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排泄の基礎知識(排便編②):排便のメカニズム ~走行距離9m、30~120時間の長い旅路~

「排便のメカニズム」をわかりやすくご説明してお伝えします。「下痢や便秘の原因と対策」や「スループット食材」など排便の知恵袋もご紹介します。

食べたものがウンコになるまでの時間はどれくらい?

口から入った食べ物は内臓で消化・吸収され、残りカスがウンコとして肛門から排出されます。排便の旅は長い道のりです。それでは、その旅路を辿ってみましょう。

入って出るまで約30時間~120時間

入ってから出るまで、つまり口から肛門までは1本の消化管でできており、その長さは約9m。口→食道→胃→小腸→大腸→肛門とさまざまな消化器を通過・滞在する排便の道のりは、時間にして約30時間~120時間です。(摂取する食べ物によって異なります)

排便のメカニズム

食べた物が出るまでにたどるさまざまな消化器には、そのひとつひとつに役割があります。排便のメカニズムを知っておくと、役に立つことがたくさんあります。

口から食道まで/通過時間:液体→約1秒、食塊→約5~6秒

•口
食物を咀嚼し、飲み込みやすい状態にする。唾液と混じることで糖質を消化・分解する。
•食道
咀嚼された食物は食道を通って胃へ。食べてから胃まで、液体は約1秒、食塊は約5~6秒で到達する。

胃/滞在時間:約4時間

胃液で、タンパク質・脂質を消化・吸収する。胃の中で約4時間、かゆ状になった食物は腸へ送られる。

小腸(十二指腸・空調・回腸)/滞在時間:約7~9時間

•十二指腸
胆汁や膵液で、糖質・タンパク質・脂質などを消化・分解する。胆汁と混じることで黄色いウンコとなる。
•空腸・回腸
腸液で、糖質やタンパク質、水分などを消化・吸収する。7~9時間かけて、小腸(十二指腸・空腸・回腸)を通過する。

大腸(結腸・直腸)/滞在時間:約25~30時間

•結腸
ぜん動運動・分節運動・振り子運動で送られてきた内容物の1/4程度まで、さらに水分を吸収する(水分吸収がうまくいかないと下痢になる)。栄養分のなくなった食物のカスは、古くなった腸の粘膜や腸内細菌の残骸と混ざり、ウンコになる。
•直腸
腸の最後部である直腸内の内圧が高まり、排便反射が起きる。トイレ以外の場所では脳から「出すな」の指令が出る。腹圧がかからず、肛門括約筋が締まり排便されない。

肛門を経て排便

トイレに行って排便できる状態になると、脳から「出せ」の指令が出る。腹圧がかかり、肛門括約筋が緩む。肛門を通って排便される。

スムーズな排便のためのポイント

食べてから排便まで、通常1日半から3日程度かかります。スムーズな排便のためには、腸壁を刺激する適度な量と、適度な水分による柔らかさが必要です。食事内容や量、水分摂取に十分留意しましょう。

下痢・便秘の原因と対策

実は、ウンコの硬さに作用する要因のひとつは、食べ物が入って出るまでの時間です。メカニズムを知れば、一般的な下痢・便秘の対策にもつながりますので、チェックしておきましょう。

ウンコの硬さはどう決まる?

ウンコは、水分が多いとやわらかくなり、少ないと硬くなります。つまり、基本的にはウンコの硬さは、水分量で決まります。
水分は主に小腸や大腸で吸収しますが、「蠕動(せんどう)」と呼ばれる“食べ物を送りだす動き”が活発なときは、食べ物は早く送り出され、反対に、活発ではないときは、遅く送り出されます。

小腸や大腸の滞在時間が短くなると、水分の吸収量が少なくなり、その結果、ウンコはやわらかくなります。滞在時間が長ければ、水分の吸収量が多くなり、ウンコは硬くなります。
また、食べ物によっては、水分を吸収しにくいものや、逆に、体から水分を奪う働きがあるものなどがありますので、食べ物によっても、ウンコの硬さは変わります。

便秘

便秘には、さまざまな原因がありますが、一般的には、
●水分不足
●何らかの理由で、腸の「蠕動」が活発でなくなることで水分の吸収量が多くなり、ウンコが硬くなるなどが挙げられます。

対策としては、
●水分を積極的に摂る
●食物繊維を積極的に摂る
(食物繊維は、腸内で水分を吸収してカサが増え、腸を刺激することで「蠕動」を促します。また、ウンコの適度な水分を保ちます。)
●適度な油脂を摂る
(油脂は、腸を刺激して「蠕動」を活発にします)
などが挙げられます。一般的な便秘の定義ですが、「出なかった日数」といったような決まりはありません。しいて言えば、出ないことで苦痛を感じていると、それは便秘といえます。

下痢

下痢にも、さまざまな原因がありますが、一般的には、
●何らかの原因で、「蠕動」が活発でなくなるなど、水分を吸収する働きが弱くなる
●何らかの原因で、腸内に排出される水分(消化液など)が多くなる
などが挙げられます。

対策としては、
●水分を吸収する働きが弱くなっている原因の治療
●腸内に排出される水分(消化液など)が多くなっている原因の治療
などが挙げられます。注意すべきは、たとえば感染性胃腸炎の場合は、ウイルスや細菌を外に出す自浄作用で下痢になるので、単純に下痢を止めればいいというものではありません。下痢は、脱水症状を伴うので、下痢だからといって水分をひかえるのではなく、原因を治療しながらミネラルの入っている飲料水などを摂取して、脱水予防をすることが肝心です。

また、ストレスが下痢の原因になる場合がありますが、それは、緊張状態によって、副交感神経と交換神経のバランスが崩れ、結果として、腸内の「蠕動」や「水分(消化液)の分泌」に作用するからです。

出るまでの時間がわかる“スループット食材”って?

体調管理のバロメーターとして、食べ物がウンコとして出るまでの目安の時間を知りたい場合は、スループット食材を食べるという方法があります。

消化・吸収されない食べ物で時間をチェック

自分が食べて消化しきれなかったトウモロコシが出た…という経験はあるでしょうか?なぜそんなことが起こるかというと、トウモロコシは、消化されずに排出される「食物繊維」や、消化されにくい「でんぷん」を多く含んでいるからです。
スループット食材とは、そのトウモロコシのような食材のことで「体内で消化・吸収されずに、そのまま排出される食べ物」を意味します。

【スループット食材の例】
●スイカやブドウの種
●トウモロコシの皮
●豆類の皮
●ゴマなど

用を足したあと、スループット食材をきちんと見つけるためには、ある程度の量を食べることがポイントです。また、食事内容と時間をメモしておくことも大切です。

まとめ

「便」は、まさに体からの「お便り」です。排便のメカニズムをきちんと知ったうえで「便」の時間をチェックすれば、体調管理や排便トラブル対策に役立つ多くのメッセージを受け取ることができますよ。