「フレイル」という言葉をご存じでしょうか。フレイルとは、心身における総合的な虚弱状態のことを指し、とくに高齢期に多く見られるため注意が必要です。「身体を動かすことが苦手」「他者と接したり会話をしたりする機会がほとんどない」など、普段からフレイルになりやすい環境にいる方は要注意です。気付かないうちに筋肉や身体機能が低下している可能性があります。将来を元気で豊かなものにするためにも、フレイル状態に陥りにくい生活習慣を普段から意識することが大切です。
フレイルの悪循環
心身の総合的な虚弱状態であるフレイルは、ある日突然起こるわけではありません。例えば、加齢によって足の筋肉量が低下し、「以前のように遠出をすると疲れる」という意識から外出が減ると、それによってそれまで何気なく行っていた日常の運動量まで減ってしまいます。
また、家に閉じこもりがちになると、他者との交流や会話の機会が減り、それによって脳の機能も低下するため、うつや認知症になるリスクも高くなります。このように、一つの機能低下が他の機能にも影響を与え、悪循環のように総合的な機能低下状態を作り出すのがフレイルです。
こうしたフレイル状態は、進行して一度要介護状態になると、そこから回復することが難しくなります。一方、フレイルやプレ・フレイル(フレイルに移行する前段階の衰え状態)の段階であれば、健常に戻る可能性が高いという特徴があります。「まだ大丈夫」と楽観視するのではなく、初期段階から予防を意識して生活を見直すことが大切です。

あなたは大丈夫?フレイルチェック
フレイル状態に陥らないためには、何よりも心身の変化に気付くことが大切です。
まずは現在のフレイル度をセルフチェックしてみましょう。
指輪っかテスト
ふくらはぎの筋肉は心臓から遠い位置にあり、ポンプのように体中に血液を送る役割をしていることから「第二の心臓」とも呼ばれます。ふくらはぎの筋肉量が低下すると、歩行能力が落ちるだけでなく、脳や体全体への血液量も減ってしまいます。ふくらはぎの筋肉量が十分かどうか、指輪っかテストでチェックしてみましょう。
1)リラックスした状態で椅子に座り、両足を床につけます。
2)利き足ではない(普段あまり使わない)方のふくらはぎの一番太い部分を、両手の親指と人差し指で輪をつくり、囲むように掴みます。
3)どの程度掴めたかで、筋肉量の低下状態(サルコペニア度)を測ります。
*サルコペニア…加齢や運動不足により筋肉量や筋力が急激に減少する状態。フレイルを進行させる要因になります。

★指が届かず囲めない場合は、ふくらはぎに十分な筋肉があるということで、サルコペニアの可能性は低いでしょう。
アイフレイルチェック
フレイルの中でも、とくに目(視力)に関する衰えは「アイフレイル」と呼ばれます。目は周囲の情報を視覚として得るための重要な器官であり、加齢とともに衰えることで、生活の中で不便を感じたり、転倒などのケガにつながったりすることも多くなります。
身体の不調と同様に、視力の低下に対しても眼鏡やコンタクトレンズを活用するなど、早めの対応が大切です。あなたのアイフレイル状態をチェックしてみましょう。

〈出典〉日本眼科啓発会議/アイフレイル啓発公式サイト
1)目が疲れやすくなった
2)夕方になると見えにくくなることが増えた
3)新聞や本を長時間見ることが少なくなった
4)食事の時にテーブルを汚すことがたまにある
5)眼鏡をかけても「よく見えない」と感じることが多くなった
6)まぶしく感じやすくなった
7)はっきり見えない時に、まばたきをすることが増えた
8)まっすぐの線が波打って見えることがある
9)段差や階段で「危ない」と感じたことがある
10)信号や道路標識を見落としそうになったことがある
★2つ以上当てはまった場合、アイフレイルである可能性が高いです。最寄りの眼科医にご相談ください。
イレブン・チェック
日々の生活に関する11項目の問診で、栄養・口腔・身体活動・社会参加に関するフレイル度をチェックできます。セルフチェックしてみましょう。
| 栄養 | 1)ほぼ同じ年齢の同性と比較して、健康に気を付けた食事を心がけていますか | はい | いいえ |
| 2)野菜料理と主菜(肉か魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか | はい | いいえ | |
| 口腔 | 3)さきいかや、たくあん程度の固さの食品を、普通に噛み切れますか | はい | いいえ |
| 4)お茶や汁物でむせることがありますか | はい | いいえ | |
| 身体活動 | 5)1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか | はい | いいえ |
| 6)日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか | はい | いいえ | |
| 7)ほぼ同じ年齢の同性と比較して、歩く速度が速いと思いますか | はい | いいえ | |
| 社会参加 | 8)昨年と比べて外出の回数が減っていますか | はい | いいえ |
| 9)1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしていますか | はい | いいえ | |
| 10)自分が活気にあふれていると思いますか | はい | いいえ | |
| 11)何よりもまず、もの忘れが気になりますか | はい | いいえ |
【チェック結果】各解答で赤色の枠に該当した場合、注意が必要です。
●1・2で「いいえ」の方 …食生活を見直し、栄養不足や偏りに注意しましょう。
●3が「いいえ」、4が「はい」の方 …歯磨きや水分補給など、口腔ケアを意識しましょう。
●5・6・7が「いいえ」の方 …適度な運動で身体活動を増やしましょう。
●8・11が「はい」、9・10が「いいえ」の方 …地域のイベントやボランティア活動など、社会参加を積極的に行いましょう。
6つのポイントでフレイル予防
身体機能の変化に気付いた時は、さらなる機能低下を防ぐため、早めの予防が重要です。フレイル予防には、次の6つのポイントが大切です。
1)運動器の改善

