ありがとう5周年特別企画「ヒント!になる 動画配信キャンペーン!」と題して、専門家による動画コンテンツを全3回にわたり配信する予定です。
介護にプラス Live+Doでおなじみの排泄用具の情報館むつき庵 所長の浜田 きよ子さんと副所長の熊井 利將さん、株式会社ヘルシーオフィス フー代表で管理栄養士の德田 泰子さんに3つのテーマについて、お話しいただきます。
講師紹介
第1回は排泄用具の情報館むつき庵所長浜田 きよ子さんと同副所長の熊井 利將さんに排泄の困りごと解決のヒントをお聞きます。
まず、今回お話をお聞きする専門家のお二人をご紹介します。
排泄用具の情報館むつき庵 所長 浜田 きよ子さんです。数多くの排泄ケアについての相談を受け、特別養護老人ホームで、事例検討を重ねて20年余り。排泄ケアのスペシャリストを養成するおむつフィッター研修を主宰。おむつトラブル110番(メディカ出版)をはじめ、多くの著書があります。本日は、よろしくお願いいたします。
もうお一人は、排泄用具の情報館むつき庵 副所長 の熊井 利將さんです。「おむつ検定テキスト」の執筆メンバーで、介護にプラスな専門店Live+Do Styleから申し込めるインターネット受検の『e-おむつ検定』では講師を担当していただいています。おむつフィッター研修や各地での講演会などを行っていらっしゃいます。本日は、よろしくお願いいたします。
なぜ排泄のお困りごとをテーマに選んだのか
ありがとう5周年特別企画では、4月に「アンケートに答えてプレゼントキャンペーン」を実施しました。
アンケートで介護のくらしの困りごとをお聞きすると、「初めての介護で情報がない」、「介護の食事」、「排泄」、「認知症」、「住宅環境や福祉用具」、「介護サービスの利用拒否」などさまざまなお困りごとが寄せられました。その中で、一番多かったのは「排泄」に関するお困りごとでした。
食事・入浴・排泄の介助は、三大介助といわれます。在宅介護において、食事や入浴は、お弁当の宅配や訪問入浴など専門のサービスがありますが、排泄にはありません。そのため、排泄の問題は、在宅介護を続けることがむずかしくなる大きな要因となります。
また、排泄に関しては顔見知りには相談しにくく、ご自身やご家族だけで抱え込んでしまいやすいという側面もあります。
そのため、介護生活メディアで排泄の困りごと解決のヒントをお伝えすることができれば、直接は相談しにくくても、検索で情報に出会い、解決の糸口を見つけていただけるのではないかと考え、動画コンテンツのテーマに「排泄のお困りごと」を選びました。
「下痢が続いておむつから漏れる」というお困りごとについて
本日は、実際にアンケートに寄せられた「下痢が続いておむつから漏れる」というお困りごとについて、専門家のお二人に、解決に向けたヒントをお聞きしたいと思います。
リブドゥコーポレーションにもリフレをご購入いただいているお客様から同様のお困りごとが多く寄せらせています。
大人用の紙おむつ、中でも尿とりパッドは、尿を吸収するのに適した設計になっています。そのため、軟便だと表面が目詰まりを起こしてしまうことが、便がおむつからもれてしまう一因となります。
浜田さん、便のモレをおむつだけで解決しようとしてもなかなかうまくいきませんね。
下痢が続いておむつから漏れると、介護している方は大変ですね。介護を必要とする方も、頻繁な下痢は辛いだろうと思います。軟便が付着していると皮膚トラブルが起こりやすく、それも気になります。
排泄ケアでは、目の前の困りごとへの対応と、その原因を探ることが重要です。現状への対応としては、おむつの当て方やサイズの見直し、また軟便対応のパッドやシートを使うことで漏れは解消されるかと思います。
でも重要なのは、なぜそのようなことが起きているのかを探ることです。下剤を服用されていたら、下剤の調整も重要です。下剤の服用は「便秘が続くため」だとしたら、便秘の原因を探る必要があります。
便秘の原因は食事内容や水分摂取量などにも関係します。下剤の服用がなくて下痢が続いていたら、医師に相談する必要があります。
このように、排泄トラブルの原因を探るためには、その方に関わるさまざまな情報が必要です。そして原因が把握できれば、おむつのなかでの排便では無くなる可能性があります。そうなるとケアをする方にとっても、される方にとっても、とても楽になります。
困りごと解決に向けた確認してもらいたいことの例
浜田さん、熊井さんには事前に、おむつから便がモレるときに、困りごと解決に向けて確認してもらいたいことの例を挙げていただきました。
浜田さん、排便には様々なことが影響するのですね。
そうなのです。排泄は暮らしの全てに関わるものです。私は水分摂取量が少ないと翌日は便秘になりがちです。家でパソコンに向かってばかりで、運動していないとはやり便秘がちになります。食物繊維を意識した食事に変えたことで、便秘の頻度が少なくなりました。
出張中は、交感神経が優位になっているのか、いつもと環境が異なるせいか、排便は難しいです。自分のことを振りかえってみて、暮らし方がこんなに排泄に影響を与えているのだと感じます。
熊井さんは以前ケアマネージャーとしてお勤めでしたが、このような事例に出会われたことはありますか?
