「以前よりも痩せてきた」、「食事量が減ってきた」、「すぐにお腹がいっぱいになる」など高齢者の食事について、ご相談をいただくことが多々あります。楽しみであるはずの食事が精神的な負担にならないように、食事の工夫を一緒に考えてみましょう。
必要な食事量がとれない原因と対策を考えてみよう
加齢に伴って「食べたいけれど、食事時間になってもお腹がすかない」、「すぐにお腹がいっぱいになって少量ずつしか食べることができない」など、食事の摂取状況に様々な変化がみられることがあります。
全体の食事量が少なくなると、栄養を確保することが難しく、低栄養状態になることが心配されます。そのように3度の食事で必要な分量(栄養素)がうまくとれなくなってしまう様々な原因と、その対策をご紹介します。
1.活動量や運動量の低下でお腹がすかない場合
高齢者の場合、環境によってはからだを動かす機会や活動量が減ることがあります。からだを動かすと、筋肉が刺激され、エネルギーの消費が促進されますので、できるだけ積極的にからだを動かして活動量をアップし、お腹をすかせましょう。また、からだを動かすことは、腸の刺激にもなり、便秘解消などにも役立ちます。
2.すぐにお腹がいっぱいになってしまう方の場合
1食に少量しか食べられずにすぐにお腹がいっぱいになってしまうのは、胃液分泌量の減少、便秘や運動不足など様々な理由が考えられますが、対策としては、3度という食事回数にこだわらず、複数回に分けて栄養をとり入れる方法があります。
単に同じメニューを分けるのではなく、できるだけ違う食べ物で補うようにすれば、変化を楽しむことができ、食欲増進にもつながります。時には、間食にバナナや小さなおむすび、ゆで卵であってもよいのです。作る手間を最小限にできるものがおすすめです。
3.自炊するのが面倒になってしまう場合
ご自身で調理される場合は、体調にかかわらず毎回の献立を考えて作らねばなりません。そのため、買い物や調理の負担がのしかかってきます。
冷凍食品や小分けのカット野菜、少量パックの食品種類も増えていますので、ぜひ活用してみましょう。手作りと出来合いの惣菜類をうまく組み合わせることで、自炊の負担を少なくすることができます。
手軽なカロリーアップ食をとり入れよう
カサが少なく、少量で栄養価の高いものをとり入れる
ヨーグルトやチーズなどの乳製品や油揚げ、卵などのたんぱく質が多い食品のほか、高栄養のアボカドも料理に加えましょう
良質の脂肪を多く含む、青背の魚をとり入れる
白身魚はクセがなく食べやすいのですが、サバやイワシなどの青背の魚には、人の体内で作ることができない必須脂肪酸を含んでいます。白身魚と比べると同量であっても、ややカロリーアップが期待できます。
<例> 1切れ(約80g)の場合の脂肪酸
サバ:約162kcal 、イワシ(中2尾):約131kcal、鮭:約106kcal、カレイ:約76kcal、タラ:約63kcal
適量の油を料理に活用する
料理には少量の油を加えて調理をしましょう。油は、料理を香ばしくしたり、焼き目をつけることで見た目にも食欲を刺激します。
調理に使用する油は、サラダ油(キャノーラ油、ベニバナ油など)のほか、オリーブ油、ごま油、えごま油、こめ油など種類が多様化しています。ただし、少量でも高カロリーなのでとり過ぎには注意をしましょう。
まとめ
食欲や食事量が低下した高齢者は、1度にたくさん食べるよりも、「効率よく食べること」を心がけていただき、食に対する不安や負担が軽くなればと思います。不足しているからと無理に詰め込むのではなく、「食べたい」、「食べてみよう」という気持ちを大切にしましょう。
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