最近では、特に都市圏でのバリアフリー化が進んできています。駅のエレベーターの設置率が高まり、エレベーターと同時にスロープを設置している場所にもよく遭遇し、車椅子ユーザーとしては生活の利便性が向上してきたと思います。しかし、「本当に車椅子ユーザーのことをきちんと考えられているか」と疑問が生まれる現場に出くわすこともしばしば…。
今回は街に溢れているバリアフリー化の盲点についてお話させていただきたいと思います。
ひとりでは危険!便利そうなスロープの落とし穴
一見、便利に思えるスロープでも、実は自走式の車椅子ユーザーひとりで利用すると、さまざまな理由でかなり恐怖を覚えるスロープになっている場合があります。
たとえば、手前に助走するスペースが無いスロープ。その場合、ユーザーはいきなり全力で車椅子を漕ぎ始めて坂に挑まなければなりません。そのため、たとえ手摺りがあったとしても、介助者なしでスロープを上がるのは車椅子ユーザーひとりではかなりきついのです。
そのほか、下った先が壁になっているスロープもひとり車椅子ユーザーにとっては危険です。前進走行で下るとき、下り坂ではスピードが加速するため、かなり慎重にブレーキを掛けながら下らないと、確実に壁にぶち当たってしまいます。
ブレーキを掛けながらといっても、ハンドリム(手で漕ぐ部分)でブレーキを掛けながら行くと、急なスロープだと摩擦でハンドリムが熱くなることがあるため、革の手袋が無ければやけどをしてしまう恐れもあって大変危険です。また、バック走行で下る場合は、壁があることによって、後ろが見えない不安や恐怖が倍増します。
車椅子ユーザーひとりでの外出が増えている
バリアフリー法も制定されていて、街ではスロープの設置率が上がってきているのですが、車椅子ユーザーがひとりで使いやすい安全なスロープは少ないことが現実です。これはおそらく、車椅子ユーザーの外出を介助者ありきで考えているバリアフリー化が多く、まだまだ日本では、車椅子ユーザーひとりでの外出は少ないと思われがちだからではないでしょうか。
近年では、障害者雇用率を達成している企業も増加傾向にあり、企業に務める車椅子ユーザーも増えているので、たとえば通勤などで車椅子ユーザーがひとりで外出する機会が多くなってきているのです。
介助者なしの車椅子ユーザーにも優しいバリアフリー化を
このように、都会ではバリアフリー化が進み、スロープがあるだけありがたいと思う反面、さまざまなシチュエーションに行き届いたバリアフリーになっていない場合が多々あります。せっかくスロープを設置するのですから、今後は、介助者なしの車椅子ユーザーがひとりで利用する場合の意見なども取り入れて、設置を進める取り組みが浸透してくれるとうれしく思います。
また、都会に比べるとまだまだ地方都市のバリアフリー化は発展途上で、そもそもスロープの設置すらままならない場所が多いというのが現状です。これから地方都市でもバリアフリー化が進んで行くと思いますが、都会で多発している「不完全なバリアフリー化」にならないように、期待しています。