今回は「今から介護をしていかなくてはならない方」や「先々介護をしていかなくてはならない方」と一緒に、「そもそも介護食とはどういったものなのか?」を一緒に考えていきたいと思います。
「介護食」という特定の食べ物があるわけではない
「介護食」と聞くと一般の方の認識では、介護が必要な方が食べる「介護食という特別な食べ物がある」と認識されている方も少なくはないのではないでしょうか?しかし、この認識は実は間違っているのです。「介護食」という特別な食べ物が存在するのではなく、はたまた、「介護食レシピ」というとても専門的な調理法があるわけでもありません。
「介護食」とは、「被介護者の方に食べていただける、食べていただいても問題のない食事」と認識していただくのが、最も適切な解釈ではないかと思います。
「食べてもらう」ことが何より大事なこと。
何故私は、そのように考えるのか。その理由は、「人間は食事を摂らなくては生きて行けないから」です。つまりは、「必要な栄養素を摂取しなくては生きていけないから」ということです。ここがとても重要な点で、「食べること=生きること」なのです。生きてもらうために食べてもらわなくてはなりません。食べる量が減ってしまえば、人間は弱ってしまうというのは当然です。
ですから、どれだけ美味しい料理であろうと、被介護者の方に食べてもらえなくては全く意味がありません。ちゃんと食べていただくためには、被介護者の方の身体の状態に合わせた仕上げ方が必要となります。それがよく耳にする、「きざみ食」「ミキサー食」「流動食」などと呼ばれるものです。
実際の介護の現場では、普通の食事を、被介護者の状態に合わせて細かく刻んだり、ミキサーにかけたりして提供しているのが一般的です。
つまり、まずは普通の食事を作れることが重要です。さらにいうと、被介護者の好みなどがわかるとより食べてもらいやすくなると思います。被介護者が嫌いな食べ物をどれだけ細かく刻んでも、ミキサーにかけて食べてもらいやすくしても、おそらく食べてもらえる可能性は低いでしょう。実際に、介護の現場で手の込んだ洋風の食事を作っても、残される方が多いのが現状です。被介護者の方々にとって昔から慣れ親しんでいる「和食」の方が圧倒的に人気だということは、私も体験上よく知っています。
美味しいと思ってもらいたい気持ちは介護食も常食も同じ。
「好きなものだから食べてもらえる。食べてもらえるから元気になる」。ここが非常に重要な点だと思います。
もちろん、医師から止められている食べ物を摂取してもらうことはできませんが、極力「本人が好きなものを食べてもらうこと」から始めた方が、介護食への理解も早まるのではないでしょうか?そして、「本人の好きな味付けをしてあげること」も重要だと思います。
「介護食だから!」などと変に考え過ぎず、「介護食も、好きな人に美味しいと思ってもらいたい気持ちでつくるご飯と少しも変わらない」と思った方が少し気も楽になりますよね。
食べることが生きること。生きることは食べることです。
この点をしっかりと理解していただけると、介護食がもっと身近になるはずです。