介護保険はケアマネ(ケアマネージャー)抜きには利用できない、といっても過言ではありません。ケアプランの作成にはじまって、サービス事業所(たとえばヘルパーの派遣など)の手配から、調整はもちろん、介護に関する相談にものってくれます。
一度、要介護認定を受けてケアプランを立てても、その後、介護度が高くなると、ケアプランの変更も相談しなければなりません。だから、介護保険を利用する本人も介護する家族も、どんなケアマネと出会えたかで、介護生活がまったく違うものになってしまいます。
まずは事業所に電話を。最後は直接会って話すことが大切。
ケアマネはさまざまな場所で働いています。まず、要介護認定通知とともに送られてくるリスト(居宅介護支援事業所リスト)を見て、自宅との距離が近いところから電話してみましょう。何かにつけて近くの方が来てもらいやすくなります。近所や知り合いの評判、また各地にある「在宅の介護者の会」で聞いてみると、最新のナマの情報を入手できます。役所の窓口では、事業所の良し悪しまでは言ってくれませんから、とても参考になる情報です。
また、そのケアマネが過去にどんな仕事をしていたか、医療系(看護師・保健師・薬剤師など)か、介護系(介護福祉士・社会福祉士・ヘルパーなど)かも確認しましょう。そして、利用者の障害によっても、ケアマネの選び方を検討する必要があります。いずれにしても、最後は人と人なので、会って話をしてみることが一番の決め手です。
「何をしてほしいか」の優先順位をつけて、自分の理想的なケアマネを選ぶ。
ケアマネが有能だからうまくいくとは限りません。その人との相性も大切です。
次の10項目から自分にとってどんなケアマネが理想的か、優先順位をつけてみましょう。それが、あなた自身のケアマネを選ぶポイントになります。
- きちんと話を聞き、対応が誠実
- 経験が豊富で、頼りになる
- 親しみやすく、気軽に相談できる
- プランの変更をいとわず対応してくれる
- 幅広い専門知識がある
- 情報が豊富でネットワークも広い
- フットワークがよく、対応がはやい
- 苦情処理が迅速で誠実
- すぐに連絡がとれ、気軽に来てくれる
- 公正中立でサービスを押しつけない
「ケアマネに全部お任せ」は無責任。「一緒に介護してもらう」の気持ちで。
ケアマネとは日頃からよく話し合い、本人や家族の状況を理解してもらうことが大切です。「すべておまかせ」「言わなくてもちゃんとやってくれるだろう」というのは、依頼する人の方が無責任。ケアマネというプロフェッショナルとはいえ、きちんと話さなければ本人や家族の感じていること、考えていることを読み取ることはできません。
日頃感じていること、困っていること、いま受けているサービスについてなど、どんなことでもいいので遠慮なく伝えましょう。本人のちょっとした変化や反応など、細かいことも意外に重要です。それは、ケアマネから見ると、何か重要なサインかもしれないからです。また、今相談しても解決しそうもないことでも、言っておくとケアプランをつくるときの参考になる可能性があります。
介護生活の主体は本人と家族で、ケアマネではありません。とはいえ、ケアマネを単なる介護サービスの調達係として扱うのも問題です。受けたいサービスを利用者や家族が自分で決めて、調整と手配だけを依頼されても困ります。ケアマネは全体を把握し、本人や家族が気づいていない点やこれからのことも考えています。ケアマネとの付き合いは、「よく聞き、よく話すこと」が基本です。
ケアマネの変更も遠慮しないで。それでもダメだったら事業所を替える。
担当のケアマネとの信頼関係が築けず、介護生活がスムーズに進められないとしたら問題です。努力してもコミュニケーションがうまくいかない、対応が遅い、どんなに話し合っても意見が合わない、利用する側の状況や気持ちを理解してもらえず、ケアマネとの信頼関係がどうしても築けないなど、何か問題があれば、遠慮しないで事業所の責任者に改善を求め、ケアマネの変更を依頼しましょう。
それでも解決しなかったら、事業所を替えざるを得ません。事業所と交わした契約書で、契約解除の手続きや申し出期間などをよく確認して、きりがいいところで移行します。
なお、事業所を替えるときは、介護サービスが途中で途切れないように、事前に地域包括支援センターなどで変更先を選んで、同じサービスを利用することが可能かどうか打診しておくことも忘れないようにしましょう。
まとめ
「介護保険はケアマネ抜きには利用できない」といっても過言ではありません。ケアプランの作成にはじまって、サービス事業所の手配から調整まで、介護に関する相談にものってくれます。ケアマネはさまざまな場所で働いています。まずは自宅との距離が近いところから電話してみましょう。
最後は人と人なので、会って話をしてみることが一番の決め手です。ケアマネが有能だからうまくいくとは限らず、その人との相性も大切です。ケアマネとは日頃からよく話し合い、本人や家族の状況を理解してもらうようにしましょう。
担当のケアマネとの信頼関係が築けず、介護生活がスムーズに進められないときは、事業所の責任者に改善を求め、ケアマネの変更を依頼し、場合によっては事務所を替えることも検討しましょう。なお、事業所を替えるときは、介護サービスが途中で途切れないように、事前に地域包括支援センターなどで変更先を選んで、同じサービスを利用することが可能かどうか打診しておくことも忘れずに。
記事協力:高齢生活研究所代表 浜田きよ子さん
出典:浜田きよ子著「介護の常識」講談社