介護が必要になったとき、いったい何から始めればよいのでしょうか?「介護」=「生活全般のお世話」というイメージを持つ方も多いと思います。しかし、実際は、生活のすべてをお世話すればよいというわけではありません。介護をはじめる際、いちばん初めに知っておくべきこととは?
「介護」=「生活全般のお世話」だけでいいの?
「介護」という言葉を辞書で調べると「高齢者・病人などを世話し介抱すること」と出ています。その意味では、冒頭の「生活全般のお世話」という言葉に間違いはありません。ですが、家族の誰かに介護が必要になったとき、「生活全般のお世話」をするという立ち位置では、お互いにとっていい関係を作ることが難しくなります。
専門家が提唱する、介護にとっていちばん大切なこと。
では、双方がよりよい関係でいられる介護ライフを送るために、知っておいたほうが良いのはどんなことなのでしょうか?
高齢生活研究所代表の浜田きよ子さんが書かれた本に、これから介護と向き合うかたにぜひ知っていただきたい「大切なこと」が書かれていましたのでご紹介します。
介護は「風邪をひいて寝込んでいる」といった一過性の状況ではない。「体が不自由になったり、障害を抱えたりした状態」がある程度の期間続くものなのだ。だから、その上で、本人や家族がどのような暮らしを作っていくのか、それが重要になる。
元気な状態での暮らしは自分であれこれ考えられる。「今日やりたいこと、これから長い時間をかけて行いたいこと」など、自分なりにこれからのことを考えられる。しかし体が不自由になったときは、自分だけではどうにもならない。それでも暮らしは続いていく。だからこそ、「排泄」や「食事」のお世話といった視点だけでは、不自由になった人の暮らしが見えてこない。
家族や周囲に介護が必要になったときにはまず考えなければならないのは「不自由になったその人の暮らしを組み立て直す」という視点だ。
介護は「単なるお世話」ではなく、「不自由さや障害を抱えても、その人らしく生きられるように」考えなければならない。人は「お世話される人として生きるのではない」のだから。誰もが長生きする時代を生きている。元気な時だけが自分の人生ではない。病んでも不自由になっても大切な自分の人生であり、時間なのだ。他者に対してもそのことを考えておこう。
まとめ
浜田きよ子さんのお話、いかがでしたでしょうか?介護というと、どうしても「排泄」「食事」など「生活の世話」だけに話が偏りがちですが、大切なのは「介護」という状況がどういうものなのか、その本質をしっかりと理解すること。「その人の生活を組み立て直す」という視点で介護と向き合えば、盲点だったことも見えて来るかもしれません。病気知らずの元気な時も、体が不自由になってしまっても、大切なその人の人生です。支援する家族も、その人らしく生きられるよう、その人の視点で考えてあげることが大切です。
出典:浜田きよ子著「介護の常識」講談社