介護保険とは、介護に関するサービスを利用者が安心して受けられるよう社会全体で支えるための制度です。介護保険を利用して利用できる介護サービスにはさまざまなものがありますが、今日はその1つである在宅サービスについて学んでみましょう。どのようなサービスがあるのか、またどのような特徴があるのかについて詳しく知ることで、必要なサービスを適切に活用することができるようになります。
在宅サービスとは

在宅サービスとは、介護サービスを提供する側が訪問し、要介護者が自宅で受けられる介護サービスのことで、要介護1~5の認定を受けた方*が利用することができます。自宅での介護において本人には難しいこと、あるいはご家族では困難な部分を支援するサービスです。
在宅サービスの中には訪問サービス、通所サービスをはじめ、さまざまな種類があります。それぞれどのようなサービスが受けられるのか、詳しく見ていきましょう。
*市町村が行っている介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)内にも訪問型のサービスがあり、要介護以外の方(要支援1・2)はそちらを利用することができます。希望する場合は、お住いの地域の地域包括支援センター(高齢者福祉・介護に関する総合相談窓口)へ相談してみましょう。
在宅サービスの種類(1)訪問サービス

訪問サービスとは、介護サービスを提供する側が訪問し、要介護者が自宅で受けられる介護サービスのことです。自宅での介護において本人には難しいこと、あるいはご家族では困難な部分をサポートしてくれる便利なサービスです。訪問サービスに分類されるサポート内容には次のようなものがあります。
●訪問介護
ホームヘルパーが要介護者の自宅を訪問して提供するサービスです。生活の様々な場面における身体介護や生活援助を行います。
〈身体介護サービス〉
食事、入浴、排泄、移動、移乗、衣服の着脱、清拭などの介助
〈生活支援サービス〉※本人や家族が行うことが困難な場合
住居の清掃、洗濯、買い物、食事の準備、調理などの援助
●訪問看護
看護師が訪問して提供するサービスです。訪問介護ステーションから看護師などが要介護者の自宅を訪問し、看護ケアの提供、自立への援助の促進による療養生活の支援などを行います。
〈主なサービス内容〉
病状等観察、療養指導、食事援助、排泄援助、更衣、移動・移乗の介助、入浴介助、
その他 緊急対応など療養の世話や診療の補助 など
●訪問入浴
看護師や介護職員が訪問して提供するサービスです。訪問入浴車(専用の浴槽を積んだ車)で要介護者の自宅を訪問し、入浴をサポートします。加えて、同行した看護師が入浴前後に血圧や体調などの総合的なチェックを行うので、定期的な身体状況の把握にも役立つサービスです。
●訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士が訪問して提供するサービスです。一人で通院することが困難な方や、寝たきりなどで日常生活に必要な動作(起き上がり、立ち上がり、歩行、食事、着替え、排泄など)ができない要介護者が、1対1でのリハビリテーションを受けることができます。
PT(Physical Therapistの略)とも呼ばれます。身体に障害のある人や、または障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力の回復や維持、また障害が悪化しないように予防するなど、身体の機能回復に重点を置いた医学的リハビリテーションを行う専門職です。
OT(Occupational Therapistの略)とも呼ばれます。理学療法士と同じくリハビリテーションの専門職ですが、障害による運動機能の回復に加えて、精神機能の回復や、社会参加へのサポートなど、自立した日常生活が送れるようになるために必要な総合的リハビリテーションを目的としています。
●居宅療養管理指導
病院、診療所、薬局または指定訪問看護ステーションの医師、歯科医師、薬剤師、看護職員などが要介護者の自宅を訪問して、療養上の管理や指導を行うサービスです。
〈主なサービス〉
・介護方法などの指導や助言
・薬の服用に関する指導やチェック
・副作用の相談
・栄養指導や助言
・口腔内の清掃・入れ歯の手入れ など
在宅サービスの種類(2)通所サービス

要介護者が施設などに通って受けるサービスは、通所サービスと呼ばれます。通所サービスには「通所介護」と「通所リハビリテーション」の2つがあり、どちらも車での送迎によって施設などに赴き、食事や入浴、機能訓練などを受けることができます。
●通所介護(デイサービス)
施設に入所せず昼間に日帰りで利用することから、一般的に「デイサービス」と呼ばれることが多いです。デイサービスセンターなどにおいて、健康チェックや日常生活動作の訓練、食事や入浴などが行えます。希望によって口腔機能向上や栄養改善などのサポートを受けることも可能です。
●通所リハビリテーション(デイケア)
日帰りで行う療養であることから「デイケア」と呼ばれることが多いです。老人保健施設などにおいて入浴や食事、機能訓練などを行うサービスで、デイサービスに比べて、より機能訓練に重点を置いたものとなっています。医師の指示のもと、理学療法士によるリハビリを受けることができます。
在宅サービスの種類(3)短期入所サービス

