いろいろな介護食、どれを選べばいい?食べるチカラに合わせた安全な食事形態とその分類

介護食については、多くの情報があふれており、高齢者がどの食事形態に適しているのか、判断に困っている方も多いと思います。個々の食べるチカラに合わせた食事形態の選択をすることで、安全で健やかな食生活を送ることができます。

今回は、大きさ、やわらかさ、凝集性(まとまり具合)、付着性(べたつき・へばりつき具合)などの状態によって分けられた食事形態の分類に基づき、各々の介護食についてご紹介します。

介護食の分類

介護食には、どうして食事の分類が必要なのか…?それは、高齢に伴い、噛む・口の中で食べものをまとめる・飲み込むなどの食べる機能が低下し、個人差が生じるためです。高齢者が、口から安全に食事をとるためには、個々の食べるチカラに合った食事が必要となります。

現在、食事分類には、様々な名称が用いられているため迷われることも多いと聞きます。次の通り、よく使用される食事形態の分類(見た目や食感の違い)、目的・特色(対象者の状態)・必要な咀嚼能力(必要な食べるチカラ)について、まとめてみましたのでご参考ください。

1. きざみ食
形態:通常の食事を必要に合わせて細かく刻んだ食事(ひと口大、きざみ、極きざみなど)
目的・特色:噛み切る、噛み砕く力が弱い状態
咀嚼能力:口の中で咀しゃく、食塊3)がつくれる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):無し
 
2. 軟菜・やわらか食*1)
形態:箸やスプーンで切れる程度の硬さ、バラけやすさ、口の中にはりつかない
目的・特色:歯がなくても歯ぐきで押しつぶしたり、すりつぶしたりできる状態
咀嚼能力:上下の歯ぐきによる押しつぶしができる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):コード4/UD1~2(歯ぐきでつぶせる4)
 
3. ソフト食・やわらか食*1)
形態:形があり舌で押しつぶせるやわらかさ、バラけない
目的・特色:舌で押しつぶせる、口の中で食塊を作り 送り込みも容易な状態
咀嚼能力:押しつぶし能力がある、食塊を作り 送り込みができる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):コード3/UD3(舌でつぶせる3)
 
4. ミキサー食・ペースト食・ピューレ食・ブレンダー食
形態:べたつかず、まとまりやすい
目的・特色:スプーンですくって食べることができる、口の中で簡単に食塊になる状態
咀嚼能力:下あごと舌の連動で食塊が作れる、口の中で保持できる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):コード2/UD4(ペースト状2)
 
5. ムース食・プリン食
形態:均質でべたつかずまとまりやすい、硬さ・離水2)に配慮
目的・特色:口に入れる前にすでに適切な食塊になっている状態、口にする前にある程度まとまりのある形態であれば 喉への送り込みができる状態
咀嚼能力:若干、食塊を保ち送り込みができる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):コード1/UD4(ムース状1)
 
6. ゼリー食
形態:均等でべたつかず まとまりやすい、硬さに配慮。離水がない
目的・特色:少量をすくって丸呑みできる状態、嚥下訓練など症例の評価に用いることがある
咀嚼能力:若干の送り込みができる
*学会コード・UDF(スマイルケア食):コード0/―(ゼリー状0)
 
やわらか食1):水分の加減によって、分類の位置が変わります
離水2):(りすい)食べ物から水分が分離する状態
食塊3):(しょっかい)食べ物を口の中でまとめる力
 
参照:学会コード:日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整分類2013より
UDF(ユニバーサルデザインフード):日本介護食協議会による食事区分
スマイルケア食:えん下困難者用食品許可基準(厚生労働省)

安全な食事が大切ですが、食べる機能があるにもかかわらず、 “噛まなくてもよい食事“や“舌でつぶせる食事”ばかりをとることはお勧めできません。食べるときに使う筋肉は、使わなければ弱くなり低下します。高齢者が持つ食べるチカラに合った食事形態を選ぶようにしましょう。

また、判断に迷ったときは、摂食嚥下に詳しい歯科医・歯科衛生士・看護師・言語聴覚士・管理栄養士などの専門家に相談してください。
 

介護食の分類による料理の変化

例えば、「小松菜と人参の和え物」を3つの分類に変化させると下記のようになります。以下のような食事形態でも、手を加えることで通常食と同じ食材のものを食べることができます。
 

【通常食】

  形態にこだわらない食事
 

【きざみ食】

  5mm以下にきざむ
 

【ソフト食】

  野菜をミキサーにかけて出し汁でのばしゲル化剤を加えて固め、形を作る
 

【ミキサー食】

  野菜をミキサーにかけて出し汁でのばしピューレ状に(写真はやや不均等な状態)
 

食事形態の違う介護食づくりのポイント

1. アクセントとなる食材を使う
ミキサーにかける場合は、食材を全部一緒に混ぜてしまうと色が均一になり、何を提供されているのかわからなくなります。人参のようにアクセントとなる食材を別に添えると、見た目による食欲を刺激し「食べるチカラ」が生まれてきます。
 
2. 家庭にある調味料・食材を活用する
必ずゲル化剤が必要な場合を除き、料理に合わせてマヨネーズ、ケチャップ、クリームチーズ、水切り豆腐、はんぺんなどの食材を混ぜ合わせることで、口の中でまとまり、食べやすくなります。身近な食材を活用して、介護食づくりを楽しみましょう。
 
3. 必要以上に手をかけすぎない
慣れない中での介護食づくりは、時に精神的に負担となってしまうことがあります。できるだけ家族と同じもので工夫ができれば、少しでも負担に思う気持ちから解放されます。時には市販の食品もおりまぜながら、頑張りすぎない程度に取り組んでみることをおすすめします。
 

まとめ

介護食は、通常の食事に比べ、手を加えねばなりませんが、決して特別な料理ではありません。普通の食事を少しやわらかく「煮る」、まとまりやすく「混ぜる」と食べやすくなります。焼き魚のような「焼きもの」は、水分が少なくなるので、焼いた後に出汁に浸して「焼き浸し」にすれば、みんなで一緒においしく食べられるようになります。

今回ご紹介したさまざまな介護食の食事形態。高齢者の機能に合った食事への理解を深め、作り手が無理なく続けられる食事作りの一助になれば幸いです。
 

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