚労省の需給推計では、25年には253万人の介護人材が必要となり、このままのペースだと37万7000人が不足するとされています。

この日の部会では、厚生労働省が、介護人材の専門性を発揮させる観点から、介護人材の類型化・機能分化を進めていく必要性を説明しました。具体的には、限りある人材の有効活用に取り組む中で、介護の質を低下させずに現場の業務負担の軽減を図る観点から、地域の高齢者を「介護助手」として活用する案を提示したのです。厚生労働省は、この「介護助手」を横展開することで介護の担い手を増やし、介護福祉士など専門性の高い介護職には、身体介護などの専門分野で能力を発揮してもらいたいと考えているようです。

※より詳しい内容は、文末に掲載しています。ぜひご覧ください。

白鷗大学 川瀬教授はこのニュースをこう見る!

2016年6月3日に開かれた第59回社会保障審議会介護保険部会で、①介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)、②保険者の業務簡素化(要介護認定等)、③介護保険適用除外施設における住所地特例の見直しについて、④介護保険総合データベースの活用についての4つのテーマについて審議を行いました。

国は、2020年代初頭までに介護人材を171万人(2013年度)から231万人に増やす必要があるとしています。そのために、厚生労働省が同審議会で用意した資料1『介護人材の確保』では、「介護の生産性向上・業務効率化等について」として、①ロボット・ICT等の新しい技術を活用した生産性の向上等と②介護人材の専門性の発揮の2つを取りあげています。

介護の専門家に聞く 今知っておきたい介護ニュース その②「ロボットが変える介護の未来」はこちら

②の「介護人材の専門性の発揮」について、「管理者が考える介護の各業務に求められる専門性と、実際の介護職員の業務実態との間に、差が生じているとの指摘がある」としています。「例えば」と示されるのは、ホームヘルプ・サービスの「生活援助(掃除・洗濯・衣類の整理・ベッドメイク)」で、「介護福祉士の資格を取得していない者でもできる」のに、「介護福祉士の約7割がこれらの業務をほぼ毎回(毎日)実施している」としています。また、老人保健施設の「介護助手導入モデル事業」(三重県老人保健施設協会)の報告のなかで、60~75歳の高齢者を募集して「介護助手」とし、「介護職を専門職化」することに効果があったと報告しています。

さらに、『ニッポン一億総活躍プラン(抄)』中で、「介護離職ゼロ」を実現する「多様な人材の確保と人材育成」のため、「介護サービスの業務を、必要とされる専門性を踏まえて類型化し、介護福祉士等の専門職とそれ以外の者との業務分担を推進」するとしています。ここに、今回の介護職不足を「誰でもできる無資格」の人材を「介護助手」と言う名称で活用したいと言う安直な発想がうかがわれます。同時に、2015年11月、財政制度等審議会(財務省)が公表した「2016年度算の編成等に関する建議」の中で、「生活援助サービスについては、日常生活で通常負担する費用であり、原則自己負担(一部補助)化すべきである」(生活支援外し)という考え方が背景にあります。つまり、在宅・施設を問わず「生活援助サービス」を「介護人材の確保」を装いながら、「生活援助をはずしたサービス」もイメージされています。

ここで思い出すのは、予防給付から、訪問介護と通所介護を「新総合事業」へ移行させたとき、その事業の担い手としてボランティア・シルバー人材を挙げたことであり、この発想と同じであると考えます。介護職員の処遇改善について2016年5月18日、政府は「介護離職ゼロ」の目標に向けて25年度までの10年間について、それぞれ対応策と工程表を発表しています。しかし、国家財政・介護保険財政が困難な状況下で、かつ新たな財源が確かに確保されない中で、「絵に描いた餅」に終わるという予測を多くの介護事業者がしていることも事実です。

「介護人材の確保」については社会保障審議会福祉部会が福祉人材確保専門委員会を設置し、2015年2月25日には『2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~』をまとめ、介護労働者の「参入促進」と「労働環境・処遇の改善」を図る一方で、介護福祉士の「資質の向上」が必要としています。しかし、これが「介護人材の確保」の方策として、少数の有資格者である介護福祉士と無資格・不熟練の「介護助手」でと言うのであれば、あまりにも安直すぎるような気がします。この中で、同委員会は今後も「介護人材の類型化・機能分化」について検討を進める予定としていますが、「介護助手」は2020年代初頭までに不足する60万人の介護職員の数合わせとしての弁法でしかないように思われます。そもそも、介護職員の処遇改善の進まぬ中、更に低賃金等の処遇が予測される「介護助手」をあえて志願する人材が60万人も確保できるか多いに疑問が残ります。類型化・機能分化による「資質の向上」が、介護労働者を171万人から「介護人材」の確保につながるどころか、介護の質の低下につながる事への危機感を持っています。

