介護の専門家に聞く!今知っておきたい介護ニュース その⑤ 介護保険制度改正による「福祉用具」「軽度者支援」の今後

少子化・高齢化がますます進展し、厳しい財政事情の下で社会保障制度改革が進められる中、介護保険制度は医療保険制度を巻き込み、大きく変化・変容することが見込まれます。すでに、平成30年度からの第7期の介護保険制度改正に向けて、議論が始まっています。制度がどのような方向に向かうのか、最新のニュースに基づき、白鷗大学教育学部川瀬善美教授に今知っておきたい介護ニュースを解説していただきます。

※最新ニュースは、シルバー産業新聞掲載記事を基に、同社の許可を受けて、弊社において一部表現を変更しています。

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福祉用具・住宅改修の利用者負担のあり方や軽度者支援の適切な価格総合事業移行など論点に

厚生労働省は7月20日、社会保障審議会介護保険部会(座長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開催し、次期制度改正に向け、福祉用具・住宅改修や軽度者の支援のあり方にについて検討を行いました。厚労省が論点として示したのは、「福祉用具・住宅改修の利用者負担のあり方や適切な価格の仕組み」などです。軽度者の支援では、生活援助サービスの見直しや予防給付の総合事業移行などを含む論点を示し、委員に広く意見を求めました。

※より詳しい内容は、文末に掲載しています。ぜひご覧ください。

白鷗大学 川瀬教授はこのニュースをこう見る!

2016年7月20日に行われた、社会保障審議会介護保険部会での「次期制度改正に向け、福祉用具・住宅改修や軽度者の支援のあり方にについて検討」。これは以前にもコメントしたように、2015年6月閣議決定の「骨太の方針」に基づいて、2018年の第7期介護保険を前に、財務省が強く主張する「福祉用具貸与のほか訪問介護の生活援助、バリアフリー化の住宅改修を介護保険の給付から外して原則自己負担にすること」を踏まえ、17年に法改正、18年4月からの第7期介護保険制度および介護報酬改定に間に合わせ、実施するための、工程表に基づく予定通りの論議でしょう。

ところで、厚生労働省の統計によると、2016年2月に介護保険で福祉用具をレンタルしたのは184万人。そのうち、国が要介護を軽いとみなす要支援1、2と要介護1、2の人(軽度者)は114万人で六割を占めますが、一方、それらの人への福祉用具貸与のための給付費は95億円で、介護保険給付費全体からみればたった1.4%に過ぎません。

このことから、カットできる給付を見つけ出して「自己負担化、市町村が実施する地域支援事業への移行と言う形での利用制限」とすることは、介護保険料の上昇に伴い8割以上の保険料納付のみでの非利用者から、「保険料上昇を抑制するためには介護度の低い利用者に応分の負担は(負担強化も)やむを得ない」と言う主張が理解・支持されるとの判断に基づいてのものでしょう。

ところで、介護保険制度は2014年改正で、「一定以上の所得」がある者の利用者負担2割化が導入されました。2013年の部会で、老健局は、2割負担化となるのは2倍75万人程度(在宅利用者の15%、特養利用者の5%)という推計も出しました。しかし、2015年8月以降、利用料が2倍になった人は約59万人で、推計の8割程度であったとしています。

「サービス別には、福祉用具レンタルが約18万人、デイサービスが約17万人、ホームヘルプ・サービスが約16万人、特別養護老人ホームと老人保健施設が各約2万人で、在宅サービス利用者のほうが2割負担は多い」(「介護保険事業状況報告(暫定)」2016年4月分)となっています。

今回、論議となっている「論点」は「医療保険における患者負担割合を踏まえ、利用者負担割合のあり方をどのように考えるか」です。医療保険の患者負担は、70歳未満は3割負担、70~74歳は2割負担(一部1割)、75歳以上は1割負担です(参考資料1「利用者負担割合の変遷」)。これを基に、介護保険の利用者負担のさらなる拡大として、年齢別の負担という方法が示され始めています。このような状況下では、もはや要支援1、2と要介護1、2の利用者負担の強化は避けられないと考えます。

白鷗大学教育学部 川瀬善美教授

Mr.kawase S

【プロフィール】川瀬先生は、福祉を愛と奉仕の世界だけでなく、産業・ビジネスの視点から捉えていくべきと、早くから提唱してこられました。北欧、イギリス、ドイツの介護事情や、米国・豪州・韓国の介護ビジネスにも精通し、大学で教鞭を執られるかたわら、全国各地の高齢者施設・病院経営の経営コンサルタントとしても活躍中。理論面だけでなく、介護施設現場の実情も熟知されています。

