身近な高齢者の方から「体力が落ちた気がする」「お腹周りが痩せてズボンが合わなくなった」…といった悩みを聞くことはありませんか。大きな疾患がない場合、その変化の原因として挙げられるのは食欲低下です。深刻な「痩せ」や低栄養を防ぐために、今回は手軽にカロリーアップできる食材についてご紹介したいと思います。
年を取るとどうして食欲がなくなるの?
食欲低下の原因はいくつか考えられます。活動量の減少によって筋肉量や基礎代謝が低下している、胃液分泌量が減少して消化不良になっている、便秘のせいでお腹が張っている…など、人によって理由はさまざまです。なかには、ご自身で食事の準備をしなければならず、買い出しや調理の負担を考えると自炊をする気力が湧かない、という方も。食欲が低下すれば栄養を十分に摂ることが難しくなり、「低栄養」のリスクを高めることにもつながります。
食欲低下の原因の一例
・運動量の低下
・基礎代謝の低下
・便秘
・咀嚼力、嚥下力など「食べるチカラ」の低下
・自炊する気力が湧かない
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【栄養別】食欲低下の際におすすめの食材
食欲が低下し、口にする量が減っている…。そんなときは、手軽にカロリーアップできる食材を摂るようにしましょう。なかでも積極的に摂っていただきたいのが「たんぱく質」「脂質」「食物繊維」の3つです。
たんぱく質
筋肉や血液、ホルモンなど、からだの組織をつくるのに欠かせないたんぱく質。目標にしたい一日の摂取量の目安は50~60gです。一日3食をきちんと摂れば、十分に摂取できる量ですが、食欲低下が続く方の場合は、ヨーグルトやチーズといった気軽な食材でカバーしましょう。
【おすすめの食材】
ヨーグルト
栄養バランスがよく、整腸効果も期待できるヨーグルト。どれを選べばいいか悩んでしまうほど、各メーカーからさまざまな種類が販売されています。含まれる菌は商品によって異なり、その特長や作用も多種多様。あえて一つと決めず、いろいろなものを摂り入れてみましょう。
チーズ
チーズもたんぱく質をたくさん含む食材のひとつ。個包装のものなど、気軽に食べられるサイズがおすすめです。細かく刻まれたピザ用の「シュレッドタイプ」は、温かいスープに入れて余熱で溶かすなどして使えます。クリームチーズは高齢者の方も食べやすいですが、脂肪分が多いため摂りすぎには注意です。
卵
高たんぱく食品である卵。ゆで卵などのシンプルな料理でも80キロカロリーを摂取できます。さらにカロリーアップさせたい場合は、ほぐした鮭や牛乳を出し巻き卵や炒り卵、オムレツに混ぜて作るのがおすすめです。
脂質
乳製品や油などに含まれる脂肪。摂りすぎには注意しなければならないものの、エネルギーの確保には欠かせない存在です。
【おすすめの食材】
油
細胞膜やホルモンなど作るはたらきを持っている油。オリーブ油やごま油、えごま油にこめ油など種類もさまざまです。料理を香ばしくさせる、焼き目をつけるなど、見た目から食欲を刺激する効果も。ただし、少量でも高カロリーなので、摂り過ぎには注意しましょう。
青背の魚
サバやイワシなどの青背の魚は、人の体内で作ることができない必須脂肪酸を多く含んでいます。同量の白身魚と比べてもやや脂肪が多く、よりカロリーアップが期待できます。
魚1切れ(約80g)あたりのカロリーの比較
サバ :約169kcal
イワシ(中2尾):約 125kcal
鮭 :約 99kcal
カレイ :約 71kcal
タラ :約 58kcal
参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
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アボカド
「森のバター」とも称されるほど、脂肪分を豊富に含むアボカド。必須脂肪酸であるオメガ6のほか、リノール酸やアラキノン酸なども豊富に含まれています。これらはコレステロール値を下げる効果が期待できます。
食物繊維
根菜や豆類に含まれる食物繊維。食べることが直接食欲アップにつながるわけではありませんが、便通を促すことで食欲を改善させる、いわば、“陰の立役者”のような役割を担う存在です。腸内環境を整える水溶性食物繊維、食物が水に溶けることなく水分を含むことで腸を刺激する不溶性食物繊維の大きく二つに分類されます。一日の摂取量の目安は、男性が20g、女性が17gとされています。
【おすすめの食材】
さつまいも
秋の季節、一度は食べたいさつまいも。焼き芋としてそのままいただくのはもちろん、スイーツなどの材料としても使える食材です。水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の両方を持ち、便秘改善効果が期待できます。
ナッツ
種類が豊富で、香ばしい味わいがクセになるナッツ類。不溶性食物繊維がたくさん含まれています。一粒あたりのカロリーも高いため、少量でも栄養をしっかり摂ることができます。
豆類
煮物やお赤飯など、さまざまな料理に登場する豆類。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含んでいます。特に小豆やいんげん豆には食物繊維が豊富に含まれています。
根菜類
ごぼうやにんじん、レンコンなど、秋に旬を迎える根菜にも食物繊維がたくさん含まれています。高齢者の方が食べやすいように、煮物などでお出しするのがよいでしょう。
果物の食べすぎに気を付けて!
高齢者の方にも人気の「果物」。野菜の代わりに…とたくさん摂取している方も多いのではないでしょうか。ビタミンやミネラル、食物繊維なども豊富に含まれている果物ですが、野菜と異なるのは「果糖」を多く含んでいること。過剰に摂取すると中性脂肪の増加の原因にもつながります。果適度な量で楽しみましょう。
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つくるのが大変なときは、既製品を利用して
ご自身で食事を作られる高齢者の方の場合は、手作りと出来合いの惣菜類をうまく組み合わせることで、自炊の負担を少なくすることができます。冷凍食品や小分けのカット野菜、少量パックの食品など種類も増えていますので、ぜひ活用してみましょう。
消化しやすく食べやすい、栄養補助食品のゼリータイプ
食欲が低下している際におすすめなのが、栄養補助食品です。少量でも十分な栄養をバランスよく摂ることができます。おすすめは、食べやすく消化しやすいゼリータイプ。日々の食事の“補助的”役割として、おやつ代わりに取り入れてみるとよいでしょう。
★森永乳業 エンジョイ小さなハイカロリーゼリー
https://live-plus-do-style.jp/view/item/000000000383
★森永乳業 クリニコ エンジョイMCTゼリー200 72g あずき味
https://live-plus-do-style.jp/view/item/000000000379
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食欲が低下した高齢者に対して周りの人ができること
最後に、食欲が低下してしまった高齢者との向き合い方についてお伝えしようと思います。周りにいるわたしたちは、つい健康を想うあまり「食べないとだめだよ」といった言葉をかけてしまいがちです。実際、高齢者ご本人は食べたくないから食べないわけではありません。一生懸命に食事と向き合おうとする姿勢がきっと垣間見えるはずです。そんなときは、「これ作ったから、一緒に食べない?」と声をかけ、一緒に食卓を囲みましょう。特別な扱いをするのではなく、顔を合わせながら食事を摂る。それが高齢者の方が食事を摂ることのハードルを下げる一助になるかもしれません。
おわりに
今回は、食欲が低下した高齢者の方に取り入れてほしい、3つの栄養素とおすすめ食材をご紹介しました。ご本人と相談しながら、気軽に食べられるものから試してみてくださいね。