介護保険って何?40代から知っておきたい基本と仕組み

介護保険とは、介護に関するサービスを利用者が安心して受けられるよう、社会全体で支えるための制度です。超高齢社会となり、誰しもが介護に関わることになる可能性がある現代、必要な時にあなたは介護保険を上手に利用できますか?介護に関する基礎知識から福祉用具まで、広く学んでみましょう。

介護保険のしくみ

介護保険は40歳以上の方に対して加入が義務付けられており、利用できるのは65歳以上で要支援または要介護状態の方が対象です。また第二号被保険者(40~64歳の方)で特定の疾病(16種類)に該当する場合は、40歳からでも介護保険の利用が可能となっています。

〈要介護度の区分〉

要介護度 身体の状態
要支援1 基本的な日常生活はほぼ自分で行うことができるが、身の回りの世話の一部に介助が必要な状態。状態の維持・改善できる可能性が高く、要介護状態にならないための支援が必要。
要支援2 要支援1よりも基本的な日常生活を行う能力が低下している状態。日常生活において一部介助が必要だが、介護には至らない。状態の維持・改善できる可能性が高く、要介護状態にならないための支援が必要。
要介護1 基本的な日常生活や身の回りの世話、排泄、入浴、衣服の着脱などに対して、一部介助が必要な状態。
要介護2 基本的な日常生活や身の回りの世話、排泄、入浴、衣服の着脱に対して一部介助が必要。加えて、立ち上がりや歩行などの基本動作についても部分的な介護が必要な状態。
要介護3 要介護2よりも、日常生活を送るために基本的な動作や活動するための能力が著しく低下し、ほぼ全面的に介護が必要な状態。
要介護4 要介護3よりもさらに動作/能力が低下し、介護なしでは日常生活を送ることが難しい状態。意思疎通が困難な場合もある状態など。
要介護5 要介護4よりもさらに動作/能力が低下し、介護なしでは日常生活を送ることがほぼ不可能な状態。意思疎通が困難な寝たきり状態など。

 

〈介護保険特定疾病・16種類〉

●がん末期

●関節リウマチ

●早老症(そうろうしょう)

●筋萎縮性側索硬化(きんいしゅくせいそくさくこうか)症

●後縦靭帯骨化(こうじゅうじんたいこっか)症

●骨折を伴う骨粗鬆症

●初老期における認知症

●パーキンソン病関連疾患

●脊髄小脳変性症

●脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症

●多系統萎縮症

●糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症

●脳血管疾患

●閉塞性動脈硬化症

●慢性閉塞性肺疾患

●両側の膝関節または股関節に著しい変化を伴う変形性関節症

 

特定疾病の定義

特定疾病について厚生労働省は「加齢に伴って生じる心身の変化が、要介護状態の原因である障害を生じさせていると認められる疾病」のうち、次の要件を満たすものを指すと定義しています。

1)65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。

2)3~6ヶ月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病。

 

介護保険を利用するためには?

介護保険は右図のように、サービスを希望する利用者と、要介護認定を行い介護保険制度を運営する自治体(市区町村)、そして実際にサービスを提供する提供事業者の三者間で行われます。実際に「介護サービスを受けたい」と思った時、まずは何から行えばいいのか。知っておくことでいざという時にも安心につながります。介護保険を利用するための8つの流れについて学んでみましょう。

 

 

●STEP.1 介護認定の申請

介護保険を利用するには、まずは介護認定を受けることが必要です。お住いの市区町村の介護保険窓口、または地域包括支援センター*などで申請を行いましょう。申請はご本人が行うか、もしくはご家族が代理で行うこともできます。

※市町村が設置主体となり、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことで、保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置されている。

●STEP.2 認定調査の実施

申請を受け、後日調査員による認定調査が行われます。(調査日程の目安は約2週間後です)認定調査はご本人やご家族の立ち合いの下、聞き取り調査という形で行われます。基本調査項目(身体機能、起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5項目)および特記事項(具体的な介護の手間とその頻度などの詳細)についてのチェックがあり、コンピュータによる一次判定、介護認定審査会による二次判定が行われます。

●STEP.3 主治医が意見書を作成する

各市町村から主治医に対して意見書の作成依頼が送付され(主治医がいない場合は最近かかった医療機関名、診療科目、医師名などを介護保険の窓口に伝えておきましょう)、申請者の心身の状況についての意見を求めます。

