介護予防は元気なうちに!総合事業で地域とつながろう

「総合事業」とは、高齢の方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、市区町村が中心となって地域全体で行う介護予防や生活支援などを総合して指す言葉です。要介護に該当しない要支援1・2の方、そして65歳以上のすべての高齢者が利用可能なサービスであり、高齢者の生活を地域全体で連携することで、従来の介護サービスではカバーしきれなかった部分まで広くサポートすることを目的としています。いつまでも生きがいをもって元気に生活していけるよう、上手に活用していきましょう。

総合事業とは

2015年の介護保険法改正により創設され、高齢者が要介護状態になることを防ぎ、地域で自立した生活を送れるように支援することを目的としています。総合事業には大きく分けて「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2つがあります。

1)介護予防・生活支援サービス事業[サービス・活動事業]

要支援者に自宅や施設(デイサービス)でサービスを行う事業です。訪問型サービスや通所型サービス、そのほか生活支援につながるサービスなど、さまざまなものがあります。
●訪問型サービス
●通所型サービス
●その他の生活支援サービス
(配食、見守りサービスなど)

2)一般介護予防事業

高齢者の健康づくりや暮らしの向上のための介護予防を行う事業。介護予防の普及・啓発を行う事業をはじめ、地域の介護予防を支援する事業、リハビリテーション活動を支援する事業など、さまざまなものがあります。
●介護予防普及啓発事業
●地域介護予防活動支援事業
●介護予防把握事業
●地域リハビリテーション活動支援事業
●一般介護予防評価事業

介護予防・生活支援サービス事業[サービス・活動事業]


総合事業の1つ、「介護予防・生活支援サービス事業」について詳しく見ていきましょう。こちらは要介護の手前、要支援に該当する方に向けた支援サービスです。

加齢によって日常生活に対するサポートが必要になる状況は、ある日突然起こるわけではありません。徐々に身体機能が低下していくことで、自立した生活が難しくなるのです。完全に要介護状態になってしまう前段階での予防や、不便さを感じ始めた時にそれを補う手段の一つとして、介護予防・生活支援サービスは有効です。

対象者

・要支援1・2に該当する方
・基本チェックリスト(厚生労働省が作成)で事業対象者に該当した方

サービス内容① 訪問介護事業所が行う訪問型サービス

訪問型サービスには次のようなものがあります。

▶訪問介護相当サービス
ホームヘルパーが自宅を訪問して行います。
・身体的介護サービス(食事や入浴などの介助)
・生活支援サービス(買い物、調理、洗濯、掃除など)

▶その他のサービス
ホームヘルパー、または一定の研修を修了した者が訪問し、利用者が自力では困難な生活行為の支援(買い物、調理、洗濯、掃除など)を行います。その他、食事を自宅等へ届ける配食サービスや、それに伴う安否確認などの見守りサービスが、自治体の実情に応じて行われています。

サービス内容② デイサービスセンターが行う通所型サービス

通所型サービスには次のようなものがあります。

▶通所介護相当サービス
デイサービスセンター(通所介護施設)で行う支援です。日常生活動作の訓練や、食事のサービス、入浴サービスなどがあります。

▶その他の多様なサービス
基準緩和サービスをはじめ、自治体が行う独自のサービスが受けられます。デイサービスセンターでの運動器具を用いた運動器の機能向上、脳活性化のためのレクリエーション、口腔機能向上のための訓練などがあります。また介護予防マネジメントとして、地域包括支援センターやケアマネジャーが利用者と一緒にケアプラン(介護サービス利用にあたっての計画書)を作成します。自己負担はありません。

要支援1・2に該当する方の場合、これらのサービスに加えて「介護予防サービス」を受けることもできます。

〈主な介護予防サービス〉
介護予防訪問看護 / 介護予防訪問入浴 / 介護予防訪問リハビリテーション / 介護予防居宅療養管理指導 / 介護予防通所リハビリテーション など

一般介護予防事業


総合事業の1つ、「一般介護予防事業」について詳しく見ていきましょう。こちらは高齢者の健康と自立生活を支援する事業です。介護予防体操や脳機能の向上に取り組む場づくりを進めるなど、地域住民が主体となって行えるような環境づくりや介護予防、フレイル*予防のためのサポートを行います。地域によってさまざまな活動内容があります。
*フレイル:高齢期に見られる心身の虚弱状態

