「噛むチカラ」をきたえながらおいしく⾷事!

噛みやすいけど、やわらかすぎない料理のススメ

少し咀嚼(そしゃく)⼒が下がってきているけど、まだまだ噛むチカラはあるという方は、たくさんいらっしゃるのではないかと思います。咀嚼力の低下の理由は「噛みきる力自体が低下」「口が開けづらい」「口の中で舌をうまく使って混ぜることができない」など様々です。

安全な食事は大切ですが、安易にやわらかい食事にはせず、適度に噛みやすく、やわらかすぎない料理のレパートリーを増やすことが⼤事です。

ここで言う「噛むチカラ」は、硬いものを噛みきる力だけでなく、噛んで食べる行為そのものを広く指しています。

■噛むチカラが大事なワケ

歯の欠落などでやむを得ず噛む食事ができない方を除いては、歯のケアや治療を行い、できる限り噛める環境を整えてご自分で咀嚼するように工夫してみましょう。

長い期間、咀嚼しないでいると舌の筋力低下、唾液が減少してしまいます。使わないことによる機能低下(廃用症候群)も報告されています。噛まずにツルンとのみ込めた方がラクかもしれませんが、機能は退化してしまう恐れがあります。

咀嚼、嚥下(えんげ)が難しい方には、専門家の指導のもと、訓練やリハビリにより少しでも機能回復が望め、食事の楽しみが続くことを願っています。そのためにも特別でなく、何気ない日常の食事に噛む食事をとり入れて頂きたいと思います。それが介護予防へつながります。

■噛むチカラを補ってくれる介護食のヒント

現状の咀嚼機能に合わせて硬さや大きさの工夫をしてみましょう。

●硬さの工夫:噛みやすい、つぶしやすい硬さに。
【ワンポイント】
皮を残す:きゅうりの皮はピーラーなどで縦に剥くか、全部剥かずに「皮を剥く」「残す」を交互にしてタテジマに。色もきれいに仕上がります。

●大きさの工夫:食べ物の硬さによって、大きさを調整。(すべてを刻んだ食事にしない)
【ワンポイント】
隠し包丁:味をしみ込みやするする方法ですが、実は噛みやすくするテクニックのひとつ。
細かく刻まないことで、見た目もおいしそうになります。

●まとまりの工夫:口の中で噛み砕いていくとまとまりのある方が食べやすく、喉の奥に送り込みやすい。
【ワンポイント】
とろみ:くずや片栗粉であんをかけたり、マヨネーズやケチャップなどのとろみのある調味料を使ったりすることで、まとまりやすくなります。

●調理方法の工夫:蒸す、煮るなど食材に水分を含める調理方法は、食材がふっくらとやわらかく仕上がり、唾液の分泌が低下しても召し上がることができます。
【ワンポイント】
蒸す・煮るなど:焼く料理は、食材の水分や油分を出してしまうため、かたく身がしまってしまいます。水分を逃さない調理方法を工夫しましょう。

■「食べるチカラ」を意識した食事を食卓に

高齢者が食べやすくすることは重要ですが、必要以上では逆効果となります。自らの「食べる機能」を維持できる食事を日常の食卓に盛り込むことは、将来の介護予防になります。

食に対する意欲を失うことなく自らで咀嚼し、飲み込み、味わうことのできる機能を持ち続ける食事を工夫していきましょう。

参考文献:咀嚼の本(日本咀嚼学会)、摂食・嚥下障害を考える(独)国立健康・栄養研究所

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