家族として、管理栄養士として考える。 元気に過ごすための「高齢者食」と「介護食」。

日常において、「介護食」というキーワードはとても身近になりました。しかし、実際には「どこからどこまでを『介護食』というのか」、「介護を必要としない、高齢者の食事はどうすればいいのだろう?」といった疑問の声を聞くことが多々あります。私自身、管理栄養士としての知識があっても、向き合う家族の介護食は理論通りにはいかないことが多くありました。少しずつ整理をしながら、これからの高齢者の食事を考えてみたいと思います。

弱まったからだの変化に寄り添う食事を―「高齢者食」

高齢者にとって、食事は日々の楽しみでもあり、生命を維持するためにも重要な役割を担っています。しかし、からだの機能が低下するにつれて、楽しみであるはずの食事は、「食べること自体」が負担となってしまうことがあります。「高齢者食」とは、介護食とまではいかないけれど、かたいものが食べづらい、むせやすくなったなど、加齢に伴って変化するからだの機能に応じた食事を指し、「介護食」と分類して考えています。

ただ、食べやすさを追求するあまり、必要以上に細かく刻むことで、かえって食欲を落としてしまうことも。見た目にも「食べたい」、「食べよう」と思える工夫を取り入れることが、高齢者の低栄養を防ぎ、介護予防へとつながります。年を重ねれば、誰しも衰えを感じるもの。からだの変化に寄り添いながら、個々の変化に適した食事で健康長寿をめざしましょう。

「高齢者食」とは?
特別な食事ではなく、加齢に伴って起こるからだの変化に適応した食事のこと。
工夫次第でご家族や普通食の方と同じような食事をとることができます。

POINT
1.食べやすさを工夫
例)具材を適度なサイズに切る、かみ切りやすいように隠し包丁を入れる など
2.低下した機能に応じた工夫
例)唾液分泌を促すために、①水分を補う ②酸味やうま味を活かす など
3.食欲を刺激する工夫
例)食事量低下を防ぐために、彩り、香り、形状、および盛り付けに配慮する など

 

弱まった機能を補う食事を―「介護食」

「介護食」とは、さらに弱まったからだの機能を補ってくれる食事です。たとえば噛む力が低下しているならば、食材のやわらかさを調整し、飲み込む力が弱っているならば、とろみをつけてまとまりやすく、飲み込みやすく配慮することが大切です。安全に食べられるように工夫します。とくに、食べたものが誤って気管に入り込む「誤嚥」は、命にかかわることもあるため、安全に食べられるような形状(食事形態)であることが重要になります。機能の低下に加えて、糖尿病などの生活習慣病を伴う場合は、それぞれの疾患に準じた対応が必要になります。
高齢者が健やかに生きるために、食べる機能が低下していても、「おいしい」と味わえる食事づくりを心がけましょう。


「介護食」とは?

高齢者食よりもさらに、食べる機能を補うことが必要な食事のこと。
安全に食べられるような形状で誤嚥を防ぐほか、生活習慣病などの病状に配慮した食事づくりが大切です。POINT
1.「噛む力」を補う
やわらかさを調整し、噛みやすい食事に(焼くよりも、食材に水分を含ませて蒸す、煮る など)
2.「飲み込む力」を補う
口の中でまとまりやすく、飲みこみやすい食事に(片栗粉やとろみ剤でとろみをつける など)
3.1・2に加えて、生活習慣病にも配慮を
糖尿病や腎臓病などの場合は減塩するなど、疾患に応じた調理を

 

まとめ

高齢者の食事は“つくるのが大変だ”というイメージを強く持たれることが多いですが、ひと手間をかけていただくことで食事に対する満足度は格段にアップします。おいしいものをおいしく食べたいと思うのは、私たちも高齢者も同じこと。管理栄養士として高齢者の栄養を考えると同時に、家族に向き合う一人として、一緒に食べる食事が「笑顔になれる時間」となるように、一緒に考えていきたいと思っています。

 

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