「介護食の資格」ってどんなものがある?5種類の資格の特徴や取得方法を比較

高齢者の栄養面だけではなく、認知症や心の安定にも深く関わっている「介護食」。作り方の工夫やレシピなどが注目されていますが、高齢者への理解を深めながら、介護食に関する知識を身につけられる資格があるのをご存知でしょうか。

今回は介護食の資格をいくつかピックアップし、それぞれの特徴や取得方法などについてご紹介していきます。

目次
■「介護食の資格」が高齢者の食生活サポートに役立つ理由
■資格取得によるメリット
■代表的な資格は「介護食士」
-介護食士とは
-介護食士と管理栄養士の違い
■その他の資格の特徴&取得方法を比較
-介護食アドバイザー
-介護食コーディネーター
-介護食マイスター
-介護食コンサルタント
■さいごに

「介護食の資格」が高齢者の食生活サポートに役立つ理由

高齢者は年を重ねるごとに噛む力や飲み込む力が低下していきますが、このような身体の機能低下に合わせて調理された食事を大きく「介護食」といいます。

介護食を作るとき、栄養面に気をつけるだけではなく、食べやすさや味の濃さ、盛り付けに気を配るなど、高齢者一人ひとりに合わせた工夫が必要になります。そこで、高齢者の身体や心を正しく理解しながら、食事づくりのノウハウを身につけるのに役立つのが介護食の資格です。

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資格取得によるメリット

資格によって学びの幅に差はありますが、基本的には高齢期の身体と心に関する知識や、介護食の調理方法を学ぶことができます。基礎的な知識や技術を身につけることで、高齢者の健康状態に合わせた食事作りに応用することができます。

たとえば、食べることが難しい高齢者にもおいしく食べてもらえるメニューを考案したり、これまでにない調理法を導入したり、食事にちょっとした工夫を施したりなど、学んだスキルを日々の食事づくりに活かすことができます。

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代表的な資格は「介護食士」

介護食士とは

介護食の資格は、取得方法や学習内容の違いによっていくつかの種類に分けられますが、なかでも代表的なのが「介護食士」です。

「講習会への80%以上の出席」、「講習会終了後の試験で60点以上採る」など、比較的厳しい取得条件ではありますが、学科と実習を合わせた72時間の講習を受けられるなど、充実度の高い資格といえます。

ホームヘルパーや栄養士、調理師や介護福祉士など、介護関係の仕事に携わる方はもちろん、一般の方でも取得可能な資格です。

  • 学習内容

介護食士の資格は、全部で1級~3級に分かれており、学べる知識や技術の専門性は級を追うごとに上がっていきます。医学的な知識や心理学、栄養学、食品学などの幅広い知識も身につけることができます。

3級/学科(25時間)+実習(47時間)
・高齢者の身体的機能の特徴や栄養素の知識
・食品や調理する際の衛生の知識
・おいしく、食べやすく、飲み込みやすい「介護食」の作り方

2級/学科(16時間) + 実習(56時間)
・医学的基礎知識、高齢者の心理、食材の衛生管理
・「介護食」の普通食からの展開方法や生活習慣病予防食の作り方

1級/学科(32時間)+ 実習(40時間)
・栄養状態の判定、低栄養を考慮した献立作成、食品と薬の関係
・様々な方(身体機能や疾病)を想定した献立の作成と調理技術

  • 取得方法

認定施設で実施される介護食士講習会を修了後、修了試験を受験

  • 講習会の受講条件

3級…不要
2級…介護食士3級を取得
1級…介護食士2級を取得後、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳以上の方

  • 取得までにかかる時間

約4〜6ヶ月前後(講習会を開く認定校により異なる)

  • 取得にかかる費用

約70,000〜90,000円(講習会を開く認定校により異なる)

管理栄養士と介護食士の違い

介護食に関する専門的な知識を学べる介護食士ですが、よく混同される管理栄養士とはどのような違いがあるのでしょうか。

  • 「国家資格」か「民間資格」か

管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格です。4年間の養成校を経て栄養士の資格を取得後、一定の実務経験を積むことで国家試験への受験資格を得られます。

一方の介護食士は、内閣総理大臣認定の公益社団法人・全国調理職業訓練協会が認定した民間資格です。1級取得のためには実務経験を2年積み、約4〜6ヶ月の講習を受けることで受験資格を得ることができます。

  • 専門分野の幅

管理栄養士は食事に関する専門的な知識と技術をもって、乳幼児期から高齢期に至るまでの栄養指導や給食管理、栄養管理をおこなうことができます。介護食士はそのなかでも介護食の分野に特化した「介護食専門」の資格です。