●STEP.4 介護の必要度を判定する

介護認定調査の面談結果、主治医の意見書をもとに専門家が検討し、介護の必要度が判定されます。介護認定の申請から結果通知までは30日程度、主治医の意見書や認定調査の日程が遅れた場合2か月程度かかることもあります。

●STEP.5 要介護・要支援の認定

要支援・要介護認定は自動更新ではないため、継続して介護サービスを利用したい場合には更新手続きが必要です。認定期間は原則として初回が6か月、更新は12か月毎となっており、介護の必要度に応じて決められます。要介護認定の有効期限満了1~2か月前に更新手続きの案内が通知されるので、要介護認定更新申請書に介護保険被保険者証を添えて市役所の介護保険課窓口に提出しましょう。また以前より身体機能が不自由になった、さらにサポートが必要になったなど、利用者の活動状況が変わった場合にも変更申請が可能です。

●STEP.6 ケアプランの作成

ケアプランとは、利用者の介護状態の悪化を防止したり自立を促進したりするために必要な介護サービスを組み合わせた計画書のことを指します。要支援の認定を受けた方は地域包括支援センターか居宅介護支援事業所に、要介護の認定を受けた方は居宅介護支援事業所に、ケアプランの作成を依頼しましょう。(要支援者の場合は「介護予防ケアプラン」と呼ばれます)

●STEP.7 介護サービスの利用開始

作成したケアプランに基づいて、介護サービスがスタートします。介護サービスには在宅サービス(訪問介護、デイサービス、ショートステイなど)と施設型サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院など)があります。利用者の介護状況に応じて適切なサービスを活用しましょう。

●STEP.8 利用料の支払い

利用したサービスの代金を支払います。利用料は使用金額に対して原則1割、一定以上の所得がある場合は2割または3割負担となります。(要支援・要介護度によって支給限度額が決まっています)その他、食費や居住費(滞在費)などの実費が別途必要な場合もあります。

年収と利用者負担の関係

介護保険の利用料は利用者の合計所得金額*によって負担割合が変わり、年金収入などの総額が280万円未満の場合は1割負担、280万円以上であれば2割負担、340万円以上であれば3割負担となっています。自身やご家族が実際に介護保険を利用する際には、収入総額を事前に確認しておくと良いでしょう。

※合計所得金額とは、前年の収入金額から必要経費などに相当する金額を控除した金額のことを指します。例えば1か所に勤務する給料生活者(サラリーマン)の場合、源泉徴収票の給与所得控除後の金額の欄を確認しましょう。詳細が不明な場合は、お住いの市区町村の介護保険窓口に問い合わせましょう。

負担割合
年金収入等 280万円 未満 1割
年金収入等 280万円 以上 2割
年金収入等 340万円 以上 3割

 

〈負担割合の判定方法〉

要介護度と1か月の介護保険支給限度額

実際に要介護認定後にサービスを受けた場合、各要介護度に応じてどのくらいの支給限度額が定められているのか、そして自己負担額はいくらになるのか。事例をもとに見てみましょう。(支給限度額は地域によって異なる場合がありますので、詳しくは市区町村の介護保険窓口や担当ケアマネジャーに確認してください)

〈介護度と支給限度額・負担額の目安〉

介護度 区分支給限度額 自己負担額
(1割の場合)
自己負担額
(2割の場合)
自己負担額
(3割の場合)
要支援1 50,320円 5,032円 10,064円 15,096円
要支援2 105,310円 10,531円 21,062円 31,593円
要介護1 167,650円 16,765円 33,530円 50,295円
要介護2 197,050円 19,705円 39,410円 59,115円
要介護3 270,480円 27,048円 54,096円 81,144円
要介護4 309,380円 30,938円 61,876円 92,814円
要介護5 362,170円 36,217円 72,434円 108,651円

※2025年10月現在の金額です

まとめ

さまざまな状況の方が利用するからこそ、介護保険は分類や仕組みが複雑で分かりにくい部分も多いものです。しかし加齢によって日々の生活が不自由になる中、それをサポートするための重要な制度でもあります。大切なのは一人で悩まず、まずは専門の窓口にきちんと相談すること。お住いの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーなど「身近なところに相談できる人はいる」という認識を持って、介護保険利用の一歩をスタートしてみましょう。