在宅サービスの中には、施設に宿泊して受けられるサービス(ショートステイとも呼ばれます)もあります。在宅介護を支援するサービスとして扱われるため、在宅サービスの1つに分類されています。介護者の心身機能の維持や塞ぎがちになる精神ストレスの解消、ご家族の介護負担の軽減などを目的にしたサービスです。
●短期入所生活介護
日常生活の世話やレクリエーション、リハビリなどが受けられます。在宅介護中の介護者の冠婚葬祭や旅行時、また介護者の介護疲れを防ぐために利用することができます。連続としての利用は30日までです。
●短期入所療養介護
短期入所生活介護と比べて、より医療的なケアのもとリハビリを重点に行うサービスです。病状が安定期にある在宅の要介護者が、看護や医学的管理下に置ける介護、機能訓練、その他必要な医療、日常生活上の世話を受けることができます。
短期入所(ショートステイ)は、介護認定の有効期間の半数を超えて利用することはでませんので注意しましょう。原則的に介護認定期間は、認定の申請日から新規の場合は6か月、更新の場合は12か月(ご本人の状態から有効期間が3か月~48か月の間で変更されることもあります)となっています。
例えば、6か月の認定を受けた方の場合、利用可能な日数は91日、12か月の場合は183日がおおむねの上限となります。
在宅サービスの種類(4)住環境の改善

要介護者が自立した生活を送るために必要な福祉用具、または住宅の改善が必要なケースもあります。そんな時に必要な用具や費用をサポートするサービスです。
●福祉用具の貸与・特定福祉用具の販売
日常生活の自立援助や機能訓練に使用するための福祉用具の貸与(レンタル)、または入浴や排せつなどの際に使用する福祉用具を販売するサービスです。
●住宅改修費の支給
家庭内で要介護者の安全を確保するために住宅改修が必要である場合、改修のための費用を支給するサービスです。一人につき20万円まで支給可能です。
在宅サービスの種類(5)地域密着型サービス

介護が必要になったとしても、住み慣れた地域で変わらず暮らしていきたいと望む方は多いでしょう。そんな方々が安心して生活し続けるために便利な介護サービスもあります。
●夜間対応型訪問介護
夜間の定期的な訪問や緊急時の随時訪問による介護を行うサービスです。定期巡回と臨時対応の2種類があります。
●認知症対応型通所介護
施設に来られた認知症の方に、食事や排せつの介助、リハビリ、レクリエーションなどを提供します。利用者の定員は12名以下であること、認知症に関する知識を持った職員が対応するなどの特徴があります。
●小規模多機能型居宅介護
1つの拠点で、訪問・通所・短期入所の全サービスを提供します。月額定額の中で状況に応じたサービスを柔軟に組み合わせることができたり、区分支給限度基準額(要介護度別に定められた介護保険サービスが利用できる上限額)を気にすることなく自由にサービスが利用できたりするメリットがあります。
●認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
認知症の方を対象にしたケア付き住宅です。少人数(5~9人)で共同生活を行いながら、介護スタッフが見守りや生活援助、リハビリやレクリエーションを提供します。
●地域密着型特定施設入居者生活介護
利用人数29人以下の有料老人ホーム(民間企業や社会福祉法人などが運営する、高齢者が安心して生活できる場を提供する施設)などにおいて、食事や排せつの介助、リハビリ、レクリエーションなどを提供します。
●地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
利用人数29人以下の特別養護老人ホーム(介護を必要とする高齢者に対して、安心して生活できる場を提供する公的な介護施設)において、食事や排せつの介助、リハビリ、レクリエーションなどを提供します。
まとめ
今回は要介護者向けサービスの内、在宅サービスに関するものをご紹介しました。在宅サービスに分類されるものには、「実際に在宅で受けられるサービス」というだけでなく「在宅介護の負担を軽くするためのサービス」など、さまざまなものがあるということがお分かりいただけたでしょうか。要介護状態となっても、可能な限りは自宅で生活したいと望まれる方は少なくありません。ご自身やご家族がそうした状況になった時でも、できるだけ負担を軽くして望みを尊重できるよう、こうしたサービスを上手に活用するようにしましょう。














