お年寄りが安心して暮らせる、地域の困りごと解決

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年。医療や介護のニーズが急速に高まると同時に、少子化によって介護サービスの担い手が不足するといわれています。地域の活動を応援する介護保険の新しい制度を活用することで、住民や地域の主体的な動きを積極的に後押しする自治体も見られるようになりました。

今回は大阪市淀川区で、地域のお年寄り暮らしを支える地域団体、NPO社会福祉センターまごころについてご紹介します。

新聞販売運営で培った地域との信頼関係を活かした活動

『NPO社会福祉センターまごころ』の横山和徳さんは、淀川区で新聞販売会社を経営してきました。「新聞販売を通じて淀川区に暮らす人々や事業者のことをよく理解しているので、私のところに自然と集約された情報を地域のために活用したいと思ったのが始まりです」と、地域の困り事を解決する事業を始めたきっかけを話してくれました。

いざ始めてみると困り事は多岐に渡り、生前整理や遺品整理のほか、電球交換や水道のトラブル、網戸の張り替えなど、暮らしに関わるあらゆることについて相談があるそうです。「網戸の張り替えだって若い人にとっては、ほんの些細な事だと思います。

でも、お年寄りにとっては大きな悩みなんです。不便さを我慢して暮らすしかない。そんな現実をたくさん目の当たりにしてきました。こんな時代だから、網戸の張り替えだって悪質な業者に頼んでしまい、高額な金銭を要求されるリスクがあるんですね。

そんなとき私なら、地域で腕の良い安心して任せられる業者を紹介することができます」と、“地域で暮らす人”と“地域の信頼をもとに仕事をしている会社”をマッチングすることで、お年寄りが安心して生活できるようにコーディネート。

地域密着ならではの“目利き力”を持つ横山さんのような存在があれば、認知症や介護を必要とする時がきても、住み慣れた町に暮らし続けることができるのではないでしょうか。

行政や介護事業ではできない、小さな困り事も解決

さまざまな地域のお年寄りの困り事に「まずは気軽に相談してほしい」という横山さん。あるお年寄りの家庭では「認知症の方がトイレにオムツを流してしまって、詰めてしまったという案件がありました。トイレでオムツを詰めると大変なんです。手を突っ込んで生地を引っぱり出すしかないんです。このようなことを介護で大変な人にさせたくないですよね。

きっと心身ともに疲れ切ってしまうと思います。ですから、そんな煩わしい事を少しでも手伝ってあげたいです。きっと昔は近所同士の助け合いで解決できていたことも、今は私のような存在が地域に必要だと思います」と地域やご近所付き合いの機能を補完する人の大切さを訴えます。

昨年春から始まった総合事業により、ある自治体では自治会単位でお茶会や介護予防体操するなど、さまざまな施策を独自に始める動きを見せていますが、お年寄り世代でのコミュニティづくりに留まらず、横山さんのような世代を超えた地域やご近所付き合いが望まれます。

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地域の社会資源のコーディネーターとして役割を果たしたい

「長年に渡ってボランティアで地域活動など、町の人たちのために尽くしてきた方々がいて、その人たちも高齢化してきた。その方々の持っているネットワークや知見を自分が引き継いで、有償ボランティアとして活動を始めました。

今後は、終活や生前整理、遺品整理などの相談も受け、区内で活躍する弁護士、司法書士や行政書士と協力し、身元保証や成年後見のサポート、財産整理や相続問題も解決していきたいと考えています。さらに集いの場としてデイサービスで交流カフェを週1回開くほか、将来的には専従の社会福祉士を配置し、区内の社会資源のコーディネーターとしての役割を確立したい」と横山さん。

行政や介護事業の間で抜け落ちる部分を、有償ボランティアという存在が担ってくれるのかもしれません。横山さんの団体のように適正な価格で対応してくれる有償ボランティアの存在を知るためにも、集い場の利用や社会福祉協議会などに自ら足を運んで情報を知ることが私たち市民にも必要です。今後は民間主導の地域団体によるサポートを利用して、介護の悩みを解決していく考え方にも注目が集まります。

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【プロフィール】
NPO社会福祉センターまごころ代表。
2016年11月末に家業の新聞販売経営から撤退し、高齢者を中心とした困り事解決相談窓口を開設。地域に眠る社会資源の発掘とサポートネットワークの構築で、コミュニティビジネス化を目指している。
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