皆さまは、10年以上使い続けているものはありますか?使い切っても、また自然と選んでしまう物。年月を重ねるごとに、より手に馴染み、愛着が深まっていく物。
10年間続いてきたLive+Doは、多くの方との出会いと、積み重ねてきた時間によって育まれてきました。その中で私たちは、「長く大切にされてきたものには、必ず理由がある」と感じています。
そこでスタートしたのが、この企画「あの人が10年以上愛用した名品ストーリー」です。
これまでLive+Doにご登場いただいた専門家の方々や、活動を支えてくださった皆さまに、ご自身が長年愛用してきた“名品”と、その背景にあるエピソードを語っていただきます。
第3回にご登場いただくのは、ライターの川村めぐみさんです。
第3回 紹介者 川村めぐみさん

「生活・暮らし」にまつわるトピックスを中心に執筆するライター。
これから介護をはじめる方と同じ目線に立ち、『Live+Do』で記事を書いてくださっている川村めぐみさん。
そんな川村めぐみさんが、10年以上使い続けている名品とは――。
10年以上使い続けている名品「祖母の手作り、パッチワークのキーケース」
この度は『Live+Do』10周年おめでとうございます。日頃の感謝を込めまして、とっても僭越ながら…筆を執らせていただきます。
わたしが10年以上愛用しているのは、祖母が手作りしてくれたパッチワークのキーケースです。本体のてっぺんに空いた穴に紐を通し、そこに鍵をくくりつけて使います。
お裁縫にちぎり絵、習字…。とにかく何でも器用にこなしていた祖母。なかでも特に好んでいた趣味が、パッチワークでした。ご存じの方も多いと思いますが…異なる柄や色の布を縫い合わせて作る、手芸のひとつです。習いごと用の手提げかばんや上履き入れ、小銭ケースなど、とにかく身の回りのものは何でも祖母に作ってもらっていました。
キーケースをもらったのは、たしか中学生の頃。「紐を引っ張ると、鍵が隠れるようになるのよ」。自慢げに話す祖母の顔が、今でも思い出されます。

あれからずいぶんと時間が経ち、92歳を迎えた祖母。身体は驚くほど丈夫ですが、認知症のため自宅そばのホームでお世話になっています。
顔を見せに行くと「勉強がんばってるの?」とにこり。社会人になって10年を過ぎようとしているわたしですが、祖母にとってはまだ、学生のままのようです。
時折、何でもテキパキとこなしていた「あの頃のおばあちゃん」が思い出され、ほんの少し胸がきゅっとなります。その反面、何をするにも面倒くさがっているいまの祖母の姿を見ると、何だかホっとします。長いあいだ家族のために頑張ってくれたのだから、あとは思う存分ダラけてほしい。そう孫は思うのです。
次に祖母のところへ寄るときは、このキーケースを手にお話してみようと思います。あの誇らしげな表情、ひさしぶりに見れるかなぁ。
「10年愛され続けるということ ~編集後記~」
川村めぐみさんのおばあさま手作りのパッチワークのキーケースは、単なる愛用品を超えて、おばあさまとの大切な思い出をつないでくれる存在なのだと感じました。
川村さんの文章の端々から、おばあさまへの尊敬や憧れが伝わってきます。特に、「紐を引っ張ると、鍵が隠れるようになるのよ」と自慢げに話すおばあさまの姿を思い出す場面は、とてもいきいきとしていて、読んでいるこちらまで自然と笑顔になりました。
失われていくものへの寂しさと、今を受け入れ、穏やかに過ごしてほしいという思いやり。その両方が丁寧に描かれていて、私自身もこのエピソードを読みながら胸がきゅっとなりました。
物を大切に使い続けることは、そこに込められた人の思いや記憶を大切にすることでもあるのだと、あらためて気づかせていただいたエピソードでした。
時間とともに変わりゆく暮らしの中でも、変わらず使われ続けてきた物、なぜか手放せない物には、その人自身の歴史が静かに刻まれています。
Live+Doが10年という節目を迎えた今だからこそお届けしたい、本物の「名品」ストーリー。
次回は、どんなエピソードと名品が登場するのでしょうか。どうぞお楽しみに。
写真提供:川村めぐみさん