高齢者が要介護となる原因の約20%が関節疾患や転倒・骨折です。日頃からウォーキングなど筋肉を使う運動を行い、筋力の維持・向上や心肺機能の向上に努めることが重要です。買い物のついでにウォーキングを意識するなど、日頃から適度な運動で筋力をつけるようにしましょう。
2)食生活を見直す

老化を防ぎ、活力ある生活を送るためには、食事がとても重要。特に体をつくる成分であるタンパク質と、体を動かすために必要なエネルギー(炭水化物)を充分に摂る必要があります。近年は「肥満にならないように」と意識することが多いですが、過剰なダイエットは健康にとって逆効果です。「食べ過ぎ」だけでなく「食べなさすぎ」にもならないよう、バランスの良い食事を心がけましょう。
熱中症・脱水症状に注意

高齢者は温度に対する感覚機能や、暑さに対する身体の調節機能が低下していることから、熱中症にかかりやすいとされています。また若年者より体内の水分量が少なく、老廃物を排出する際にたくさんの尿を必要とすることから、脱水症状を起こしやすい傾向があるため注意が必要です。
熱中症にかからないための一日の水分摂取量は約2リットルが目安。飲み物としてだけでなく、食事に含まれる水分からも摂取できるので、食事(1リットル)+飲料(1リットル)を意識して摂るようにすると良いでしょう。
3)口腔機能を改善する

食べる、話す、表情を豊かにするなど、活き活きとした生活を送るために大切な機能を持つのが口です。また噛む力や飲み込む力の低下は、低栄養や肺炎などを招く要因にもなりますので、口内を清潔に保ち、噛む力を維持することがフレイル予防につながります。口腔ケアを毎日の習慣の1つとして意識するようにしましょう。
4)認知症の予防

近年、認知症は「誰もがかかる可能性のある脳の病気」として、日頃からの予防がとても重要だと言われています。とくに認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の状態は、発症を遅らせるだけでなく、機能回復の可能性もある大切な期間であることが明らかになってきました。パズルやクロスワードなど、予防につながる「あたまの体操」はさまざまあります。楽しみながらチャレンジしてみましょう。
5)閉じこもりの予防

寝たきりなどで外出できない状態ではないにも関わらず、自宅からほとんど出ずに過ごす状態を「閉じこもり」と言います。このような生活が続くことで、心身機能の低下や認知症などを招き、やがて要介護に移行するケースも少なくありません。予防には、散歩や買い物など毎日の外出、趣味や関心事を持ったり、ボランティアに参加するなど、交流の場を広げることがおすすめです。
6)うつの予防

うつは誰にでもなる可能性のある病気です。体力の衰えやリタイアによる仕事等の役割がなくなる、親しい人の死など、その喪失感の体験からうつ状態になりやすいと言われています。
〈うつにならないためのポイント〉
●ストレスを溜めない:家族や友人など、親しい人との会話を楽しむ。適度な休養をとる。
●規則正しい生活を送る:健康的な生活リズムを実践し、良質な睡眠をとる。
●誰かに相談する:不安を一人で抱え込まず、家族や友人に気軽に相談する。
まとめ
元気で豊かに暮らすためには、健康寿命を延ばす(健康な状態をより長く維持する)ことが重要です。そのためには、介護予防やフレイル予防に取り組むとともに、外出や人との交流を積極的に行い、社会とのつながりを持ち続けることが大切です。経験を生かしながら社会における役割を担うなど、いつまでも活躍できる環境を整えることが求められています。