すでに介護のお仕事をされていて、介護食に関する知識を深めたい方には介護食士がおすすめですし、食や栄養に幅広く関われる仕事に就きたい方には管理栄養士の資格取得が必要といえるでしょう。

その他の資格の特徴&取得方法を比較

介護食に関する資格は、介護食士のほかにも「介護食アドバイザー」や「介護食コーディネーター」などがあります。講習の受講が必須である介護食士に対して、これらの資格は通信講座などを利用した自宅学習が基本です。認定試験も自宅で受験が可能なため、スキマ時間に学びたい方におすすめです。

ここでは4種類の資格を挙げ、それぞれの概要や違いをご紹介します。資格によっては嚥下機能に問題がある方への食事には対応していないものもあるため、注意して選びましょう。

介護食アドバイザー/基本知識と技術を学びたい人におすすめ

一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)が主催の資格です。高齢者の心理や病気、栄養学において正しい食の基礎知識を持つことが期待される資格です。軟菜食やソフト食の作り方や盛り付け方、口腔機能のトレーニング方法を学ぶことができます。

  • 内容

・高齢者特有の症状や心の変化に関する基礎知識
・高齢者に多く見られる、そしゃく力の低下・内臓機能低下などの知識とその対処法
・口腔ケアの基礎や口腔機能トレーニングなどの実践方法
・栄養学の基礎知識や介護食作り、食事介助に関する基本知識
・症状に合わせた調理方法や、料理の盛りつけ・風味を失わない香りづけの工夫など

  • 取得方法

協会指定の認定教育機関にて全カリキュラムを修了後、試験を受験

  • 認定講座の受講条件

とくになし

  • 取得までにかかる時間

約3ヶ月前後

  • 取得にかかる費用

カリキュラム受講料 約40,000円前後(認定講座により異なる)+受験料 5,600円

介護食コーディネーター/高齢者の食事のレパートリーを増やしたい人におすすめ

一般社団法人日本味育協会認定の資格です。高齢者が食べやすい食事の調理法や工夫を学べます(嚥下機能に問題がある方への食事には対応していません)。

教材として全50種類の介護食を掲載したレシピ集が付いています。ご家族に高齢者がいらっしゃる方や、ホームヘルパーとして高齢者の食事作りに携わる方におすすめです。

  • 内容

・高齢者に必要な栄養知識
・食事介助に関する基礎
・配膳のポイント
・食材のカットの仕方や正しいとろみの付け方といった各食材の調理の工夫 など

  • 取得方法

協会認定の通信講座を受講し、期間内に課題を提出後、試験を受験

  • 認定講座の受講条件

とくになし

  • 取得までにかかる時間

約3ヶ月前後

  • 取得にかかる費用

約30,000円

介護食マイスター/介護食の基礎知識を身につけたい人におすすめ

日本安全食料料理協会(JSFCA)が主催の、介護食についての基本的な知識を有していることが認定される資格です。資格取得後は、介護食マイスターとして福祉施設などで活躍することもできます。試験期間は偶数月の20〜25日です。

  • 内容

・介護食を食べ始めるタイミング
・介護食の種類や介護食の作り方
・高齢者と食事の関係
・状態に応じた介護食の種類
・経管栄養の種類と手順や流動食の種類と特徴
・食事介助の手順と方法やポイント
・介護食づくりの便利なアイテムやレトルト介護食についての知識 など

  • 取得方法

試験を受験(資格取得に対応した講座もあり)

  • 取得までにかかる時間

約2〜6ヶ月

  • 取得にかかる費用

受験料10,000円(税込)

介護食コンサルタント/短期間で介護食の基礎を学びたい人におすすめ

 一般社団法人日本能力教育促進協会(JAFA)が主催の資格で、介護食の基本知識や具体的実践方法、介護にあたっての食の重要性などの知識を学べます。短期間で介護食の基礎を学びたい人におすすめです。

  • 具体的な学びの内容

・高齢者の運動機能や消化器系の働きや食と五感の関係
・誤飲や脱水症状など事故時の応急処置の方法
・体調に合わせた栄養バランスや食具の選び
・食事の調理法・取り方、安全な食材の見分け方 など

  • 取得方法

協会認定の講座で受講後、試験を受験

  • 認定講座の受講条件

とくになし

  • 取得までにかかる時間

約1ヶ月

  • 取得にかかる費用

講座受講料+検定料 約35,000円

さいごに

今回は、介護食に関するさまざまな資格をご紹介しました。種類によって内容に差はありますが、得られた知識が高齢者の「おいしい」を引き出す食事作りに生きてくるはずです。学びたいことや働き方に合わせて、介護食の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。