介護のためのおむつのヒント

【事例紹介】介護施設の職員から「おむつを触って困る」という相談

特別養護老人ホームの介護スタッフから、「入所している方がおむつを触って外し、尿がもれて衣類やシーツを汚してしてしまうので触らないために何かいい方法がないか」と相談がありました。では実際にどのように解決したか、経緯とともにご紹介します。

おむつを外さない方法ではなく、「おむつを外す理由」から考える。

入所している男性は介護度5で、脳梗塞の後遺症のため右上下肢に麻痺があり、生活のほとんどをベッド上で過ごしています。ベッドから離れるのは食事のときと入浴のときぐらいです。

人の行動には意味があるので、おむつを外すから外さないおむつの当て方や選び方を考えるのではなく、「なぜ、おむつを触るのか」を考えて、その原因となっていることに対応していくことを考えました。

おむつを触る原因について仮説を立てる

おむつを触る理由は人によって違いますので、その原因を考えるために必要となるのがアセスメントです。では、この方の状況で気になるポイントを上げてみます。

  • 日中はベッド上で過ごすことが多い。
  • 汗をよくかくようで動きやすい左手でかきむしっている。
  • おむつはテープ止め紙おむつに尿取りパッド大を2枚重ねて、腰のところにフラットシートを1枚、陰茎に尿取りパッド小を巻いている。
  • 入浴は週2回である。
  • エアーマットにラバーシーツを敷いて使用している。

おむつを触っているのは、おむつが暑くて蒸れているので痒みや不快感があるのではないかと仮説を立てて対策を考えました。

対策:おむつの見直し

おむつは排泄インナーと排泄アウターに分けて、見直しを行いました。

排泄インナー・・・尿(便)を直接吸収するもの
排泄アウター・・・排泄インナーを固定するもの

排泄インナーをたくさん使えば吸収力が増えて尿が溢れにくいわけではなく、どちらかと言うと尿とりパッドや排泄アウターの機能がうまく活用できないことの方が多いため下記のように変更しました。

見直し前

<排泄インナー>
フラットシート 1枚 尿とりパッド大 2枚 尿とりパッド小 1枚

<排泄アウター>
テープ型紙おむつ Lサイズ

↓↓↓

見直し後

<排泄インナー>
尿とりパッド リフレスピードキャッチ 1枚
(尿による不快感の軽減のために吸収スピードに定評のある尿とりパッドを活用)

<排泄アウター>
テープ型紙おむつ Mサイズ

今まで排泄インナーにたくさんの尿とりパッドなどを使っていため排泄アウターのサイズがLでないと使えなかったのですが、排泄インナーを1枚にしたことで、排泄アウターのサイズがMになりました。

さらにこの方は汗をよくかいているようなので、入浴の回数を2回から3回に変更してもらいました。石鹸で洗いすぎると余計にスキントラブルになることもあるので、その点には注意をしてもらいました。

対策の効果を検証し、暮らし全体を見直していく

このような対応を行ったことで、おむつを触ることが少なりました。今後はベッドから離れるためにどうするかを職員と一緒に考えていくことになっています。

おむつを触ったり、外そうとしたりするケースは、介護の現場ではよくあることです。それらを解決する際に大切なのが、触らない・外さない方法を考えるのではなく、「なぜ触るのか?なぜ外そうとするのか?」という理由から考えることです。

仮説を立て、ひとつずつ検証していくことでおむつのトラブルは確実に減らしていくことができます。ぜひ実践してみましょう。