「食事は目で食べ、口で食べ、喉で食べる」という言葉を聞いたことがあります。食事の際、第一印象の“見た目”によって「きれい」や「おいしそう」など視覚での食事判断が始まります。見た目とは、盛り付け、彩り、食器、料理の演出などがあります。
高価な食材ではなくても、それぞれの料理、あるいは全体のバランスが食欲を刺激し「食べてみたい」「食べてみよう」という気持ちへと変化します。今回は、見た目の工夫によって食べるチカラにつなげる方法をご紹介します。
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視覚で感じるおいしさの役割
私たちは日々の生活の中で、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚(食感)などの感覚を使い、自然と物事に価値を見出しているように思います。日常生活では意識をせず、気にも留めなければ、何気なく見過ごしてしまうことも多いと思います。
特に視覚は常に働いて、料理はもちろん、テーブルクロスやお皿といった情報から、脳(視覚)が「おいしいさ」を感じているのです。「食事をする際、盛り付けなど気にかけなくても、おいしいものはおいしいと感じるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、食べやすく工夫をしたり、彩りに赤や黄、緑色の食材を使って盛り付けてみれば、見た目でも食欲を刺激することに気づくでしょう。
食欲を刺激する3つの工夫
「食材の色」を工夫する
見た目のなかで大きな役割を果たす要素の一つとして「色」があります。赤や橙など、温かみを感じる「暖色系」の食材は、食欲を増進させる効果が期待されています。一方で、緑や黄緑などの「寒色系」に分類される食材には、ストレスを和らげて食欲を落ち着かせる効果が期待されます。
見え方や効果がそれぞれ異なる暖色系と寒色系の食材は、組み合わせることで互いを引き立て合う「補色」の関係性を生み出します。「緑と赤」を一緒に使うことにより、さらに食事をおいしく見せることができます。
〇食欲を増進させる「暖色系」
赤 :トマト、パプリカ(赤色)、イチゴ、すいか など
橙(オレンジ):パプリカ(橙)、オレンジ、柿 など
黄 :とうもろこし、レモン、卵(卵黄) など
〇ストレスを和らげる「寒色系」
緑 :ブロッコリー、ピーマン、青じそ など
黄緑:キャベツ、きゅうり、ズッキーニ など
〇より料理を美味しく見せる「緑と赤」=「補色」
組み合わせることで互いを引き立て合う作用に変化する関係。
「緑と赤」を一緒に使うことで、さらに料理を美味しくみせることができる。
「お皿」を工夫する
通常ならば1人前の食事量をひと皿に盛り付けますが、高齢者の食が細くなり、十分な栄養補給もできないとき、目に映る「ひと皿」に圧迫感を感じるそうです。
少し手間はかかりますが、小皿に差し替えて盛り付けると、喜ばれることがあります。ご本人のお気に入りの小皿をいくつかお盆の上にのせてみてはいかがでしょうか。ひと皿ずつを完食することで食べる自信につながります。
「盛り付け」を工夫する
高齢者は、出てきた食事の盛り付けに対して、「自分の手で口元まで運ぶのが大変そうだ」と感じているかもしれません。そんなときには、高齢者が自分の力でさっと持ち上げられる量の盛り付けをしてみましょう。
たとえば、そうめんなどの盛り付け方。暑さのためか、食が進まないときはのど越しのよいそうめんが好まれます。そうめん以外のおかず(副菜)も一緒に食べてもらえるように、様々な工夫をしています。
*時間が経つと麺同士がくっついて取り分けにくくなるので、一口で食べやすい量に調節し、お箸でくるくると巻く
*そのまま食べられるように、麺に味付けしておく
*束ごとに少量の具をのせれば、見た目も楽しいアクセントに
料理の盛り付けは、決してプロの料理人のように、うまく仕上げる必要はありません。個人の好みや食べやすさを考えて、提供する食事に活かしてみることをおすすめします。見た目のおいしさは、美しさだけではありません。真心を感じ取れたら「食べるチカラ」につながるものと考えます。
さいごに
今回は、視覚を刺激する見た目の工夫により、高齢者の食べるチカラにつなげる方法をご紹介しました。食欲がより落ち込みやすいこれからの暑い時期、ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか。
■この記事に関するおすすめレシピ
焼きナスのジュレかけ
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