ありがとう5周年特別企画 BONUS STAGE2「私が変わった。職場が変わった~おむつフィッターの実践レポートより~」

介護にプラスLive+Doでは、2021年4月から1年間「ありがとう5周年特別企画」で動画配信キャンペーンを実施しました。

排泄用具の情報館むつき庵所長の浜田きよ子さんと副所長の熊井利將さんに排泄の困りごと解決のヒントを話していただきました。

その動画をご覧になった介護施設で働く方から感想をいただきました。ポジティブな感想をいただいた一方で、「介護施設では、スタッフ間での意識の違いがあり、新しい事を始めると嫌がるスタッフもいる。」「時間内にたくさんやることがあるのに効率が悪い。」「目の前の困りごとへの対応と、その原因を探ることが重要だとはわかっているが、新型コロナのイレギュラーな対応にも追われて余裕がなく、実際に取り組むことが難しい」というような感想もいただきました。

そこで、むつき庵が主催している「おむつフィッター研修」を受講された方の卒業論文から、実際に介護施設で取り組まれている事例をご紹介します。ケアを受けている利用者の立場になって考える介護がしたいけれど、出来ないことに対してモヤモヤを感じている介護施設で働く方にぜひご覧いただきたいと思っています。

ありがとう5周年特別企画 BONUS STAGE2「私が変わった。職場が変わった~おむつフィッターの実践レポートより~」は下の画像をクリックすると、動画でもご覧いただけます!

再生時間:6:54

おむつフィッターとは

排泄に何らかの支障が生じたとき、適切な提案や情報があればご本人や介護者はより快適な生活を送ることができます。しかし現状はどこへ行き、誰に相談すればよいかわからないのではないでしょうか・・・。おむつフィッターとは排泄の困りごとに対して、おむつを含む排泄用具はもとより、医療や住環境、食事など幅広い視点からアドバイスできる人です。
※むつき庵ホームページより引用 https://mutsukian.com/2015/11/13/omutsufitter_about/

おむつフィッター2級 介護福祉士 Iさんが経験された事例

兵庫県の老人保健施設で13年働いている介護福祉士のIさんが経験された事例をご紹介します。おむつフィッター3級と2級を受講されています。

私と職場の変化

おむつフィッター研修を受講するまでは、排泄介助は支援ではありませんでした。濡れたパッド交換が業務であり、「どれだけ漏れをなくし、早く業務を円滑に行えるか」それだけでした。利用者の気持ちや生活を考えての支援ではなく、介護者側の気持ちや考えだけで、尿とりパッドの横当て、前当ては当たり前。2枚重ねで、上のパッドには穴をあけて吸収アップをすることを正しいとしていました。

私はおむつフィッター3級を受講し、排泄支援とは、おむつ交換やトイレ誘導でぬれた尿とりパッドを交換するだけでなく、個別性があり、生活史や病気などが大きく係わる「人にしかない尊厳のあること」と知り、学びました。まだ話し合える仲間は少なく、簡単なことから始めました。

便座に座らず、少し腰を浮かせ排尿する女性は床をよく濡らしていました。目は白内障のためにほとんど見えていません。その方の生活史から、若いころから農作業をしており、外で草に当たらないように腰を浮かして排尿していたことを知りました。「ここはトイレなので、安心してゆっくり座ってみませんか?」そのような声かけで座って排尿する回数が増えました。

おむつフィッター2級を受けていく中では、終日おむつ対応の方の事例に取り組みました。日中の排尿量は少ないが、夜間臥床すると一度の排尿量が増え、失禁・更衣の頻度が多い男性です。過去に脊椎に損傷をうけており、脳と膀胱の伝達がうまくできていないのではないか。日中座っている時間が長く、下肢の水分が腎臓まで戻りにくいのではないかと考え、尿測を行いながら日中臥床時間を設けました。副交感神経を優位にし、体を水平にすることで下肢からの水分を腎臓まで戻りやすい環境をつくりました。その後、少しずつ、夜間の尿量が安定し、失禁での更衣が減りました。

原因や要因は一つではなく、また解決策にも正解はないですが、生活史や病気、尊厳を常に考えながら、少しでも気持ちよく生活してもらえるよう、学び、引き出しを増やして、考えながら進みたいと思います。そして、職場内でよく話し合い、一人でも多く仲間を増やしていきたいです。現状の職場では、おむつの正しい当て方を上司と共に伝え続け、対策を行い、実施できるようになりました。

※おむつフィッター2級研修 卒業論文より一部抜粋

おわりに

排泄の困りごとについて、利用者の生活史や暮らしにかかわるいろいろな要素を確認しながら、それが起きる理由を考えることは、一見遠回りのように聞こえるかもしれません。しかし、根本的な解決の糸口を見つけるためにはとても有効であり、暮らし全体にかかわる排泄ケアを丁寧に考えることは、中長期的に考えるとケア全体を改善する近道なのだと感じました。

Iさんは、3年前に今の副施設長となる介護福祉士の方が勤務し始め、知識や経験の豊富さに感銘を受けたことが学びたいと思うきっかけになったそうです。4月からはフロアリーダーとして、利用者にとって気持ち良く過ごしていただける生活を考えたいと話してくださいました。

Iさんのお話を聞かせていただき、Iさんのように毎日懸命に介護されている方の介護のくらしにプラスになるように、幅広い視点からの情報をお届けしていきたいと強く感じました。ご協力いただき誠にありがとうございました。