シルバー産業新聞掲載記事にみる「次期改正に向けた福祉用具・軽度者支援の負担のあり方について」

介護保険部会「福祉用具」「軽度者支援」テーマ 負担のあり方・適切な価格総合事業移行など論点に シルバー産業新聞 2016年8月10日号

福祉用具・住宅改修については、共通事項として、まず「利用者が適切なアセスメントとケアプランに基づき福祉用具や住宅改修を利用できるよう、どのような方法が考えられるか」を論点に示した。念頭にあるのは、大分県杵築市の例。同市では、サービス担当者会議だけでなく、地域ケア会議の場でも福祉用具や住宅改修、例外給付について個別の検討しており、適切な利用がなされるよう重層的な仕組みが構築されている。厚労省としては、こうした取り組みを横展開したい考えだ。

2つ目の論点は、福祉用具・住宅改修の「利用者負担のあり方」について。この点については、政府の骨太の方針で見直しの検討が求められており、財務省からは、具体的に軽度者(要支援1~要介護2)の福祉用具貸与・住宅改修を「原則自己負担(一部補助)」にすることなどが提起されている。

これに対し、厚労省は「福祉用具や住宅改修が、利用者の自立支援、状態の悪化の防止、介護者の負担軽減等の役割を果たしていることを考慮した上で、どのように考えるか」と、現行の福祉用具や住宅改修が果たしている役割を強調した上で、委員に意見を求めた。

委員からは「現行制度が原則自己負担に切り替わるようなことはあってはならない」(花俣ふみ代・認知症の人と家族の会常任理事)など、現行維持を求める意見が多くあった一方、一部の委員からは、「住宅改修については、利用者の経済力に応じて、給付額に上限を設定したり、自己負担としてはどうか」(土井丈朗・慶應義塾大学教授)など、住宅改修のみ負担割合を見直すべきとの意見もあった。

さらに、福祉用具貸与・販売については、価格について「極端な価格差が可能な限り生じないようにするとともに、利用者が適切な価格の福祉用具を選択できるようにするため、どのような仕組みが考えられるか」を論点として提示。

財務省から平均貸与価格より10倍以上の価格で取引されているケースが問題視されていることを受け、委員からは貸与価格に上限を設けることや公定価格を導入することにより、極端な価格差の是正を求める意見が相次いだ。

ただ、当日配布された資料には、極端な価格差のケースが全体のどの程度の割合を占めているのかなど、具体的な資料が示されておらず、「データを出して議論しないと、おかしな話になる」(馬袋秀男委員・民間介護事業推進委員会代表委員)など、実態に基づいた議論を求める意見もあった。

このほか、保険給付の対象種目についても、「それぞれの種目の特性や利用実態等を踏まえて、どのように考えるか」との論点も提示。住宅改修については、「工事価格の実態の把握や、施行水準のばらつきを抑え、利用者が適切な改修を受けるために、どのような仕組みが考えられるか」として、前回の改正で見送りになった登録制の導入も踏まえ、委員に広く意見を求めた。

軽度者の給付抑制検討「検証を踏まえてから」

この日の部会では、軽度者への支援のあり方についても議論が行われた。

同テーマについても、政府の骨太の方針で、軽度者(要支援1~要介護2)の生活援助を「原則自己負担(一部補助)」にすることや、全てのサービスを地域支援事業に移行させることなどを念頭にした見直しの検討が求められている。

これに対し、厚労省は「介護保険制度においては、軽度者について要支援・要介護度の区分による定義は設けていない」と資料に明記。ゼロベースで議論を行う姿勢を示した。

その上で、論点として①要支援・要介護度に応じて支援のあり方に違いを設けること②生活援助の負担のあり方③生活援助以外の介護給付・予防給付の地域支援事業への移行④予防給付の訪問介護、通所介護の総合事業への移行が経過措置期間であること――の4点を挙げた。

これらに対し、支払い側の委員からは、「要介護3以上の重度者に給付を重点化していかざるを得ない。生活援助の自己負担、地域支援事業への移管についても考えていく必要がある」(井上隆・日本経済団体連合会常務理事)など、軽度者の給付の抑制を求める意見があった一方で、多くの委員は給付抑制策に反対や慎重の立場。特に多かったのが、前回改正で予防給付の訪問介護、通所介護を総合事業に移行したことの検証なしに、具体策を検討できないとする意見だ。

「現状では総合事業を開始した保険者は全体の3分の1。目指してきた多種多様な事業主体の参加や重層的なサービスの提供がどの程度なされたか、検証の段階に至っていない」(斎藤秀樹・全国老人クラブ連合会常務理事)、「予防給付の訪問介護、通所介護を地域支援事業に移した検証もできていない現状では、生活援助を見直すことは時期尚早と言わざるを得ない」(陶山浩三・UAゼンセン日本介 護クラフトユニオン会長)」などの意見が相次いだ。

厚生労働省では今回の議論を踏まえ、さらに論点を絞り、必要な見直しを検討していく考え。議論は年内に取りまとめられる予定になっている。

最新ニュースは「シルバー産業新聞」の協力により、著作権の許可を得て掲載しています。

出典:シルバー産業新聞 ウェブサイト

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