白鷗大学教育学部 川瀬善美教授

Mr.kawase S

【プロフィール】川瀬先生は、福祉を愛と奉仕の世界だけでなく、産業・ビジネスの視点から捉えていくべきと、早くから提唱してこられました。北欧、イギリス、ドイツの介護事情や、米国・豪州・韓国の介護ビジネスにも精通し、大学で教鞭を執られるかたわら、全国各地の高齢者施設・病院経営の経営コンサルタントとしても活躍中。理論面だけでなく、介護施設現場の実情も熟知されています。

シルバー産業新聞掲載記事にみる「人材確保対策で『介護助手』検討」

人材確保対策で「介護助手」検討。介護保険部会 人材の類型化・機能分化で議論 シルバー産業新聞 2016年7月10日号

厚生労働省は6月3日、社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開催し、介護人材の確保をテーマに、生産性の向上や業務の効率化などの具体策について議論を行った。

介護職員については、介護保険創設時の約55万人から、14年には177万人と3倍以上増加しているものの、厚労省の需給推計では、25年には253万人の介護人材が必要となり、このままのペースだと37万7,000人が不足するとされている。

この日の部会では、厚生労働省が、介護人材の専門性を発揮させる観点から、介護人材の類型化・機能分化を進めていく必要性を説明。

具体的には、限りある人材の有効活用に取り組む中で、介護の質を低下させずに現場の業務負担の軽減を図る観点から、地域の高齢者を「介護助手」として活用する案を提示した。

「介護助手」は、三重県老人保健施設協会が、「地域医療介護総合確保基金」の助成を受け、県下の9施設で地域の元気高齢者を「介護助手」として採用したモデル事業。一定以上の経験があると認められ入所者の話相手などを任される「Aクラス」、ADLに応じたベッドメイキングなど短期間で習得可能な知識・技術が必要な「Bクラス」、清掃などを行う比較的専門性の薄い「Cクラス」の3つのランクに分類し、介護の間接的な補助を行う取り組みが行われている。

厚生労働省は、この「介護助手」を横展開することで、介護の担い手を増やし、介護福祉士など専門性の高い介護職には、身体介護などの専門分野で能力を発揮してもらいたい考えだ。

そのため、配布された資料には、「訪問介護事業所の管理者が考える生活援助(掃除・洗濯・衣類の整理・ベッドメイク)に求められる専門性については、『介護に関する知識、技術をそれほど有しないものでもできる』又は『介護に関する基本的な知識、技術を備えた者であればできる』(いずれも介護福祉士の資格を取得していない者でもできるとの回答)が8割を超えている」とする、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの報告書の結果を掲載している。

これに対し、委員からは「生活援助に専門性がないかのような印象だが、実際には、観察やアセスメントなどが行われている。行為だけに着目して専門性があるなしを言うのは違うと思う」(内田千恵子委員・日本介護福祉士会理事)、「ベッドメイクの名目で実際は利用者の身体状況や様子の確認等を行っているのであれば、それは専門職の仕事。単に作業として生活援助があるわけではない」(陶山浩三委員・UAゼンセン日本介護クラフト

ユニオン会長)、「ホームヘルパーの専門性が理解されていない。生活援助は決して家事代行ではない」(花俣ふみ代委員・認知症の人と家族の会常任理事)など、疑問の声が多く上がった。

一方で、「介護人材の類型化については、是非、推進してもらいたい」(佐野雅弘・健康保険組合連合副会長)、「介護助手は施設だけでなく、在宅にも必要。家事援助は一つの職業として発展させればよく、職業化していくべき」(栃本一三郎委員・上智大学教授)など、類型化・機能分化を肯定する意見もあった。

議論は年内を目途に取りまとめられるが、「介護人材の類型化・機能分化」については、部会の下に「福祉人材確保専門委員会」が設置されており、そちらでも引き続き検討を進めるとしている。

出典:シルバー産業新聞 ウェブサイト→http://www.care-news.jp/

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