「家族が認知症かもしれないけど、一体何から対処すればよいのかわからない…。」そんな不安な気持ちを払拭するには、「認知症について知ること」がまず大切。家族の介護をする上でも、認知症について理解しているかいないかで、対応の仕方は大きく変わってきます。
原因探しよりその人の理解が大切。
介護の現場にいると、「脳梗塞を発症して、入院。その後、認知症の症状が出てきた…」というお話をお聞きすることがあります。認知症の主な症状の現れ方は、進行度合いによって異なりますが、中核症状として、「記憶障害」「見当識障害」「理解・判断力の低下」「実行力障害」などが挙げられます。
慣れ親しんだ環境の中での配慮を!
認知症と診断された場合、具体的にどのように対処すれば良いのでしょうか?認知症との向き合い方について、高齢生活研究所代表の浜田先生にお話を聞きました。
認知症の主な症状の現れ方は進行度合いによって異なるが、食事をしたがどうかも忘れてしまったり(記憶障害)、今日がいつで自分のいる場所がどこなのかもわからなくなったり(見当識障害)、季節に合った衣服を着ることなども難しくなる(判断力の低下)ことがある。
一方、その人の性格や介護のあり方によって現れ方が変わる症状もある。例えば徘徊や物盗られ妄想、嫉妬妄想、蒐集(しゅうしゅう)癖など。だからこそ、周囲の人の認知症に対する理解やいい関わり合い方が大切、というわけだ。
認知症の人はいわばぞんざいの不安を抱えているといっても過言ではない。記憶が断片になり、私が私でなくなっていくこと、これは言いようのないほど不安な状態である。そんな時にガミガミ叱ったり、諭したりするのは逆効果だ。
できるだけなじみの関係の中で、慣れ親しんだ環境の中で生きていけるように配慮したい。住み慣れた住まいで暮らせることが望ましいが、それが難しくなったとしても認知症の人に適切な介護をしてくれる場所(グループホームや認知症デイサービスほか)が現在あちこちに存在しているので、それらを活用するのもいい。
まとめ
食事をしたか、していないかもわからない。今日がいつなのかもわからない。自分が自分でなくなっていく不安は計り知れません。一番不安なのは、認知症の本人だということ。「なんでそんなこともわからないの?!」とガミガミ叱るのは逆効果です。
本人の不安を理解して、慣れ親しんだ環境の中で配慮してあげることが大切です。認知症と向き合う上で控えるべきことは「原因を探すこと」と「叱ったり諭したりすること」。そこを理解しておくことが、頑張らない介護にもつながっていきます。
出典:浜田きよ子著「介護の常識」講談社