そうですね。以前このような相談を受けたことがあります。脳梗塞の後遺症で右上下肢に麻痺がある男性を介護している妻から、夫の便が漏れて困るという悩みでした。
下剤を服用するので便意を感じてもトイレまで間に合わないことが多く、衣類や廊下に下痢便がついて困っていました。
おむつフィッターを受講する前だったら、パンツ型紙おむつをすすめていましたね。しかも、本人がおむつの使用を嫌がったら、どうすれば、おむつをはいてもらえるのか、を考えたと思います。
実際に、この方は食事内容の見直しと、日中の運動の確保、排便のタイミングの見直しで下剤を服用しなくてよくなりました。
浜田さん、排便だけでなく、排尿でもこのような事例はあるのでしょうか?
仕事場に、母親のことで息子さんが相談にこられました。このときは車いすに座ったお母さんもご一緒でした。車いすを押してトイレまで母を連れていっているけれど、パンツ型紙おむつから尿漏れして困るという相談でした。
お母さんの状態を観察すると、姿勢が崩れて仙骨座りになっていました。すると、息子さんがお母さんの姿勢を直しておられました。それを見ていて、姿勢を直すたびに、パンツ型紙おむつの股間に隙間ができているようだと分かりました。
むつき庵に合った車いすを、お母さんに合わせて座っていただきました。お母さんの姿勢がよくなっただけでなく、座面の高さを合わしたことで、立てることが分かり、排泄ケアが楽になりました。
息子さんからは、車いすをお母さんに合ったモノにしてからは、パンツ型紙おむつからの尿漏れはないとのことでした。立つ、座るを繰り返すうちに、排便にもよい影響がありそうでした。
そうなのですね。お二人の事例をお聞きして、具体的なイメージが湧きました。色々な要素を客観的にみて解決策を考える、その時に大切なことを教えてください。
ケアを受けている人の立場になって考えてみると、見えてくることがあります。おむつを外して困る方がおられましたが、排泄記録により、それは本人が排尿したいときだと分かりました。
陰部が痒いから、掻いてしまい、おむつが外れたという方もいました。そのようなことが起きる理由を考えることは大切です。ただ介護者お一人で悩まないでくださいね。ケアマネさんや私たちもそうですし、相談してみることは大切です。
熊井さん、もし排泄に何らかの支障が生じたとき、相談できる場所はありますか?
むつき庵に相談もできますし、全国で23ヶ所にミニむつき庵というところもあります。
ミニむつき庵は「むつき庵のような排泄ケアの相談窓口が各地域にできれば‥」という思いから生まれました。地域に根ざし、幅広い視点からの排泄の相談・販売・情報提供を目的とした場所です。排泄の相談は、おむつフィッターが担当します。
ただ、場所によっては休止しているところもあったり、営業日、時間も違ったりします。詳しい場所や連絡先はむつき庵のHPなどでご確認ください。
また、全国の都道府県には一人以上のおむつフィッター研修を受けられた方がおられます。もしかしたら、近くの施設や病院などでお仕事をされているかもしれませんので、おむつフィッターの資格を持っている方がいらっしゃれば、ご相談されても良いかと思います。
また、むつき庵やミニむつき庵以外にも皆さんの周りにいる様々な専門職の方にいらっしゃると思います。例えば、福祉用具専門相談員とか看護師さんとか理学療法士さん等いろんな方にご相談いただければと思います。
紙おむつの重ね使いについて
【浜田きよ子さん】
熊井さん、私は特別養護老人ホームなどでも勉強会とか相談を受けたりしているんですけれど、おむつを重ねて使っているというところが結構あると思われませんか?
