排泄にトラブルが生じたとき、安易におむつの使用という選択をしていませんか?
たとえ、いろいろな選択肢を検討したうえで、適切におむつを使用したとしても、さまざまな問題が起こることがあります。
おむつの使用がもたらす問題点を理解し、排泄ケアを見直すことで看護の質向上にもつながり、介護現場では業務の改善にもつながるともいえるかもしれません。
今回はおむつを使うことで起こりやすい問題について一緒に考えていきたいと思います。
おむつ使用がもたらす問題点
「おむつ使用がもたらす問題点は?」と聞かれてどのようなことが思い浮かびますか?
例えば、おむつ内で排尿をすればおむつが重くなります。それは身体の動きに悪い影響を与え、不快感にもつながります。それ以外にも、おむつを使用するかたの身体の状態や介護環境によって、一人ひとり異なる問題が起こることがあります。
では、どのような問題が起こりやすいのか、株式会社はいせつ総合研究所 むつき庵が主催するおむつ検定(R)テキストから、おむつの使用がもたらす問題点をみていきましょう。
皮膚への負担
おむつを使うことで皮膚トラブルを起こすことがあります。高齢者の皮膚は乾燥しやすく表皮が薄くなっているので、刺激に対する防衛力が落ちています。そのため少しの刺激でも傷ついてしまします。
さらに排泄したあとの尿は時間とともにアルカリ性に傾くため、皮膚にとっては刺激が強くなります。また、おむつ内で汗をかいたり排尿したあとなどは、おむつ内湿度が高くなり、蒸れた状態になり、皮膚がふやけやすくなります。そこにおむつによる摩擦刺激が加わると皮膚を傷つけます。
便には食べ物を消化するための消化酵素が含まれていて、この消化酵素はアルカリ性の物質です。便が緩いほどこの消化酵素が多く残っており、皮膚を刺激します。特に、下痢便には腸内細菌が多数存在しているため、皮膚への負担が大きくなります。便はおむつへ吸収されずに皮膚に付着することが多いため、皮膚障害を起こしやすくなります。
座っている時の姿勢を崩すこと
おむつを使うことにより座位が安定しにくくなりがちです。そのため座っている姿勢が崩れやすくなります。下着より厚みがあるおむつがクッションとなり、座る姿勢を不安定にしたり、おむつによって股が閉じにくくなり、お尻が前にずれやすくなることで、姿勢を崩してしまいます。そのことにより、食べ物を飲み込みにくくなったり、お尻にずれ力が加わって皮膚トラブルをおこしたりする可能性が増えます。
動きにくいこと
おむつの当て方や選び方を間違ったり、不必要に重ねて使ったりすることで、身体の動きを制限してしまいます。どのことにより膝を立てたり寝返りをしたりすることがしにくくなります。
臭いの問題
おむつを使うことで部屋の臭いが気になることがあります。尿に含まれる尿素が雑菌により分解されアンモニアができます。尿が臭う主な原因はこのアンモニアです。排尿直後はあまり臭わなくても、時間が経つと細菌の作用により臭いが強くなります。
しかし、尿の臭いは時間の経過だけでなく、食事の内容や病気、服薬などによっても変化します。また、おむつ内で排便をすると、トイレやポータブルトイレでの排尿とは違い、便がお尻に付着する量が多くなるため、きちんと拭ききれなくて臭いが残る可能性があります。
自尊心を損なうことがあること
おむつを人に交換してもらうことは、時として自尊心を損なうことがあります。これまで自分でトイレに行って排泄していた人にとって、おむつで排泄する行為は負担と違う場所での排泄行為のため、自尊心を損なうことが想像できます。また、普段は隠している部分を人に見せなければならないことに抵抗があるのは当然のことです。
ゴミの問題
テープ止め紙おむつやパンツ型紙おむつ、尿とりパッドなどは洗って再利用できないので使えば使うほどゴミが増えます。排泄物を含んだおむつは重く、それをゴミとして出すのは、体力の介護者にとっては負担となる場合が少なくありません。
このようにおむつを使うことで多くの問題が考えられます。しかしその一方でおむつは適切に使えば生活の幅が広がったり、本人や介助者の身体や心が楽になったりすることもあります。そのため、必ずしもおむつが悪物とは言えず、おむつ使用のデメリットを知ったうえで、上手におむつとつき合って生活や活動の幅を広げていくことが大切です。
参考引用文献:監修・執筆 浜田きよこ 「おむつ検定Rテキスト」(2017)
発行:株式会社はいせつ総合研究所 むつき庵
株式会社はいせつ総合研究所「排泄用具の情報館 むつき庵」が実施する『おむつ検定®』が、いつでも・どこでも受検可能な「e-おむつ検定™」になりました。