皆さまは、10年以上使い続けているものはありますか?使い切っても、また自然と選んでしまう物。年月を重ねるごとに、より手に馴染み、愛着が深まっていく物。
10年間続いてきたLive+Doは、多くの方との出会いと、積み重ねてきた時間によって育まれてきました。その中で私たちは、「長く大切にされてきたものには、必ず理由がある」と感じています。
そこでスタートしたのが、この企画「あの人が10年以上愛用した名品ストーリー」です。
これまでLive+Doにご登場いただいた専門家の方々や、活動を支えてくださった皆さまに、ご自身が長年愛用してきた“名品”と、その背景にあるエピソードを語っていただきます。
第5回にご登場いただくのは、排泄用具の情報館「むつき庵」副所長の熊井利將さんです。
第5回 紹介者 熊井利將さん

おむつフィッター1級、相談支援専門員、介護支援専門員、鍼灸師の資格を持ち、排泄用具の情報館「むつき庵」副所長を務める熊井さん。
「介護にプラス Live+Do」の5周年企画「ヒント!になる 動画配信キャンペーン!」では、浜田きよ子さんとともに、アンケートに寄せられた排泄の困りごとについて、解決につながるヒントを教えていただきました。
また、「介護にプラスな専門店 Live+Do Style」から申し込める、インターネットで受検できる『e-おむつ検定™』では、講師を担当していただきました。
現在も、おむつフィッター研修をはじめ、各地での講演会や勉強会など、幅広く活動されています。
そんな熊井利將さんが、10年以上使い続けている名品とは――。
10年以上使い続けている名品「モバイルノートパソコン」

20年ほど前にケアマネジャーとなって以来、私は一貫して業務の効率化を意識してきました。現在、国が推進している「ICTを活用したケアマネジメント」についても、かなり早い段階から現場に取り入れていた一人です。
ケアマネジャーの原則である月1回以上のご自宅訪問の際、私は、今回紹介するモバイルノートパソコンのほか、モバイルプリンターやスキャナーを常に持参していました。訪問先で直接記録を作成したり利用票をその場で印刷したりしていました。
今ならスマートフォンやタブレット1台でスマートに行えることですが、当時はこのようなスタイルで業務効率化に取り組む人はめったにいませんでした。効率化によって生み出した時間は、ご利用者との信頼関係を築き、その想いをじっくりと聴き取るための大切な時間となりました。
効率化以外にも、ケアマネジャーとしてノートパソコンを活用したことで、深く心に残っているご利用者がいます。その方は、親族ではない第三者に年金を管理され、自由にお金を使えない状況にありました。脳梗塞の後遺症で発語が少し不自由だったため、その第三者は「本人は意思疎通が難しい」とし、ご本人に代わって意思決定を行っていました。しかし、実際にはご本人の中に、はっきりとした思いがありました。
担当当初から、私はその第三者の存在に違和感を覚えていましたが、ご本人と二人きりで話す機会はなかなかありませんでした。半年ほど経ったある日の訪問で、ようやく二人だけで話すことができました。その時、ご本人は「年金を管理されていて、お金を自由に使うことができない」と胸の内を明かしてくださいました。
当時はスマートフォンやICレコーダーが今ほど普及していなかったため、持参していたノートパソコンでご本人の言葉を録音して、その内容をもとに行政へ報告・相談しました。その結果、行政や警察などの関係機関と連携し、チームで支援を進めることで、ご本人の意思を尊重した適切な支援につなげることができました。
現在は新しいノートパソコンに代わり、この思い出のパソコンが登場する場面はありません。それでも、今なお電源を入れることができます。役目を終えた今も手放せないのは、このノートパソコンに、これまでの仕事の記憶やさまざまな思い出、そして苦楽が詰まっているからなのだと思います。
「10年愛され続けるということ ~編集後記~」
20年ほど前からICTを活用し、業務の効率化に取り組まれていたことに、まず驚きました。さらに心に残ったのは、効率化の目的が、仕事を早く終わらせるためではなく、ご利用者の想いをじっくり聴き、信頼関係を築く時間を生み出すためだったことです。
時には、ノートパソコンで記録したご本人の言葉が、行政や警察などと連携し、その意思を尊重した支援へとつながったことも。人の暮らしや人生に深く関わる場面で、この一台が大切な役割を果たしてきたのだと感じました。
今はパソコンとしての役目を終えても、そこには仕事の記憶や思い出、苦楽をともにした時間が詰まっています。だからこそ手放せない。そのお話に、私も心があたたかくなりました。
長く使った「道具」が、いつしかかけがえのない「相棒」になっていく。そんな名品のあり方を教えていただいたように思います。
時間とともに変わりゆく暮らしの中でも、変わらず使われ続けてきた物、なぜか手放せない物には、その人自身の歴史が静かに刻まれています。
Live+Doが10年という節目を迎えた今だからこそお届けしたい、本物の「名品」ストーリー。
次回は、どんなエピソードと名品が登場するのでしょうか。どうぞお楽しみに。
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元写真提供:熊井利將さん(画像の背景は編集しています)













