私たちは血液中に溶け込んだ老廃物を尿として体外に排出しています。尿はどのようにつくられているのでしょうか?排尿のメカニズムを入口から出口まで辿って見てみましょう。
●【医師監修】排泄の基礎知識(排尿編①):数字で見る排尿の基本
●【医師監修】排泄の基礎知識(排尿編②):排尿トラブル解決のために知っておきたい「排尿のメカニズム」と「男女の違い」
●【医師監修】排泄の基礎知識(排尿編③):排尿障害のタイプと対策
●【医師監修】排泄の基礎知識(排尿編④):トラブル予防の[骨盤底筋体操と膀胱訓練]
旅の始まりは水分の摂取から
口から飲んだ水分は、食道→胃→十二指腸を通過し、小腸で吸収されます。吸収された水分は、血液にのって全身を巡ります。大腸でも水分は吸収され、一部は便とともに排出されます。
膀胱は「尿の貯蔵庫」
腎臓で作られた尿は、尿管という管を通って、膀胱に流れ込みます。膀胱は、腎臓から送られてくる尿を一時的に溜める袋状の器官です。膀胱に尿が少量しか溜まってない場合は、脳から「出すな」の指令が出ています。排尿筋は緩み、内・外尿道括約筋が締まり、排尿されません。膀胱に尿が一定量溜まると、脳から「出せ」の指令が出ます。内・外尿道括約筋が緩み、排尿筋が収縮します。これにより膀胱から押し出された尿は尿道を通って排出されます。
知っておきたい「男女の違い」
排尿のメカニズムに関連する腎臓、尿管、膀胱、尿道を「泌尿器」といいます。泌尿器には男女で違いがあります。この違いを理解しておくことが、排尿トラブルを考える上で重要になります。
「排尿トラブルは男女で違う」ということを知っておく
排尿のトラブルは、男女同じだと思っている方も多いのではないでしょうか?泌尿器のことを理解すれば、男女で排尿トラブルが違うことを構造的に理解することができます。ぜひこの機会に排尿トラブルの男女の違いを理解し、より良い介護ライフに生かしましょう。
男性のしくみについて
男性の泌尿器は、尿道が長くS字で、もともと尿が出にくい構造になっています。加齢による前立腺肥大も多く、排尿のトラブルとしては、「尿が出にくい」傾向にあります。主な特徴をピックアップしてみましょう。
①身体的な特徴
尿道が女性より長い。
尿道がS字に折れ曲がっている。
尿道は前立腺の中を通る。
②加齢によるトラブル
尿の通りが悪くなる。
排尿時間が30秒以上かかる。
残尿がある。切れが悪い。
ぽたぽた落ちる。
③前立腺肥大によるトラブル
前立腺は膀胱のすぐ下に位置する男性特有の臓器です。加齢とともに、前立腺が大きく膨らむ「前立腺肥大症」を引き起こす場合があり、50歳以上の男性の3~4人に1人は前立腺が肥大していると言われています。肥大した前立腺が尿道を圧迫して排尿障害につながるケースも多く、症状は排尿困難や残尿感、溢流性尿失禁、頻尿など、人によってさまざまです。
女性のしくみについて
女性の泌尿器は、尿道が短く、尿が出やすい構造になっています。筋力低下や女性ホルモンの影響もあり、加齢による排尿のトラブルとしては「尿がモレやすい」傾向にあります。
①身体的な特徴
尿道が約3~4㎝と男性より短い。
尿道がまっすぐ下に向かっている。
子宮・膣で膀胱が圧迫されやすい。
骨盤底筋群が緩みやすい。
②加齢によるトラブル
トイレの回数が多い。
お腹に力が入るとモレてしまう。(腹圧性尿失禁)
トイレまで我慢できずにモレてしまう。(切迫性尿失禁)
③筋力低下によるトラブル
膀胱・膣・子宮・直腸などを支えるほか、尿道や膣・肛門を締める役割を果たす筋肉「骨盤底筋」。出産や肥満、運動不足、加齢などによってこの筋力が低下すると、膀胱が下がって尿道が緩み、頻尿・失禁しやすい傾向になります。このため、成人女性の3人に1人は尿モレ経験者と言われています。
④妊娠・女性ホルモンの影響
妊娠中は子宮が膀胱を圧迫するため、頻尿や失禁の原因になります。また、月経・更年期・閉経など、女性ホルモンの変化で尿道が固くなることも、尿がモレやすい原因です。
まとめ
口から飲んだ水分が小腸で吸収され、血液にのって全身を巡ります。それらが毛細血管を経由して腎臓の中でろ過され、尿となります。腎臓で作られた尿は、尿の貯蔵庫である膀胱に溜められ、一定量貯まると脳から「出せ」の指令が出て、尿道を通って排泄されます。
また、男女の泌尿器の違いが、排尿トラブルの違いにつながります。男性は主に尿道が長く、前立腺の中を通ることもあり、「尿が出にくい」傾向にあります。それにより、「排尿時間がかかる」「残尿感がある」などのトラブルが起こりやすくなります。一方女性は、尿道が短く、子宮などで圧迫されやすいので、「尿がモレやすい」傾向にあります。排尿のメカニズムや男女の違いを理解することは、排尿トラブルを考える上でもとても大切なことなのです。