若い時と歳をとった時、肌はどのように変化するのでしょうか。あなたの肌はどうですか?若い時と同じでしょうか?それとも変化を感じていますか?大多数の方が感じているように、私たちの肌は歳をとるにしたがって変化していきます。どのような変化が起きているのか見ていきましょう。
皮膚(ひふ)は第三の脳?
老化にともなう肌の変化を見る前に、まず皮膚について確認してみましょう。通常、意識することはありませんが、皮膚は最大の臓器です。また皮膚科学研究者の傳田光洋氏が「皮膚も脳である。言わば第三の脳だ」と宣言されました。
「第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界」(朝日出版社2007年)には、皮膚が第三の脳であることがわかりやすく記されています。「皮膚と心はつながっている」「感じるだけが皮膚の仕事ではない」「脳と表皮は生まれが同じ」「感じ、考え、判断し、行動する指示を出す臓器だということに落ち着きます」などの表現は、みなさんご自身の体験を照らし合わせてみると、納得されるのではないでしょうか?(ちなみに第二の脳は腸と言われています。)
皮膚はこんな構造になっている
皮膚は最大の臓器で、表面から順に表皮・真皮・皮下組織の3層に分かれ、さらに付属器官として皮脂腺(脂腺・汗腺)と角質器(毛・爪)があります。表皮は4層からなり、基底層で新しい細胞を作って、基底層から有棘層(ゆうきょくそう)・顆粒層(かりゅうそう)、まで押し上げるのに約14日かかり、角質層に約14日とどまって、アカとなって剥がれ落ちていきます。これがお肌の生まれ変わりです。
ターンオーバーは通常28日(約4週間)としている説が多いが、基底層を含めて45日としている書籍も増えています。
それぞれの役割は?
表皮の主な働きはバリア機能、真皮の主な働きは肌の張りを保つ(弾力性)、皮下組織の主な働きは①クッションの役割②エネルギーの貯蔵③体温調節になります。表皮の厚さは場所によって異なり、足の裏・手のひらは厚いのですが0.1~0.15mmです。真皮の厚さは約2~4mmです。
角質層の上に皮脂膜(汗+皮脂)があり、皮膚に潤いと滑らかさを与え、角質層を保護し、過度な乾燥や湿潤から皮膚を守っています。皮脂膜は天然のクリームのようなもので、化学的刺激(例えば固形の石けん)に対する保護作用もあります。
また、皮膚表面の細菌や真菌の発育・増殖を抑える自浄作用もあり、スキンケアを考える上では非常に重要な役割をはたしています。
皮膚は老化にともなって変化する
皮膚は他の身体機能と同様、加齢により変化が生じます。しわやたるみができ、乾燥してカサカサになり、かゆみも出てきます。個人差も大きく乾燥と紫外線、さらにはストレス、間違ったスキンケア、栄養状態、喫煙なども影響しますが、まとめると以下のように変化します。
①表皮と真皮の減少により弾性力を失い、乾燥しやすくなる(ドライスキン)
②脂肪層の減少(太ももと腹部以外)により、寒さに弱くなる
③神経終末の減少により、皮膚感覚が鈍くなる
④汗腺や血管の減少により、外気温に対する反応性が低下する
⑤メラニン細胞も減少するため、紫外線によるダメージを受けやすくなる
このような変化により、高齢者の皮膚はダメージを受けやすく、また回復もしにくくなります。
スキンケアは私たちが考えている以上に、重要なケアです。おむつ内のスキントラブルの予防を考える上では、上記のような老化に伴う皮膚の変化も考慮してケアをすることが大切です。高齢者はスキントラブルが発生すると、完治するのに時間もかかります。
陰部を洗浄する時には洗い残しに注意し、弱酸性の商品を使用して洗浄する。ゴシゴシこすらず、やさしくポンポンとふき取る。しっかりと保湿・保護を行い、おむつを当てる時はシワの無いように、圧が一か所に集中しないように注意する、など介護者の私たちが気をつけることで防げるトラブルがたくさんあります。
目の前におられる方の笑顔のためにも、できるケアを少しずつ積み重ねてはいかがでしょうか?
参考文献:監修・執筆 浜田きよこ 「プロの排泄ケア入門おむつマスター」(2012)
発行:日総研出版
参考文献:著者名 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 「スキンケアガイドブック」(2017)
発行:照林社