【熊井利將さん】
そうですね。私がケアマネをやっているときに受けた相談で、テープ止め紙おむつの中にインナーとして尿とりパッドを3枚重ねていて、最終的にはそこにフラットタイプの紙おむつを3枚重ねて使用している方がいらっしゃったんです。
それは、ご家族さんが尿が漏れたところに当てることを繰り返して、そこにヘルパーさんからの「漏れているからここに重ねたらいいよ」というアドバイスもあって、どんどん重ねていったようなのです。それは、紙おむつの基本的な知識がなかったということが背景にあって起きたのだと思います。
結果的に、紙おむつを使っているご本人がしんどくなって、食事量が減ったりとか姿勢が崩れてきて座位をとるのが難しくなったりとか、様々な問題が起こってきました。
良かれと思ってやっていたことがご本人のためにならなかった例でした。それは最終的にどうなったかというと、テープ止めと尿とりパッド1枚になったのですが、そこに行きつくまでにはご本人さん、ご家族さん、ヘルパーさんそれぞれにお伝えすることが色々ありました。でも、お話してご理解いただけて、最終的には良くなったという事例でした。
【浜田きよ子さん】
良くなられて良かったですよね。私が病院に行った時も両手を縛られている方がいて、「なぜですか?」って聞いたら、「おむつを外すからです」と言われて、その方もフラットという大きなシートを2枚と尿とりパッドを3枚をテープ止めの中に入れている、率直に言えばひどい状態でした。
ご本人からすると蒸れて暑いし、おむつを取りたくなる気持ちもわかります。病院からしてもたくさんの紙おむつを使うことでごみが増えることも大変でした。全然いいことはないのに、やはりいろんな意味で情報が届いていないことを痛感します。
紙おむつメーカーさんも情報をしっかり紙おむつの基礎知識の情報を発信されているのに、やはりまだまだそういった情報が伝わっていないなということを改めて思い、「たくさん重ねる」という目先の対応は、百害あって一利ないと言えるかと思います。
おむつフィッター研修を受けて
【浜田きよ子さん】
熊井さんご自身は、おむつフィッター研修を受けられていろんな学びがあったと思いますが、何か気づかれたことってありますか?
【熊井利將さん】
おむつフィッター研修では、グループワークをやっているじゃないですか?あの時にいろいろな専門職の方の意見を行くことができる機会があったんです。私一人の視点ではなく、いろんな方の視点で介護される方を見るというのがすごく学びになりました。
今回のように排泄の困りごとがある方も、おうちでお一人で悩まれていることが多いと思うんです。そういった時はいろいろな専門職の方にお悩みを聞いていただくと、ご本人やご家族さんと一緒に悩んで、解決の糸口を見つけていただけるかなと思います。
【浜田きよ子さん】
確かにそうですよね。どうしても一人で考え込んでしまわれたり、大変になってしまわれたりするとますます介護が大変になるので、お医者さんとかケアマネさんとかいろいろな専門性を持った方と相談する中で気がつかれることがたくさんありますよね。そのことも私たちはとても大切なことだと思っています。
おわりに
浜田きよ子さん、熊井利將さん、お話を聞かせていただきありがとうございました!
今日は、「下痢が続いておむつから漏れる」というお困りごとについて、解決のヒントを聞かせていただきました。
排泄ケアでは、目の前の困りごとへの対応と、その原因を探ることが重要です。排泄は暮らしの全てに関わるものだからこそ、おむつからのモレだからおむつだけで解決しようと考えるのではなく、いろいろな要素を確認しながら、そのようなことが起きる理由を考えることが大切だということを教えていただきました。
また、困ったときには介護者お一人で悩まずに、ケアマネさんや全国にいるおむつフィッターなどのように様々な専門性を持った方にぜひご相談ください。
なお、介護にプラスLive+Doでは、「介護のためのおむつのヒント」で、排泄の困りごと解決のヒントになる情報を掲載しています。おむつフィッターのご紹介や浜田さんや熊井さんのインタビュー記事もありますので、ぜひご参考にしていただけると嬉しいです。
これからも、介護にプラスLive+Doでは、介護のくらしに役立つアイデアや情報を発信し、介護のくらしに“プラス”をお届けしていきます。
本日は最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。