対象者

・65歳以上の方

サービス内容

▶介護予防普及啓発事業
介護予防に対する気付きや理解を深める啓発活動や、普及を目的とする事業です。パンフレット等を作成して配布したり、学びにつながる講座などを開催しています。
・運動機能向上教室
・認知症予防講座
・フレイル予防教室
・シニアヨガ
・転倒予防教室
・口腔機能向上教室
・認知症カフェ
・カラオケ教室 など

▶地域介護予防活動支援事業
住民主体で行う介護予防活動に対するサポートです。住民ボランティアの育成や活動支援などを広く行います。

▶介護予防把握事業
地域の実情に応じて収集した情報等を活用して、介護予防活動につなげます。厚生労働省が作成する基本チェックリストを用いたチェックなどを行います。

▶地域リハビリテーション活動支援事業
住民運営の通いの場などにリハビリテーションに関する専門職のサポートを増やすことで、地域における介護予防の取り組みを強化します。

▶一般介護予防評価事業
それぞれの事業が適切に行われているかを把握し、事業全体の改善を図ります。

総合事業利用のポイント


総合事業に該当するサービスを利用する際は、大きく次のようなポイントを確認しましょう。

ポイント① 利用できる条件

要介護認定で要支援に該当する、もしくは65歳以上である場合、利用可能です。
その他、40歳以上~65歳未満で医療保険に加入している方のうち、特定疾病が原因で介護や支援が必要な方も対象となります。

ポイント② 申請する窓口

各市区町村に設置された地域包括支援センター(介護・医療・保健・福祉など高齢者のためのサポートを受ける際の総合相談窓口)に相談しましょう。

ポイント③ 基本チェックリストの実施

厚生労働省が作成した基本チェックリストで、現在の生活状況について25項目のチェックを行います。事業対象者の基準に該当した場合は「介護予防・生活支援サービス」が利用でき、非該当の場合は「一般介護予防事業」の対象になります。

総合事業のメリット

こうした総合事業を行うことで得られるメリットはいくつかあります。まず挙げられるのは、従来の介護事業所に加えてNPO、民間企業、ボランティアなど、多様な提供元からの幅広いサービスを利用できるという点です。

また、そうしたサービスを利用する窓口が身近にあり、利用者が利用しやすいという点もメリットの1つでしょう。サービス利用へのハードルが下がり、これまで介護サービスに繋がりにくかった方もスムーズにサービスを利用できる仕組みになっています。

その他にも、住民主体で行う介護予防活動の場合、高齢者自身がサービス提供者となることで日々の生活意欲や健康維持に繋がったり、ボランティアサービスが広がることで地域における助け合いや住民同士の繋がりが生まれやすくなったりするなどのメリットもあります。一方的なサービスの提供だけでなく、それによって生まれる個人や地域の活性化など、広い好影響が期待できるのです。


〈メリット〉
●多様な提供元からの幅広いサービスが受けられる
●誰でもサービスが利用しやすい
●住民がサービス提供者になることで、生活意欲や健康維持につながる
●住民同士の助け合いや繋がりを促進する

普及率の低さと課題

このようにきちんと活用されれば便利な総合事業ですが、まだまだ全面的な普及には至らず、課題も多いという側面もあります。中でも大きく問題視されているのが「介護人材の不足」についてです。近年、社会全体の高齢者人口が増えるにつれて介護人材の必要性も高まっていますが、長期に渡る少子化によって介護を担う若い世代の数は追いついていません。

また、介護職は身体的・精神的な負担が大きいにもかかわらず、給与水準が比較的低い傾向にあること、人手不足という状況の常態化によって、職員一人当たりの業務量が増えていることなどが要因となり、有能な人材が介護業界に定着しにくい傾向があります。まずはこうした課題をクリアし、介護職員の処遇を改善していく必要があると言えるでしょう。

加えて、コロナ禍以降さらに高齢者の孤立が進み、地域協力が難しくなっていることなど、さまざまな課題があります。総合事業を行う自治体と住民、そして国が一体となってこうした課題に取り組んでいくことが、今後の普及率を左右する鍵となります。

〈課題〉
●少子高齢化による介護人材の不足
●介護職員が定着しにくい職場環境の改善
●地域協力の強化

まとめ

超高齢社会となりつつある近年において、介護は誰にとっても身近なものとなっています。総合事業はそうした状況において、広く利用者をサポートするためにつくられた仕組みであり、問題点の解決を含めて今後さらに有効活用していくべきものだと言えるでしょう。いざという時にも焦らないよう、利用する側もきちんと知識を持ってこのようなサービスを活用していきましょう。